最後のピース

ある日、私の元に送り主不明の段ボール箱が届いた。

中には、真っ白な一千ピースのジグソーパズルと、一枚の紙切れが入っていた。
紙にはただ一言、『あなたの人生を完成させてください』とだけ書かれていた。

不気味に思いながらも、暇を持て余していた私はパズルを組み始めることにした。
絵柄のない純白のパズルは想像以上に難解だったが、不思議な中毒性があった。
ピースを一つはめるたび、頭の中に過去の記憶が鮮明に蘇るのだ。

十ピース目で、幼少期に買ってもらった青い自転車の感覚が。
百ピース目で、高校の卒業式に流れた音楽と、あの肌寒い空気の匂いが。
五百ピース目で、数年前に大失恋をした夜の、胸を締め付けるような痛みが。

パズルが進むにつれて、私の過去が、感情ごと恐ろしいほどの解像度で脳裏に呼び覚まされていく。
気づけば私は食事も睡眠も忘れ、何かに取り憑かれたようにピースを狂ったように嵌め続けていた。

そして、届いてから三日目の夜。
パズルはついに、最後の一ピースを残すのみとなった。

外枠はすべて埋まり、中央にぽっかりとハート型に似た空白が一つだけ残っている。
私は手元に残った、最後の一片を見つめた。

そのピースの裏側には、これまでの真っ白なピースとは異なり、何か黒い小さな文字がびっしりと書かれていることに気づいた。

目を凝らし、それを読み上げようとした瞬間。
私の脳内に、まだ見ぬ未来の光景が、凄まじい濁流となって流れ込んできた。

……病室の天井。激しい耳鳴り。
泣き叫ぶ家族の声と、機械的なブザー音。
そして、医師が冷酷に告げる「死亡時刻は、午後十一時四分」という声。

冷や汗が吹き出し、全身の血の気が引いた。
慌てて壁の時計を見ると、針はちょうど、十一時三分を指している。

驚愕して手元の最後の一片を見落としそうになった、その時。
私の指先が、何かの力に吸い寄せられるようにしてパズルの空白へと向かっていった。
逆らおうとしても、自分の腕が全く言うことを聞かない。

カチリ。

最後のピースが完璧に噛み合い、純白のパズルが完成した。
同時に、部屋の電気が一斉に消え、完全な静寂が訪れた。