完璧勇者とポンコツな仲間たち 4
「いつも私らに尽くしてくれるアベルに、『最強の武器』をプレゼントするぞ!」
国王から下された莫大な報酬袋(ずっしり重い金貨の山)を手に、女戦士のレナが鼻息荒く宣言した。
女魔法使い・メイと女僧侶・チカも「おー!」と拳を上げる。
いつも守られ、極上飯を振る舞われ、看病までしてもらっているお荷物(エア)三銃士。
さすがに罪悪感が限界を迎えた彼女たちは、アベルがいつものように「街のゴミ拾いボランティア」に出かけている隙に、王都の最高級武器街へと繰り出したのだ。
しかし、彼女たちには致命的な欠点があった。
実力が「エア」なら、武器を見る目も完全に「エア」なのである。
「いらっしゃい、お嬢さん方! お目立ちな一品をお探しかい?」
怪しげな路地裏の武器屋で、うさんくさい女店主が揉み手で三人を迎え入れた。
女店主は彼女たちが金貨の袋を持っているのを見るや否や、店の奥から「とっておきのゴミ」……いや、「いわく付きの珍品」を取り出してきた。
「ふふん、これこそが伝説の魔剣『ダークネス・エッジ・デス・ペイン』さ! 見な、この禍々しいトゲトゲと、持ち主の血を吸うかのような深紅の輝き! 攻撃力は測定不能、並の人間が触れば呪いで即死する代物だよ!」
それは、ただの『鉄くずをテキトーに溶接してトゲトゲにし、赤いペンキを塗っただけの、重すぎて誰も持ち上げられない粗大ゴミ』だった。おまけにトゲが多すぎて、どこを握っても自分の手が血まみれになるという欠陥品である。
「測定不能……呪いで即死……! す、凄まじい大剣だな。アベルのあの無駄に爽やかな純白の聖剣より、よっぽど強そうだぞ!」
レナがゴクリと唾を飲み込んだ。見た目のハデさに一発で騙されている。
「ちょっと待ってレナ、こっちの杖もすごいよ。見て、この怪しく明滅する水晶! 触るだけで魔力が無限に溢れ出し、世界の理を書き換える『始祖の魔杖』だって!」
メイが見つけたそれは、ただの『ガラス玉の中に蛍を閉じ込めただけの、脆いガラスの棒』だった。ちょっとでも壁にぶつければ粉々に砕け散る代物である。
「まあ……! では、私はこちらの聖遺物を。触れるだけであらゆる病を癒やし、死者すら蘇らせるという『奇跡の聖布』です!」
チカがうっとりと見つめるのは、ただの『カビの生えたボロ雑巾』だった。不衛生極まりなく、むしろ新しい病気を発症しそうなゴミである。
「お嬢さん方、お目が高い! 本来なら国宝級なんだけどね……なんと今ならこの三点、金貨袋丸ごとで手を打とうじゃないか!」
「よし、買ったわ!!」
三人が騙され、全財産を差し出そうとしたその瞬間――。
「皆さん、ここでしたか! やっと見つけましたよ……って、ひっ、ひええええええッ!?」
街のゴミ拾いを終え、三人を探しにやってきたアベルが店に足を踏み入れた瞬間、ガタガタと震え出してその場にへたり込んだ。彼の天才的な鑑定眼と第六感が、店内の「異常」を察知したのだ。
「あ、アベル!? どうしたの、そんなに怯えて」
「み、皆さん……なんという、なんという恐ろしいものを発掘してしまったのですか……! その大剣、トゲの角度が完全に『肉体を効率よく破壊するためだけ』に計算され尽くしている! 握っただけで己の血を媒介に発動する、命を削る禁忌の暗黒魔剣ですね!?」
女店主が目をパチクリさせている。
「さらにその杖! 内部に封印された未知の発光生命体(蛍)が、世界の魔力バランスを崩壊させるほどの超高密度エネルギーを放っています! 一度でも衝撃を与えて封印が解ければ(砕ければ)、この大陸ごと消し飛ぶ特異点(ブラックホール)の杖だ……!」
女店主がプルプルと震え、笑いを必死に噛み殺している。
「極めつけはその聖布! 何千年も前の太古の未知なるウイルス(カビ)が凝縮されている! これが空気中に散布されれば、全人類が滅亡する、神の裁きの黙示録布です……!!」
あまりの「ガチすぎる鑑定理論(勘違い)」に、女店主は笑えなくなり、次第に恐怖を感じ始めていた。
アベルは三人の「深すぎる眼識」に、驚きと喜びで涙を浮かべている。
さすがは世界最強の仲間たち、ただの武器屋の隅から、世界を滅ぼすレベルのアーティファクトを平然と見つけ出してくるとは!
「国王から貰った大金なんて、この『世界を滅ぼす三種の神器』の価値に比べれば、タダ同然のゴミです! 店主さん、これほどの危険物を一歩間違えれば世界が滅ぶリスクを背負って保管していたのですね。……あなた様は、影の聖騎士(パラディン)か何かですか!?」
「えっ? わ、私が……影の聖騎士……?」
興奮気味に褒めちぎられ、詐欺師の女店主は困惑した。
そして、アベルの放つ「本物の覇気」に圧倒され、滝のような汗を流していた。
「わ、わかった! いや、よくわからないけど全部タダでやるよ! だから、そのキラキラした目でこっちを見るんじゃねえぇぇ!」
恐怖に耐えかねた店主は、三種のゴミをアベルに押し付け、店を閉めて逃げ出してしまった。
「……さすがは皆さんです。タダで世界を救い、さらにこの超危険物を俺に管理させてくれるのですね。このアベル、命に代えても、この『世界の終焉の武器』を封印し続けます!」
アベルは神聖な布(ボロ雑巾)で厳重に包み、空間魔法の最深部に『世界の脅威』としてガチガチに封印した。
「世界が滅びなくて良かったな、アベル!」(あの店主、なんで逃げ出したんだ?)
「僕たちの目に狂いはなかったでしょ!」(最強じゃなく、最恐になっちゃったけどね)
「神の素晴らしい導きです」(お金が減らなくて助かりました!)
こうして、全財産を守り抜き(?)さらにアベルからのリスペクトを跳ね上げたエア三銃士。
浮いた大金で、その日の夜はアベルが作った最高級のステーキディナーを、心置きなくたらふく堪能するのだった。
