エデュカントの星(第4話)

 ドラゴン襲撃後、ベルセリアは新人たちに責められた。
 「おまえのせいガメイが瀕死だぞ」
 「なんでドラゴンを殺さなかった」
 「どうせ怖気づいたんだろ。威勢がいいのは口だけかよ」
 「殺したくなかった」とは言えなかった。判断ミスを何度も後悔したが、やはり大好きなドラゴンには手が下せない。複雑な気持ちから反論ができなかった。ベルセリアの悪評が飛び交い、ついには騎士団で孤立してしまった。

 「それなのに、こうなったいまもドラゴンを殺したくない」

 蝶々の舞うある晴れた日、騎士団の館の中庭でたたずむベルセリアをピンが呼ぶ。
 「完成したんだ。見に来い」
 何事かと傍らにいた犬と一緒についていく。行った先は鎧や武器などを整備する二階の技術室だった。三人乗り自転車にコウモリのような羽をつけた乗り物が窓枠に設置されている。ポンやパンたちはすでに乗り込んでハンドルを握っている。ピンも乗り込みながら誇らしげに
 「オレらドムラに乗れないだろう。だからいつでも出撃できるように三人で乗り物を作ったんだ。空も飛べるぞ。名前はトゥーランドット号」
と三人同時に胸を張る。
 驚いて言葉もないベルセリアに三人組は「初飛行をするから下で見てろ」と彼女と犬を技術室の窓の下にいるよう言いつける。
 「いくぞ」
 「おーっ!」
 掛け声も勇ましく、三人は窓枠に渡した滑走路代わりの板の上から元気にトゥーランドットを走らせた。
 ところが…。
 「どわーーーーっ!!!!」
 飛び立つ前に乗り物は直角に急降下し、落ちて木に引っかかってしまった。
 何事かと見に来ていた先輩騎士や新人たちに三人は助けられる。
 「痛って~…。作り直しだ、作り直し」
 「名前もグフとかゲルググに変えようぜ。だいたいトゥーランドットがアッガイに似るのが悪くね?」
 「どこもかぶってねーよ!」
 「じゃあドム三体作って夢のジェットストリームアタックだ!」
 「ビームどうすんだよ!」
 「で、なんでさっきからオレらガンプラ作るみたいな話になってんだよ」
 「何言ってる。パンなんか本気でモビルスーツ作る気でいるぞ」
 「おまえらがいうからだろーが!」
 ベルセリアは吹き出し、愉快そうに笑った。
 「あはははっ、なにやってるんだ、おまえたち」
 むきーっと怒る三人とベルセリアを見ていたガロはほっとした。ドラゴン襲撃から三日、それ以来ふさいでいた気の強い少女が、久し振りに笑顔を見せたからだった。

 レディナイトの館に帰る前にベルセリアは医務室によった。目的のベッドにはすでにシレオンとリューが見舞いに来ていた。
 「ガメイの様子はどうだ」
 ベルセリアは体中に包帯を巻き、いまだ意識のないガメイの顔を見たあと二人に尋ねる。
 騎士団の医務室には王宮勤めの有能な医師たちが控えている。そのため重篤のガメイはすぐさま医務室に搬送された。
 ベルセリアの硬い表情にシレオンがいつもの穏やかな口調をさらに和らげて教える。
 「容態は昨日と同じらしい。あとは本人の回復力次第だと医師が言ってたよ。ベルセリア、君が落ち込んでもガメイの容体は変わらない。これは騎士団の連帯責任だ。ドラゴンにつかまった彼にも責任はある。自分ばかりを責めなくていいんだよ」
 リューもベルセリアに笑顔を向けて元気づける。
 「ガメイも騎士だ。鍛え方も一般人とは違うからすぐ意識を取り戻すって。ベル、ガメイはチェリーパイが好物なんだ。回復したら山と用意して一緒に詫びようぜ」
 二人の優しさが身にしみた。だが、その優しさがいまの自分を苦しめる。
 「失礼します」
 声がして三人が振り向くと中年の男女が入ってきた。ガメイの姿を認めると二人はまっすぐにベルセリアたちのいるベッドへ歩みよってくる。
 誰だろうと思いつつ三人は起立して騎士の礼で迎えた。彼らを男が手を上げて制する。
 「顔を上げてください。はじめまして。私たちはガメイの親です。様子を見に来ました」
 母親がベッドにつめ寄る。
 「ああ、こんなになって。かわいそうに」
 ベルセリアは罪悪感で息がつまった。見ると母親とガメイは同じ目をしていた。耐えられず思わず目をそむけてしまう。父親が包帯の上から少年の頭をなでた。
 「この子は昔から努力家でね。騎士になりたくて人一倍頑張っていたんですよ。だから試験に合格した日はそれはもう喜んで。私たちも嬉しくてね。手紙を読むたびに離れていても元気にやっているのがよくわかりました。それがまだ活躍しないうちにドラゴンのせいでこんな大怪我を負って…。悔しいでしょうなあ。お見舞いに来てくれたんですね。騎士団にいい友達ができてよかったなあ、ガメイ」
 「すまない!」
 耐えきれなくなったベルセリアが頭を下げた。
 「私のせいなんだ。私がとどめを刺せなかったばかりにドラゴンを逃がしてガメイを傷つけてしまって…」
 「え?」
 母親が声を上げる。顔を上げたベルセリアと母親と目が合った。閉じられたガメイの代わりに彼そっくりな目が憎しみの色で彼女を見つめる。
 シレオンとリューも頭を下げる。
 「これは彼を守り切れなかった我々全員の責任です」
 「そうです、本当に申し訳ありません」
 「それじゃあ、息子はあなたのせいで死にかけて…」
 よろめく妻を支えてガメイの父親が病室を出ようとする。
 「今日は帰ります。また来ますから」
 決してベルセリアを見ようとせず、それでなんとか理性を保たせている父親。反対に自分から目を離さず無言で責める母親。二人の姿がベルセリアの心に焼き付いてしまった。

 病室を出ると固まって話していた新人たちがベルセリアを見て話すのをやめた。何を話していたかは明白だ。非難がましい目つきを見ればすぐにわかる。
 すれ違いざま、中の一人に「人殺し」とささやかれた。奥歯をかみしめ、うつむいたままその視線に耐えつつ彼らの前を足早に通り過ぎた。
 中庭で犬が待っていた。
 <いかがでした、少年は?>
 「変わりない。さっきガメイの両親と会った」
 気丈にふるまっていたが多くを語らない主人に犬はそれ以上の質問をやめた。二人は黙って一階の回廊を歩く。ふとベルセリアは歩き疲れたように立ち止まってつぶやいた。
 「おまえたちはいつでも優しいな。なのに私はなんの役にも立たないで…」
 <ベル様…>
 足音がした。振り返るとベルセリアの背後にフードをかぶった黒づくめの人間が迫っていた。手には鈍い光を放つナイフが握られている。
 ベルセリアが反射的に身をかわすと同時に犬が暗殺者に飛びかかった。犬の牙を逃れ、暗殺者は再びナイフをかまえる。犬が激しく鳴いた。その声に騎士たちが集まってくると理解した暗殺者は失敗を悟り、逃走した。
 「どうした、G。何があった」
 しばらくしてピンに続き、ポン、それからパンもやってくる。
 <ベルデッキオ様、大丈夫ですか。犯人を追いましょう>
 犬がベルセリアをうながす。しかしベルセリアは茫然として動かない。
 「…よかったのに」
 <え?>
 「私など、あのまま刺されて死ねばよかったのに…」
 泣いてこそいなかったが、情けないほどの涙声だった。そんな彼女の手に犬は思いっきり噛みついた。
 「痛っ! 何をする!」
 <なに甘ったれてるんですか! 刺されて死ぬのはこれより痛いんですよ! 簡単に死ぬなんて言わないでください。犯人を追いますよ!>
 声を詰まらせてベルセリアは犯人ではなく、騎士団の館の出口をめざして走り出した。
 <ベル様! どこへ行くんです>
 犬が犯人とベルセリアのどちらを追おうか戸惑っているうちに、ベルセリアは館を飛び出し、闇に消えてしまった。

 ベルセリアが襲われる少し前、ティタンジェが館の三階の回廊を眉を曇らせながら歩いていた。連日の会議では「ラムー河の戦い」以降行方不明になっていた騎士団長オリビエ・ピエモンテの対応策を迫られていた。だが、無敵にして人望の厚いオリビエが騎士団に手をかけるなど誰も信じられなかった。釈然としないままティタンジェは騎士団の館の見張りの塔へ来ていた。
 見上げると月が出ていた。月明かりのせいか星が見えにくい。リーザカインドの国民は夜空を見上げると必ずエデュカントの星を探す。その倣(なら)いどおりティタンジェは夜空に輝く英雄の星座を探した。ふと、その視界の端に何かをとらえた。屋根の上に誰かが寝そべっている。
 <あの場所。まさか、オリビエ?!>
 オリビエ・ピエモンテが好んでよくいた屋根の上。ティタンジェは息を呑んで目を凝らす。明るい月光に照らされたその人物はガロであった。
 <ガロ・ソノマ?! なぜそこに?>
 奇妙に思い見張りの塔の階段を上って屋根へと抜け出る。屋根瓦を踏む音でガロが跳ね起きた。慣れているのかバランスを崩す気配を見せない。その所作がティタンジェにはオリビエと重なって既視感を起こした。
 彼はかつて微笑んで言ったものだった。「ここなら誰にも邪魔されず月も星もつまらんことで悩む己の姿もよく見える」と。
 「ティタンジェ様、いらしてたんですか。すぐどきます」
 「いや、いい。そのままで」
 ティタンジェに制されてすわり直す。ガロは戸惑っていた。昨日、術師ラーマ・ヤーナから呪いについて聞かされた。頭の整理がつかなくて自分がひそかに名付けた『夜空に近い場所』にきたらその当事者に会ってしまうとは。どう接していいかわからない。
 居づらそうにしているガロにかまわずティタンジェは隣りにすわる。
 「君はここによくくるのか」
 戸惑う一方、ガロは月光に浮き上がる彼女の端正な顔立ちに、「相変わらず綺麗だな」と胸をときめかせてしまう。
 「いえ、今日はたまたまです。ここは月も星もよく見えるので」
 ティタンジェの頭に鋭い痛みが走った。だがこらえ、この機会に、と思った彼女はその美しい黒い瞳でガロを射抜くように見つめる。
 「単刀直入に訊く。君は何らかの理由で以前騎士団とかかわっていたことが…」
 ガロの顔に走った動揺を隠してくれるように、犬の激しく吠える声を二人は聞きつけた。
 「G?」
 「どうした、ガロ・ソノマ」
 ガロにつられてレディナイトも立ち上がる。ガロ同様、無意識に手は剣の柄にかかっていた。
 「ベルセリアの犬です。なにかあったのか?」
 中庭でティムールの声が響いた。
 「全員集合だ。ベルセリアが行方不明になった」

 Gのただならぬ様子と犬なりのジェスチャーでベルセリアが館を飛び出し、行方知れずになったと騎士団は理解した。捜索隊が編成された。指揮官は騎士団長ティムールだ。Gの鼻でわかったのは館を出て小川へ続く道までだった。どうやら川を渡ったらしくそこで臭いが途切れている。騎士団は一人に何かあれば全員が動く。
 「やれやれ、チビ助め、面倒かけおって」
 文句を言いながらも騎士団長トラントドンは一番先に松明を掲げて探しに出かけた。
 ティムールは編成した隊それぞれに行き先の指示を出しながら注意も促す。
 「夜は特に危険だ。森にはドラゴンもいるし夜行性の辺境の魔物も出没する。見つけ次第すぐにでも保護するように。見つけるまでは誰も寝てはならぬ」
 騎士団の館とレディナイトの館で連絡を受ける者数名を残し、軽量甲冑と剣を装備して騎士たちは出発した。

 ベルセリアは大きな木の根元にいた。うずくまって膝を抱え、自己嫌悪にひたっていた。勢いまかせにめちゃくちゃに走り、気ついたら館から外れた森の中にいたのだ。
 エデュカントの星が見つからない。そもそもエデュカントなんて本当にいたのだろうか。ドムラの原種である野生馬コクオーを乗り回し、傷ついて両足が使えなくなったらコクオーを何頭も率いて戦車にして戦ったという。そんな化け物じみた人間がいるものか。
 <星は星でしかない。星の光でなど人が救えるものか>
 ベルセリアは心の中で悪態をつく。怪我をしたのが自分ならよかった。まだ耐えられた。こんなことなら入団するのではなかった。自分はただ最強のドラゴン使いになりたいだけなのに。
 ワンワン!
 犬の声にベルセリアが顔を上げる。「いたぞ」「あそこだ」と、ピン、ポン、パンの三人が口々に叫ぶ声もする。見つかってしまったが、逃げる気力もなかった。
 真っ先に駆け寄った犬がベルセリアのすぐわきに控え、ピンたちもしゃがんで顔を覗き込む。
 「心配したぞ。騎士団全員でおまえを捜してたんだ」
 「早く館に戻ろうぜ。このへんは物騒だ」
 ポンも心配そうに覗き込む。
 「嫌だ。館には戻らない」
 膝を抱えたまま誰とも目を合わせないでかたくなに拒んだ。
 「なんでだよ」と三人が口々に言い、犬も寂しそうな声で鳴く。ベルセリアはガメイの両親に会った話をした。
 「どう考えても全部私のせいだ。両親を思い出すと館へは戻れない。おまえたち自分のせいで人を傷つけたことがあるか。それなのに…」
 ベルセリアは口ごもる。それなのに、こうなったいまもドラゴンを殺したくないのだと。
 「もう充分だって」
 「気にしてたらキリがないぜ」
 「甘いんだよ」
 全員が顔をしかめるパンを見つめた。
 「知らなかったとは言わせないぞ。ドラゴンは人を襲ったり中には食ったりする種族だっているんだ。まさか、かっこいいって理由だけでドラゴンが好きだって言ってたのか」
 そのとおりだった。そしてそんなドラゴンを制する自分をも「かっこいい」と思っていたのだ。しかし他人にとってはただの恐ろしい生き物だ。ドラゴン使いのくせにドラゴンを理解せず、扱う責任の重さすら理解していなかったと初めて気づいた。
 森の木が揺れた。耳にした彼らの前に森の闇の中から巨体が姿をあらわす。全員が息を呑んで身がまえる。それは森に棲息する緑色のドラゴン、マッカラン種だった。寝ていたところをベルセリアたちの声に起こされたらしく機嫌が悪い。雑食性で人間も餌の対象だ。三人はともかくベルセリアは丸腰で甲冑もつけていない。犬がかまえて低く唸る。三人組も剣を抜く。彼らはベルセリアを背後にかばい、近づくドラゴンに対峙した。

 「なんだ、いまの声は」
 捜索隊を分けて二人で探していたティタンジェとガロは獣の鳴き声を聞きつけた。
 「近いですね。行ってみましょう」
 剣をかまえて二人は森の奥深くへと進む。松明の明かりが見えた。声はそこからだった。伏して様子をうかがった二人は信じられない光景を目にした。
 その開けた土地では緑色の2頭のドラゴンが体にいくつもの縄をつけられて倒されていた。縄をつけているのは二本足で立つサイやトカゲに似た辺境の魔物たちだ。40頭近くいるだろうか。捕えたドラゴンに怪しげな液体を無理やり飲ませている。液体を飲んだドラゴンたちは気絶した。だが、二人の目をさらに釘付けにしたのはその魔物たちに指示を与える男だった。長身で頑健な体つき。精悍な面立ち。威風堂々とした風貌の青年。二人のよく知る人物――騎士団長オリビエ・ピエモンテその人だった。ティタンジェは吐き気と耳鳴りに襲われた。だが、驚きのあまり立ち上がってしまった。魔物たちもオリビエもその気配に気づく。松明を掲げ、ティタンジェの甲冑に彫られたリーザカインドの王家の紋章を見たオリビエはあざ笑った。
 「フン、レディナイトと小僧か。我らの計画がもうばれていたとは。二人なら相手はおまえたちで充分だ。始末しろ」
 魔物たちに命令し、彼は白いマントを翻して去ろうとする。駆け寄ろうとした二人の行く手を魔物たちが阻んだ。
 <獰猛な魔物相手では新人のガロ・ソノマはなぶり殺されてしまう。先に逃そう>
 そう判断したレディナイトは背後で剣をかまえる新人へ肩越しに振り返る。
 「いいか、私が合図をしたら…」
 「わかってます、攻撃ですね」
 「え?」
 その声を合図と捉えたのかガロは反射的に目の前の魔物の群れに躍り出た。電光石火のごとく、一太刀で魔物五体をなぎ倒し、返す刀で別の魔物たちの腕や首をはね上げる。素早さ、剣技(けんわざ)ともに鮮やかなほどだ。
 その強さに目を見張った。しかし気を取られてもいられない。ティタンジェは襲いかかってきたトカゲの魔物を一刀両断にした。群れの中へと果敢に切り込むティタンジェはガロにも負けない素早さで確実に急所を狙って次々と仕留めて行く。攻撃もままならず血しぶきを上げる魔物たち。断末魔の悲鳴が連続した。流れるような剣技で立て続けに二人は2メートル近い魔物たちの約半数を倒していた。
 「ティタンジェ様! ガロ!」
 騒ぎを聞きつけた騎士たちが集まってきた。その頃にはすでに魔物たちは殲滅していた。
 「これをたった二人でやったのか」
 30頭近い魔物の躯(むくろ)に騎士たちが驚く。ガロがティタンジェに声をかける。
 「逃げられましたね。ドラゴンもつれさらわれてしまった。……大丈夫ですか? 顔色が悪いですよ」
 聞こえているのかいないのか、彼女はオリビエの去った方を見つめながらつぶやいた。
 「オリビエ、私がわからないのか?」

その頃、ドラゴンがベルセリアたちに迫っていた。ピンが二人と犬に指示を出す。
「いいか、みんなで一斉に飛びかかるぞ」
「おう!」
 声を合図に駆けだしたが、ポンが出遅れた。太めの体と大剣を持つので、瞬発力は他の二人より遅い。動揺したポンが転んでしまった。その隙を突き、ドラゴンは飛びあがって彼めがけて襲いかかる。ポンは反射的に剣でドラゴンの爪を防いだ。だが、その爪に剣がはじかれてしまった。着地したドラゴンが再び丸腰のポンめがけて爪を振り下ろす。ピンとパンが助けに向かうが間に合わない。
 恐怖のあまりしゃがみこむポンの背後から唸り声を上げて誰かが走ってきた。ベルセリアだった。手にははじかれたポンの大剣を引きずるように持っている。
 小柄で華奢なベルセリアのどこにそんな力があったのか。歯を食いしばってベルセリアは大剣を振り上げ跳躍し、ドラゴンの肩口に深々と剣を突き立てる。
 「やめろ! もう仲間を失いたくないんだ!」
 ベルセリアは叫んでいた。ドラゴンが暴れる。ベルセリアは剣を離さない。三人と犬が見守る中、ドラゴンは剣を突き刺したままぶら下がるベルセリアを振り切ろうと空高く舞い上がる。
 「ベルーーー!!」
 三人が叫ぶ中、ドラゴンはベルセリアを乗せたまま星のかすむ空の彼方へと消えてしまった。