ドワーフの魔術師とエルフの狂戦士 5
静寂が訪れた戦場。倒れたドワーフ騎士団の向こうから、音もなく「木の葉の舞」のような影が降ってきた。
「……見つけたぞ、一族の汚点。エルウィン」
現れたのは、白銀の仮面をつけた五人のエルフ。エルフ特有の魔弓を構えた暗殺部隊「風の爪」だ。彼らは一族の純血と調和を乱す狂戦士(バーサーカー)であるエルウィンを抹殺するため、森の聖域から放たれた追跡者であった。
「チッ、今度は同族の掃除屋か。休ませてくれる気はないようだな」
「……連戦か」
「バルドゥル、こいつらはドワーフみたいに単純じゃないぞ。矢の軌道が読めるか?」
「不可能ではない。だが、今の戦闘で私の魔力残量は僅か九パーセントだ。正面からやり合うのは非効率すぎる」
暗殺者の一人が放った魔力の矢が、バルドゥルの髭のすぐ横をかすめた。しかし、バルドゥルは慌てることもなく、地面に転がっている兄ドルガンの戦鎚を指差した。
「エルウィン、あの槌を拾え。あれにはドワーフ王家の紋章――つまり、神殿の門を開く『固有周波数』が刻まれている」
「はあ? この重苦しい塊をか? ふん、面白そうじゃねえか!」
エルウィンは大剣を背負い、巨大な戦鎚を片手で掴み上げた。暗殺者たちが次の一手を放とうとした瞬間、バルドゥルが叫ぶ。
「全魔力を変換! 第六数式・空間跳躍(ショート・ジャンプ)!」
視界が歪み、一行の姿が掻き消えた。次に二人が目を開けたとき、そこは荒野ではなく、冷たく巨大な石造りの広間――伝説の「真理の天秤」が眠る地下神殿となっていた。
「……計算通り。兄上が追ってきてくれたおかげで、鍵(戦鎚)が手に入った」
魔力を使い果たしたバルドゥルは、ふらつきながらも杖を支えに立ち上がった。目の前には、巨大な天秤を象った祭壇が鎮座している。
「……おい、バルドゥル。これに願えば、お前の望む『賢い世界』とやらが手に入るのか?」
「理屈の上ではな。だがエルウィン、背後を見ろ。暗殺者たちも、私の魔法の残滓を辿ってここへ来る。扉が閉まるまで、あと四十秒だ」
背後の闇から、エルフの暗殺者たちの殺気が近づいてくる。
「四十秒か。上等だ。お前がその秤でゴニョゴニョ計算してる間、私はここで『対価』を払ってやるよ。――奴らの命というやつをな!」
エルウィンは戦鎚をバルドゥルの足元に置くと、血に飢えた笑みを浮かべて、再び大剣を構えた。
