アリスの冒険(第8話)

 宝の争奪戦に巻き込まれた私たちは学院の敷地内に閉じ込められてしまった。特殊部隊さえ突破できない「中には入れても外には出られない」結界の中で、不安や恐怖、苛立ちをかかえながら眠れない夜を過ごした。朝の光とともに希望がやってくるよう願いながら。

 「待って! あの、もしよかったら私と…」

 朝になった。残された誰もが疲れきってなすすべもなく石で封印された湖の上にいた。そんな私たちの元へ料理長のトバイアスが食事を作ってきてくれた。
 「オレが残っていてよかったよ。みんな、朝飯だ。これで力をつけてくれ」
 食欲はなかったけれど、みんな黙々と食事を始めた。
エミリーは食事も摂らず石になったカイル先輩のそばで膝を抱えて落ち込んでいる。エミリーだけじゃなく、サポート動物を石にされた生徒も、生徒を石にされたサポート動物も何かあると心配で相手の場所から動かない。
 不安はそれだけじゃなかった。ベネットたちの石像がある湖の中央に近づくと途端に石になってしまう。石化はまだ収まっていない。それが私たちの沈む気持ちをあおった。事態を把握している人もいなかった。だから水晶球から外へ連絡をとってもうまく伝わらない。外側では特殊部隊や駆けつけた報道陣が状況がわからずやきもきしているみたいだ。
 元はと言えばベネットの邪悪な記憶を呼び起こした私のせいだ。悲しむみんなの顔を見られなくなって大講堂の裏の空き部屋で一人、私は声を殺して泣いた。
全部私が悪いんだ。友達を悲しませた。校長先生を犠牲にした。大事件を起こしてしまった。こんなバカな私なんてこの世から消えてしまえばいいのに――!
 ふいに大講堂が騒がしくなった。不思議に思ってこっそり出てみると残されたみんなが大きな円陣をつくっている。円の中心には黒の魔導士の長であるおじいちゃんがいた。
 私を見つけたジョンが弾んだ声をかけてきた。
 「おい、あのじいさんすごいな!」
 「なにがあったの」
 「水晶球ニュースの報道レポーターたちが結界の中に入ってきたんだ。『我々は危険を冒して突入しました』とか言って。それで無理矢理オレたちをここに集めて『悪いのは生徒を避難させられなかった無能なスターク校長です。このように全員怯えています』なんて偏見報道を始めたんだ」
 「ひどい!」
 「それに反論したやつがいた。食中毒事件で一緒だったレッドフェニックスのビーチャーだ」
 ジョンの肩にとまるナイトウォッチャーも愉快そうに
 「さすがいざとなると胆力を発揮するクラスの生徒だぜ。『自分を犠牲にして僕らを守った校長先生を悪く言うな!』って叫んでな。レッドフェニックス1年の女子集団も続いて『無能なのはいいかげんな報道をするあんたたちだ!』って加勢した。特にボーイッシュな子は迫力あったな」
 アリリアたちだ。ジョンがあとをつなぐ。
 「そこへあのじいさんがあらわれて仲裁に入ったんだ。『全員を守り切れなかったのは校長の責任じゃが、校長への侮辱は聞き捨てならん』っていってレポーターを太鼓に変えたんだ。『おっと、こっちのほうがおまえさんたち向きかの』ってあとのやつらをドラムやキーボードに変えて」
悪戯っぽいおじいちゃんの声が聞こえる。
 「好きなだけ叩いてよいが、こわしてはならんぞ」
みんな大喜びだ。太鼓は魔法吹奏楽部が、ドラムやキーボードはバンドの生徒たちがもらった。私は大講堂から拍手の波を縫って退場するおじいちゃんを外でつかまえた。
 「おじいちゃん!」
 「おお、おまえさんもおったのか。無事で何よりじゃよ」
 「ごめんなさい。私がベネットを覚醒させたせいで…」
涙があふれてきた。うつむく私の頭をおじいちゃんはよしよしとなでる。
 「遅かれ早かれベネディクトはああなっておったよ。運命の歯車が少し早く回転しただけじゃ。何か大きなことが起こるときはの、始めたのは一人でもその前から何らかの兆候や布石がすでにあるものなんじゃ。たった一人で山は動かん。
もう一人で泣くな。どんなかたちであれ、誰にでも話を聞いてくれる人は必ずいるもんじゃ。いまはわしとサポート動物がおまえさんのそばにおるよ」
 「まったく、気にしてるならいつでもボクに話すニャ」
足元でスノウがフサフサしっぽをピンと立てて控えていた。聞いて余計泣けてきた。
そうだ。どうして一人だと思ったんだろう。気にかけてくれたり支えてくれる人たちがいるのに。そんな人たちの気持ちを置き去りにしてうずくまってちゃいけない。
 「ところで、今回のいきさつをわかる範囲でいいから教えてくれんかの」
説明するとおじいちゃんは驚いたように目を見開いた。
 「よくわかったよ。しかし、なんとまあ、おまえさん、一部始終かかわっておったのか」
いつしか私たちは校長先生の菩提樹の前に来ていた。緑の葉が生い茂り静かにたたずんでいる。おじいちゃんが優しくその太い幹をなでる。
 「よくがんばったのう。合わせて約2000人中、混乱の中でここに残ったのが300人とはよくやったよ。最後は一人で食い止めて…」
 「そういえばおじいちゃんは入ってきて大丈夫だったの?」
 「誰か中に入らなければ様子もわからんからの。安心せい。外の連中と協力しておまえさんたちは助け出すよ。確かに、魔法政府の保管庫でオーブの代わりを探すより、散った破片を回収してその力で全員を外に出すほうが早そうじゃの」
 「破片? オーブは消えたんだよ?」
 「いや、消えておらんよ。ベネディクトたちのそばによると石化するんじゃろ。それが証拠じゃ。破片をすべて集めれば石化も直せるかもしれん。じゃが、どうやって探すか…」
 「探し物…。あっ、前にもやった! おじいちゃん、オーブの成分がわかれば探せるよ。私の友達に天才がいるの」

 こうしてオリエが呼ばれた。
その間に私はエミリーにカイル先輩が元に戻るかもしれないと教えた。エミリーの瞳に明るい光が宿る。「私も手伝う!」と立ち上がった。
科学室に行くとオリエと残った魔法科学部が機材を用意していた。ジョンもいた。
 「じいさんに伝えたいことがあって。ナイトがこれをみつけたんだ」
外側に成分を調べるよう指示していたおじいちゃんが戻ってきた。
ジョンが見せたのは茶色く変色した大きな葉だった。おじいちゃんが愕然とする。
 「なんと! 菩提樹が枯れておるのか」
ナイトウォッチャーが真剣な顔になる。
 「校長も頑張っているけれど石化が進行してきたんだろう。オレは森の鳥たちと様子を見て何かあったら報告する」
ナイトウォッチャーがジョンの肩から窓の外へと飛び立つ。沈む私たちを奮い立たせてくれたのはエミリーだった。
 「校長先生ががんばってるなら私たちもがんばろう。あきらめなければ負けないよ!」
うなずいてみんなで準備を進めた。
一時間後、シュルルルルッと上空から何かが降りてくる音が聞こえた。
 「じいちゃん、成分がわかったぞ!」
私の鼓動が一つ大きく跳ね上がった。窓の外に魔法陣の描かれた円盤に乗った黒髪の男の子がいた。ずっと忘れられなかった黒の魔導士ハルだ。久し振りに見るハルはやっぱりかっこよかった。その真剣な表情と研ぎ澄まされたまなざしにキュッと心臓を掴まれるような息苦しさを覚える。隣りでスノウが「ほほう、あれか」とちょっと意味ありげな顔をした。ハルは窓を乗り越えて科学室に降り立ち、手にしていた紙をおじいちゃんに渡す。
 「おお、でかした。ここまで細かく書いてあれば充分じゃ」
 「うん、みんなで頑張って調べたんだ。何かあったらまた報告する」
ハルは言って円盤に乗り込み、勢いよく空へと上昇した。
 「待て、ハル!」
ゴン!
何かに当たる音がして、ハルが円盤の上で頭を押さえてうずくまった。
 「中に入ったら出られなくなるのを忘れとったのか。ちょうどええ。おまえも手伝え」
こうして、ハルも結界に閉じ込められてしまった。なんか、ハルって面白い人。

 成分をもとに魔法科学部が発見機を作り始めた。今回も私が黄色い液体まみれになったあとで1個完成。もうお約束だよね、これ。
探す前に寮でシャワーを使うようにすすめられて、私は発見機を腕に巻いて校舎を出た。すると布が赤く反応する。見回すと木の枝にとまるカラスが光る何かをくわえていた。
きっとオーブの破片だ。でも、どうやって取ろう。
はっ、と気がつけば足元にサッカーボールが。よし、これをカラスにあてて落とそう。私は思いっきりサッカーボールを蹴った。
いっけーーー!
ところが、ボールはあらぬ方向に飛んでいき、銅像を壊してしまった。驚いたカラスはくわえていたオーブを落として飛び去ってしまう。
やったあ! やらかした感じはあるけど1個手に入れたからいいよね。
輝くオーブのかけらを拾い、寮に帰って髪を洗って着替えて戻った。
すると大講堂で生徒たちのが大げんかしている。
 「なんてことをしてくれるんだ!」
 「そんなこと言われても、僕たちだってわからないよ!」
 「どうしたの?」
エミリーに訊くと
 「サッカーで活躍した例の金髪の少年があらわれたんだって。それで、サッカーボールでブルードラゴンの銅像を壊したのを見てた人がいて」
私は青くなる。それ、まさか…。
 「彼が逃げたあと、銅像の縁からオーブの破片が見つかったの。金髪の少年が見つけてくれなかったら高いところにあるし、誰も気づかなかったんだけど、ブルードラゴンが大激怒してブラックタートルに金髪の少年を出せって。ブルードラゴンて誇り高いからね」
ホワイトタイガーの次にはブルードラゴンまで…。嫌われていくなあ、金髪の少年。
そこはホワイトタイガーがおさめる。
 「ひとまず、落ち着いて。金髪の少年はあとでつるしあげるとして」
つるしあげられるんだ。
 「いまはオーブ探しが先だ。協力し合おう」
 「仕方ない。いったん和平を結ぼう」
 「だけど、僕らは本当に知らないからな。一体なんなんだ、金髪の少年は」
なんか、ブラックタートルにも不信感持たれたよ…。
こうして破片探しが始まった。途中、菩提樹の腐食が進んだとナイトウォッチャーが知らせた。それでも毅然として立つ校長先生を見てみんな「あきらめなければ負けない」を合言葉に探し続けた。300人で探すと早い。夕方になる前に全部見つかった。
おじいちゃんとハルは湖に祭壇を作った。破片が祭壇に集められる。
 「よくがんばったの。次はみんなで自分の好きな歌を歌ったり、演奏したりするんじゃ。できるだけ楽しいヤツをの。それがこの破片に力を与える」
解散後、バンドの人たちに誘われるエミリーやジョンを見送った私はこっそりおじいちゃんに尋ねる。
 「学院の宝なのに元通りにしないの?」
 「オーブはただの宝の力の増幅機で抑制機じゃよ。宝の力を蓄えるからそれ自体強力な魔力を宿すがの。うむ、食堂に埋まっておったから愛の光も正義の裁きも勘違いしたか」
 「じゃあ、宝って一体…」
 「『音』に関係あるニャ?」
スノウが叡智をたたえた深いブルーの瞳を私たちに向けて尋ねる。
 「宝が自然の四大元素と関係がある“第5のチカラ”なら物質であるオーブはちがうニャと。『生徒の笑い声が宝を守っている』なら、“明るい音”が関係しているニャ?」
 「よう気づいたのう。サポート動物にしておくにはおしい存在じゃ」
おじいちゃんは目を細める。
 「“第5のチカラ”は『音』じゃ。特定の音律や振動は自然の元素に影響を及ぼす。おまえさんたちの楽しい音をオーブが強い力に変えて宝に与えるんじゃ。石化が進行する以上、おまえさんたちを外に出すだけでは済まなくなった。宝の力で学院や世界を救おうぞ」
全員が配置に着いた。「うちらは“ロッコーオロシ”にするで!」とホワイトタイガーの1年生が盛り上がっている。
 「“ロッコーオロシ”てなんだニャ?」
 「カンサイ国の国歌だよ」
 「で、なんで虎組の1年は全員カンサイ語だニャ?」
 「オリエが流行らせたんだって」
 「…オリエの影響力はすさまじいニャア」
 「ね、スノウ、私たちは一緒に歌える歌にしようか」
 「ボクらが共通で知ってる歌って…」
 「ミケコの生涯 その愛」
 「これしかないか…」
 「ニャア…」
 微妙な空気が流れたところに
「ハル、おまえも生徒さんたちを手伝え。おお、ちょうどよかった。アリス・ウィンターフェル、うちの孫の面倒を見てやってくれ」
 こうしてハルが一緒になった。うわあ、緊張する…。

 「ごめん!」
 ハルは申し訳なさそうに頭を下げる。
 「オレ、音痴なんだ」
 思わず私とスノウは一緒にズッコケそうになる。ハルって意外性キャラだなあ…。
 「でも!」
 必死な声のハルが片膝をついてしゃがみ、スノウの背に片手を置き、もう片方の手で私の手を握った。驚いて息を呑んで固まってしまう。心臓の音が大きくてハルに聞こえそう。手から暖かいぬくもりが伝わり、体が熱くなってきた。ハルの手から心地よいエネルギーが流れてくる。
 「補助魔法で応援するから。がんばって!」
 「は、はいっ…」
 赤くなる顔を隠す私とそれに気づいていないハルをスノウはいたずらっぽい目で見守る。
 急に騒がしくなった。森から小鳥たちの大群がやってきて吹奏楽部の演奏に合わせて歌い始めたからだ。ジョンとナイトウォッチャーが世話している小鳥たちだ。学院の危機を知って二人の手助けにきたんだ。ジョンは空で旋回する小鳥たちを驚いたように見上げ、ナイトウォッチャーと一緒に笑顔になった。
 今度はおどろおどろしいロックが聞こえてくる。
 「カイル様、私がお助けいたしますわ」
 「オレらもですぜ、カイルの兄貴!」
 幽霊アビゲイルとデスメタルズだ。
 「あんたたち、お兄ちゃんに近寄らないでよね!」
 エミリーが目を三角にして怒る。
 歓声が上がった。空から花が降ってきた。外にいる生徒たちだ。中の様子を知って「がんばれ!」のメッセージを上空にあげて応援してくれる。
 変な衣装が降ってきた。ゴルーチェ先輩なりの応援らしい。
 みんな、ありがとう!
 「すごいね、これ!」
 ハルも興奮する。
 おじいちゃんの合図で歌や演奏が始まった。
 しばらくするとおじいちゃんの呪文を唱える祭壇の前でオーブの破片が輝きだし、バラバラだった歌や音楽がオーブに吸収され、一つの音楽に変わった。共鳴するように菩提樹から二筋の光が放たれ、それが二つの歌声に変わったとき、私が食堂に開けた穴から何かが飛び出してきた。
それは神々しい金色の鹿のような動物だった。鬣(たてがみ)をなびかせ、角や髭を生やし、蹄(ひづめ)の四足で軽々と飛びまわる。オーブの歌声に合わせて歌い、踊るように私たちの周りを巡る。オーブと動物の三重唱で幸せな気分になるとともに、大自然の癒しの力が体中にしみこんでくるのを私は感じた。

 歌が終わり動物が去ると石化が解け、空気が軽くなった。結界が解けたと直感でわかった。菩提樹が逆回転するように枝が内側へ吸収されて幹が細くなって縮み、校長先生の姿に戻った。オーブを抱えたまま倒れる校長先生をおじいちゃんが支える。
 「ようがんばった、スターク校長。みんな救われた。学院も世界ももう大丈夫じゃ」
 やつれた顔の校長先生が静かにうなずく。
 エミリーがカイル先輩に駆け寄って飛びつこうとしてアビゲイルと競争になり、デスメタルズに先を越された。
 「ちょっと! お兄ちゃんから離れなさい!」
 「おまえたち、私の邪魔をするな!」
 「よかったですぜ~、兄貴ィ~」
 朦朧としている先輩にすがってオイオイ泣くデスメタルズと怒るエミリーにアビゲイル。
 「よかったねえ、エミリー」
 「あれ、よかったっていうのか?」
 涙ぐむオリエと首をかしげるジョン。
 森へ帰る小鳥たちにジョンとナイトウォッチャーが手を振って感謝を伝えた。
 特殊部隊や救護班が箒に乗ってやってきた。おじいちゃんの指示で愛の光と正義の裁きは逮捕され、蛇も捕獲された。石になっていた人たちや気絶していたベネットたちが搬送されていく。
 動物の消えたほうを見ながら私とスノウはつぶやいた。
 「綺麗な動物だったね」
 「美しい声だったニャ」
 「君たち見えたの? そうか、オレの、魔導士の補助を受けたから宝が見えたのか」
 「あれが宝なの?」
 「うん、吉祥の動物、麒麟(キーリン)だよ。君たちの楽しい音楽に共鳴して姿をあらわしたんだね。幸せを運ぶ動物で、パワーが強すぎて自分では制御できないから、純粋な幸せの力で抑えるしかなくて…」
 説明しているうちにハルは気付いてあわてて私の手を離した。
 「ごめん、ずっと握ってた」
 言われて意識してしまった。ハルのぬくもりがまだ手に残っている。
 「じゃあ、オレ、じいちゃんのところに行くよ。引き続き学院は守るから」
 ハルが行こうとする。次にいつ会えるかわからない。このまま終わりにするなんて嫌だ。
 「待って!」
円盤に乗り込もうとしたハルが動きを止める。りりしいハルの視線の前で口ごもるのをスノウが「ほれ。言え」とばかりに私の脚へパタンパタンとしっぽをぶつけてうながす。私はハルに握られた手を胸の前でギュッと握って勇気を振り絞った。
 「あのっ、よかったら、…友達になってください!」
 ハルは面食らった顔になったものの
 「え、オレ? いいよ」
とあっさり受けてくれた。よ、よかったあ。
 「ありがとう。私はアリス・ウィンターフェル。彼はスノウ」
 「よろしくニャ」
 「オレはハル・ゲマンド。ホーリーネームはラスト・ノート」
 水晶球の連絡先を交換して別れた。
どうしよう。嬉しすぎて、ハルが行った後もまだ心臓がドキドキしてるよ。
 「アリスー!」
 エミリー、オリエ、ジョン、サポート動物たちが駆け寄ってくる。エミリーが言う。
 「みんなで今回のことを検証しよう。アリス、何か知ってる?」
 全部知ってるけれど、みんなには言えないや。スノウが心に呼びかけてくる。
 <あとで話をすり合わせるニャ。おまえドジっ子だからうっかりもらしそうだニャ>
 久し振りのスノウの憎まれ口もなんだか嬉しい。
 石でふさがれたままの湖の中央でトバイアスの声が聞こえる。
 「腹の減ってるやつはいないかー。回復祝いにごちそう作ったぞー」
 みんなで顔を見合わせる。ジョンがニヤリと笑った。
 「まずはメシだな」
 「せやな。お腹すいたわ」
 宝が食堂に封印されていた理由がいまならわかる。宝に力を与えていたのがみんなで楽しくおいしいものを食べるあの幸せなざわめきだったんだと。私は自然と笑顔になった。
 「行こう!」
 ごちそうを乗せたお皿が空中を舞う湖の中央めがけて、私たちは駆けだしていた。

(終わり)

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