演術士物語(アクターズ・サーガ)【脚本】

プロローグ

舞台上にショウイチ、カオル、ミスズ、ウィルがそれぞれの位置に立っている。

ショウイチ「この世界にはかつて数多の英雄達がいた。ある者は悪魔を退け、ある者は神に挑み、またある者は正義を貫き、民を守り抜いた。」
カオル「その英雄達の魂を宿し、その力を以って戦う術が、一人の男によって創られた。」
四人 「その術の名は『演術』。」
ウィル「演術は、英雄の魂が宿る魔導書『戯曲』から『台詞』と呼ばれる呪文を詠唱し、自分の体に英雄の魂を宿すことで、英雄の力を自在に使い、戦う術。」
ミスズ「この術を伝えられた4人の『演術士』によって、戦乱の渦中にあった大陸に平和がもたらされ、この国、エタニティア王国が生まれた。」
カオル「エタニティア初代国王と四人の演術士は、大陸の平和を守るため、王国の騎士たちに演術を伝え、演術士たちの騎士団ともいうべき、『演撃師団』を結成する。」
ウィル「それから、400年の月日が流れた・・・。」

     ウィル、はける。

ミスズ「エタニティア王国の東方地区にある小さな村、カグラ村。物語はここから始まる。」

     ミスズ、はける。

ショウイチ「正体不明の賊に襲われたカグラ村。そこに向かう一人の演術士がいた。」

     ショウイチ、はける。

カオル「私は走った!村には私の大切な人がいる!守りたい人がいる!私は走った!休むことも忘れ、襲いかかる敵を薙ぎ払い、私は、カグラ村を目指し、ただひたすらに走った!」

     照明が変わる。
     舞台中央にカオルが駆け付ける。
     同時に敵が出てきてカオルを囲む。

カオル「邪魔だぁっ!どけぇえっ!」

襲い来る敵をなぎ倒し、殲滅する。

ミスズ(声)「先輩!大丈夫ですか!」

     カオルの元に駆け込んでくるミスズとウィル。

ミスズ「一人で無茶しすぎです!」
ウィル「団長が急ぎこちらに向かっているとのことです。合流次第、部隊をを立て直し一気に片をつけましょう!」
カオル「・・・お前達はここで団長の到着を待て。私は先に征く。」
ミスズ「先輩!」
ウィル「恐れながら、今の副団長は私情を優先させ、大義をお忘れになっていらっしゃる。ここで最優先すべきことは、敵勢力の完全なる制圧!敵の情報が少ないこの状況で無茶をし、万が一敵を討ち漏らすようなことがあれば、それこそ全ての犠牲が無駄になってしまいます!」
カオル「ああ・・・そうだな。ウィル、お前は正しい。正しいよ。お前のような人間が人の上に立つべきなんだろうな。」
ウィル「副団長!」
ミスズ「もういいよ!・・・先輩がこうなったら、もう止められない・・・。」
カオル「・・・すまない。お前たちにはいつも苦労をかける・・・。」
ミスズ「先輩、ただ一つだけお願いがあります。」
カオル「・・・わかっているさ。『死ぬな』、だろう?」
ミスズ「はい。それと・・・必ず団長の奥さんと娘さんも、そこまでするんですから助け出してくださいね。」
ウィル「ミスズ先輩、それだとお願い一つじゃなくて二つになりますよ。」
ミスズ「いーの!そういう細かいツッコミは!いいとこなんだから黙っててよ!」

     笑うカオル。
     そこに敵が三人を囲むように現れる。

カオル「チッ・・・次から次へと・・・!」
ウィル「副団長、ここは我々にお任せを!」
ミスズ「先輩は先に行ってください!」
カオル「二人とも、ありがとう・・・。」

     ホルダーから戯曲を取り出し、構える三人。

カオル・ミスズ・ウィル「英雄召喚!」

     敵が三人に襲いかかる。
     ミスズとウィルの二人が道を拓きカオルが先に行く。
     二人が戦っているとそこにショウイチが現れて戦いに加わる。

ウィル「団長!」
ショウイチ「お前ら、良く持ちこたえてくれた!あとは任せとけ!」

     圧倒的強さで敵を瞬殺するショウイチ。

ショウイチ「カオルはどうした?」
ミスズ「先に行くと言って、一人で・・・。」
ショウイチ「そうか・・・。俺はこれからカオルを追う。お前らは後続部隊と合流し、敵
勢力を掃討しろ。」
ミスズ・ウィル「はっ!」

     カオルを追うショウイチ。別の方向に進むミスズ、ウィル。
     暗転。
     無数の怒号・怒声の中響く斬撃音。

カオル(声)「リンさん!ユカリぃっ!」

     扉をぶち破る音。
     ユカリたちの家の中に入るカオル。
     家の中には倒れているリン(ユカリの母)と敵が。

カオル「貴様ぁぁぁぁぁっ!」

     怒りの一撃で敵を瞬殺するカオル。
     リンに駆け寄る。

カオル「リンさん・・・!リンさん!しっかり・・・!」

     カオルの呼びかけに答えないリン。
     すでに息絶えている。

カオル「リンさん・・・くそぉおおっ・・・!」

     怒りと悔しさのあまり崩れるカオル。
     そこに、恐る恐るユカリが入ってくる。

ユカリ「・・・カオル・・・さん・・・?」
カオル「ユカリ・・・!ユカリぃぃぃっ!」

     ユカリを抱きしめるカオル。

ユカリ「カオルさん・・・私・・・守れなかった・・・!お母さんのこと・・・守りたか
ったのに・・・!」
カオル「貴女のせいじゃない・・・!ごめんなさい・・・!ごめんなさい・・・!私が、
私がもっと早くに・・・!ごめんなさい・・・!」

     泣きじゃくる二人。
     照明が変わる。
     ショウイチ、ミスズ、ウィルが出てくる。
     カオルが客席に顔を向ける。

カオル「この物語は、私が助け出した少女が、演術士として、自分の夢を掴む物語。」
ショウイチ「彼女は、まだ英雄ではない、演術士でもない。どこにでもいる、普通の人間。」
ミスズ「今は誰も知らない、彼女が世界の中で変わっていくことも、そして、彼女とその仲間たちが世界を変えていくことも。」
ウィル「そして5年後、物語は動き出す。物語に語られる英雄の力で戦う、新たなる英雄たちの物語が・・・。」

     BGM流れる。
     暗転。

第一幕
     エタニティア王国東方地区。
     演術士訓練学校・校庭。
     一人の少女(ユカリ)が教室に向かって歩いている。
     そこに後ろからサクラがユカリに駆け寄る。

サクラ「ユカリちゃん!おはよー!」
ユカリ「サクラ、おはよ。」
サクラ「ユカリちゃんユカリちゃん、何か言うことない?あるでしょ?ね?ね?ね!」
ユカリ「はいはい。入団試験合格おめでとう。・・・これでいい?」
サクラ「ありがとー!さっすがユカリちゃん、わかってるー!」
ユカリ「あそこまで言われたら誰だってわかるでしょ・・・でも、ホントにすごいよね。」
サクラ「んー?なーにがー?。」
ユカリ「今まで受けた演撃師団の入団試験、ほとんど合格してるでしょ?」
サクラ「まぁね~。8つ受けて、そのうち6つは受かってるよ~。」
ユカリ「この学校に入学したての頃はもじもじおどおどしてたのに・・・あの頃とはホント別人だよね。」
サクラ「その頃の話は言わないで~。黒歴史黒歴史!消して消して!」
ユカリ「いやだよ。忘れないよ。サクラが有名になったら言いふらすんだから」
サクラ「ユカリちゃ~ん・・・。」
ユカリ「冗談だよ、冗談。」
ミスズ(声)「あー!いたいたー!サクラー!!」

     ミスズが駆け込んできてサクラを抱きしめる。

ミスズ「サクラ~!よく頑張ったね~!まさか第二演撃師団にまで合格するなんて・・・サクラは先生の誇り!自慢の生徒だよ~!好き~!!」
サクラ「みーちゃんせんせい・・・くるしい・・・!」
ユカリ「ミスズ先生!落ち着いてください、サクラが死んじゃいます!」
ミスズ「ユカリ?え?(ぐったりしているサクラを見る)・・・サクラー!大丈夫!?どうしたの?いったい何があったの?ひどい・・・一体誰がこんなことを・・・!」
ユカリ「先生です。」
ミスズ「てへッ☆」
ユカリ「かわいくしてもダメです。」
トウマ「全然かわいくないしな。」

     トウマがやってくる。傍らにはユキがいる。

ミスズ「やれやれ・・・大人の女の魅力がわからんとは・・・トウマもまだまだおこちゃまですなぁ・・・。」
ユキ 「黙れ年増。」
ミスズ「グサっ!」
トウマ「ユキ、ストレートに言い過ぎだ、もう少しオブラートに包んでやれ。。」
ユキ 「行き遅れ。」
ミスズ「ひでぶっ!」
トウマ「ユキ、そうじゃない。内容は当たってるがな。」
サクラ「みーちゃん先生だって行き遅れたくて行き遅れてるわけじゃないんだよ!婚活だって頑張ってるんだから!努力してるんだから!」
ユカリ「・・・それフォローになってない。逆効果・・・。」
ミスズ「ひどい!みんなひどいよ!寄ってたかって大人をいじめて・・・みんなのお母さんに言いつけてやるんだから!」
トウマ「待て!」
ミスズ「何よ!今更謝ったって遅いんだからね!絶対お母さんに言いつけてやるんだから!」
トウマ「別にそっちは好きにすればいい。俺の用事はこれだ。」

     トウマ、一枚の紙をミスズに渡す。

ミスズ「第一演撃師団入団試験申込書・・・本気なのね。」
トウマ「この学校に入学する前から目指していた場所だ。受けないわけがない。」
ミスズ「第一師団への入団試験は難易度最高ランク。たとえ、歴代最強の訓練生といわれるあなたでも受かるかどうかは・・・」
トウマ「結果はやればわかる。アンタは黙って手続きを進めろ。」
ミスズ「かしこま☆」
トウマ・ユキ「消えろ。」
ミスズ「そういえば!ユカリも受けるんでしょ?第一師団。」
ユカリ「え?」
ミスズ「入学したばかりの頃に言ってたじゃない。『私は絶対第一演劇師団に入ってみせます!』って。」
サクラ「そうじゃん!言ってた言ってた!じゃあ、ユカリちゃんが受けるなら私も受けてみようかな~・・・。」
ユカリ「・・・ごめんサクラ。受けるなら一人で受けて。私は・・・受けないから。」
サクラ「え?」
ミスズ「ユカリどうしたの?今まで他の入団試験受けなかったのだって私てっきり第一師団一本に絞ってるからだと・・・。」
ユカリ「先生、そのことで相談があります。今日この後ってお時間ありますでしょうか?」
ミスズ「じゃあ、今日の放課後に時間取るから、相談室にいらっしゃい。」
ユカリ「ありがとうございます。」
ミスズ「じゃ、私今日は一年生の授業だからあとでね。ほらユキ、行くよ。」
ユキ 「まだ授業時間じゃない・・・。」
ミスズ「でも、もうすぐ時間よ。ユキがトウマの事が好きで片時も離れたくないのは分かるけど、それはそれ、これはこれよ。」
ユキ 「黙れ。私と若はそんな浮ついた関係ではない・・・!」
トウマ「やめろユキ、今のはお前が悪い。それに、ここでは『若』はやめろと言ってるだろう。」
ユキ 「申し訳ございません・・・トウマ様。」
トウマ「(ため息)・・・行け。また後でな。」

     ユキ、小さく頷き立ち去る。

ミスズ「んじゃ、私も行きますか。またね!愛しの教え子ちゃんたち☆」

     ミスズ、一年生の授業に向かう。

ユカリ「じゃ、私たちもそろそろ教室に・・・。」
トウマ「待て。お前、どういうつもりだ?」
ユカリ「何が?」
トウマ「さっきの話だ。何故、第一師団の入団試験を受けない?」
ユカリ「・・・トウマには関係ないよ。行こ、サクラ。」
トウマ「お前は何のためにここにいる?お前の夢を叶えるためじゃないのか?」
ユカリ「私はもういいの。この二年間やれるだけのことはやってきた。だから、ちゃんと前を向いて次の人生に進めるの。みんなと頑張ったこの二年間は、絶対無駄じゃないと思うから・・・。」

     笑顔を見せるユカリ。気のせいかその笑顔はどことなく寂しそう。

トウマ「・・・認めないからな。絶対に。」

     トウマ立ち去る。

ユカリ「・・・サクラごめんね。行こ!」
サクラ「(小声で)・・・やだ・・・。」
ユカリ「サクラ?」
サクラ「いやだよユカリちゃん!なんで諦めちゃうの?ユカリちゃん誰よりも頑張ってるじゃん!それなのに・・・!」
ユカリ「私は、サクラやトウマみたいに演術士としての才能があるわけじゃない。・・・これ以上はもう・・・。」
サクラ「そんなことない!みーちゃん先生だって言ってたじゃん。戯曲と演術士には相性があるって。ユカリちゃんもまだ自分と相性のいい戯曲が見つかってないだけできっと・・・」

     ユカリ、サクラの言葉を遮るように手に持っていた本をサクラの前に突き出す。

ユカリ「これで200冊目。」
サクラ「え?」
ユカリ「この一年半、様々な戯曲を読み漁った。そしてその都度演じてみた。でも、どれもダメだった・・・。」
サクラ「・・・それでも!まだわかんない・・・!」

     ユカリ、持っていた戯曲をサクラに投げつける。

ユカリ「気安く言わないでよ!」

     授業開始のベルが鳴る。

ユカリ「行きなよ・・・。授業始まったよ。」
サクラ「ユカリちゃんは・・・?」
ユカリ「・・・ごめん。」
サクラ「じゃあ私も行かない!」
ユカリ「サクラ。」
サクラ「ユカリちゃんが言ったんじゃん!私も何があっても諦めないから、一緒に頑張ろ
うって!入学したての頃、何もうまく出来なくて、人付き合いもうまくいかなく
て・・・でも、ユカリちゃんがそう言ってくれたから頑張れた!ユカリちゃんが
一緒にいてくれたから、私は・・・。」

     サクラの目から涙が溢れる。

ユカリ「違うよ。サクラが頑張ったから、サクラの今がある。私は何もしてない。」
サクラ「ユカリちゃん!」
ユカリ「ごめん・・・もう私には構わないで。・・・お願い。」

     何も言えなくなるサクラ。
     泣きながらその場を走り去る。
     ただ俯いたまま立ち尽くすユカリ。
     暗転。

第二幕
     演術士訓練学校・教室。
     授業後の教室を掃除しているサクラとシュウ。
     サクラの表情は暗い。

シュウ「珍しいこともあるもんだねー。あのバカ真面目が授業休むなんてねー。」
サクラ「・・・。」
シュウ「・・・何があったかは言えない、と。」
サクラ「・・・ごめん。」
シュウ「いーよいーよ。別に何があったかなんてキョーミないしー。ただ・・・いつまで
    もそんな湿気た面でいられてもこっちのモチベが落ちるからさー。」
サクラ「・・・ごめん。」
トウマ(声)「笑わせるな。」

     トウマがやってくる。

トウマ「他人の表情一つで揺らぐ程度の薄弱な意志しか持ち合わせていないなら、さっさ
と辞めてしまったらどうだ?」
シュウ「おーこわっ!なにー?いつも以上に突っかかってくるじゃーん。どしたのー?」
トウマ「お前には関係ない。」
シュウ「あーそーですかー。じゃー、いちいち突っかかってくるのやめてほしいんですけどー。」
トウマ「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。」

     シュウを睨むトウマ

シュウ「わーった。わかりましたー。僕が悪かったですー。ごーめーんーなーさーいー。」
トウマ「シュウ・・・貴様・・・!」
シュウ「それに、ホラ。お客さんだよー。」

     シュウの指す方に振り返るトウマ。セイヤがやってくる。

セイヤ「トウマ!もう一度勝負だ!」
トウマ「・・・やめておけ。今のお前では何度挑もうが俺には勝てない。」
セイヤ「やってみなきゃわかんねぇだろ!次こそ・・・次こそおれが勝つ!」
シュウ「(笑う)セーヤ君、君コテンパンにやられすぎて頭おかしくなっちゃったー?なーに『次こそ』って?この2年近くずーっとトーマ君にいいとこなしでやられっぱなしの君が、次に勝てるって根拠はー?」
セイヤ「根拠なんかねぇよ!無いけど、無くても勝つ!」
シュウ「そんな気持ち一つで不可能が可能になるほど、世の中甘くねーのよー。」
サクラ「わかんないじゃん!」

      突然怒鳴るサクラ。

サクラ「誰が不可能って決めたの?諦めなければ・・・できるかもしれないじゃん!」

      泣き崩れるサクラ

セイヤ「お、おいサクラ?」
シュウ「いやいや何泣いてんのー?意味わかんないんですけどー?ちょっとトーマ君さ、君からも言ってやってよー。無理なものは無理だってさー。」
トウマ「・・・そうだな。」

     セイヤの前に立つトウマ

トウマ「悪かったな、勝てないと決めつけて。確かにやってみなければわからんよな。」
シュウ「はぁー?」
トウマ「相手してやる。だが手加減はせん。俺に勝ちたいなら死ぬ気で来い。」
セイヤ「ヘッ・・・手加減なんかしたことねぇじゃねぇか!上等だ!次こそ勝つ!」

     トウマ、セイヤ出ていく。
     入れ違いでナツキやってくる。

ナツキ「なにあいつら、また戦る気なの?元気だねぇ。」
シュウ「そーなの。ホント飽きずによーやるよねー。」
ナツキ「サク、ユカは来てない?」

     首を横に振るサクラ。

ナツキ「そっか・・・。みーちゃん先生が相談室で待ってるんだけど、全然来ないって。・・・本当、どうしちゃったんだか。」
サクラ「私が・・・私がもっとユカリちゃんの気持ちわかってあげてれば・・・。」
ナツキ「ストーップ!サク、アイツがアンタに自分の気持ちわかってくれって言ったの?
    何度もアピールしてんのに何で気づいてくれないの?って。」
サクラ「それは・・・。」
シュウ「ゆーわけないじゃーん。あの『自分の事は二の次で周りの事が第一』を絵に描いたよーな、典型的お人よしのあのユカリちゃんがさー。」
ナツキ「アンタ、黙っててくれる?うざい。・・・とにかく、こんなとこでうじうじしてたって何にも解決しないんだからさ、ホラ行くよ!」
サクラ「え・・・?行くって・・・?」
ナツキ「決まってるでしょ。ユカ見つけてガツンと言ってやるの!『何にも言わずに一人で抱えて悩んでたってわかるわけないでしょバーカ!』って。」
シュウ「あ、面白そー。僕も行こーかなー。」
ナツキ「来るなバカ。」
サクラ「で、でも・・・。」
ナツキ「いいのよ!そんくらい言わないとアイツにはわかんないのよ。なんなのアイツ!
人の問題ごとには頼みもしないのに首突っ込んでくるくせに、自分の事となった
ら弱音の一つも言わないんだから・・・。もっと甘えろってのよあのバカ!」
シュウ「なにー?ナツさんもしかして好きなのー?ユカリちゃんのことー?」
ナツキ「好きに決まってるわよ!アイツ人にはいっぱい貸し作るくせに全然返させてく
れないからイライラしてたところなのよね~。ホラ!サク行くよ!アンタもあた
しと同じでしょ?い~っぱいあるんじゃない?言いたいこと。」
サクラ「・・・うん!ある!」
ナツキ「よし!行くよサク!待ってろユカ~!」
サクラ「待ってろ~!」

     駆け出すナツキ、サクラ。

シュウ「やれやれー。みんな元気だことー・・・。」

     ナツキたちが去った方に歩き出すシュウ。
     2、3歩歩きだして立ち止まる。

シュウ「・・・そーそー。誰だか知んないし、何の目的でさっきからずーっと隠れて見てるのか知んないけどさー・・・おかしな真似したら容赦しないからね。」

     仮面の男が姿を現す。

仮面の男「完璧に気配は消したと思っていたのですがね。流石、シノビの末裔・・・。」
シュウ「おたく部外者だよねー?何その格好、コスプレ?」
仮面の男「素晴らしいですね、シュウ=カゲムラ。この私を前にしてなおその軽口。気に入りましたよ。」
シュウ「質問に答えなよ!」

     急襲するシュウ。
だがいとも簡単に躱され抑え込まれる。

シュウ「何が目的・・・!?」
仮面の男「君の望みを叶えに来た、と言ったら?」
シュウ「は?うけるー。アンタみたいな変質者に叶えてもらう望みなんてないですけど
ー。・・・あーごめんウソ。やっぱ一個だけあったわ!」

     全力で振りほどくシュウ。
     距離を取り構える。

シュウ「今すぐ消えろ!」

     攻撃をするシュウ。
     微動だにせず受ける仮面の男。
     シュウの耳元で何かをささやく。

シュウ「!?・・・アンタ・・・なんでそれを・・・。」
ユキ(声)「兄上!」

     ユキ現れる
仮面の男に攻撃をする。
仮面の男、シュウから離れる。

仮面の男「いい返事を期待していますよ。」

     立ち去る仮面の男。

ユキ 「待て!」
シュウ「いーよ!ほっといて。」
ユキ 「・・・しかし。」
シュウ「なにー?そーんなにおにーちゃんの心配してくれるのー?チョー嬉しー。おにー
ちゃん泣きそー。」
ユキ 「は?」
シュウ「ユキってばいーっつも『若!若!』でおにーちゃん寂しかったんだぞー。なーん
    だー。ちゃーんと心配してくれるのねー。感激―。」
ユキ 「黙れダメ兄!もう知らん!」

     帰ろうとするユキ。

シュウ「・・・若様なら多分練武場だよー。セーヤ君と一緒。」
ユキ 「・・・わかった。」
シュウ「ユキ。」
ユキ 「なんだ!」
シュウ「・・・ありがとね。」
ユキ 「・・・兄上?」
シュウ「なーんてねー。じゃーねー。」

    立ち去るシュウ。
    それを見つめるユキ。

ユキ 「・・・さっきの男、只者ではなかった。一体・・・?」

    シュウを気にしつつも練武場に向かうユキ。

第三幕
     演術士訓練学校・練武場。
     向かい合うトウマとセイヤ。

セイヤ「いくぞ、トウマ!」

     セイヤ、ホルダーから戯曲を一冊取り出し構える。
     それを受け、トウマも静かにホルダーから戯曲を一冊取り出し構える。

セイヤ・トウマ「英雄召喚!我が声を以って汝の魂を導かん・・・我が身に宿り、其の力を示せ!」
セイヤ「花果山の頂の岩より産まれし石猿の王よ!妖魔・神仏と対しても一歩も引かず、
三界を舞台に暴れまわった気高き美猴王(びこうおう)よ!終には釈迦如来に封
じられたその強大無比な神通力で、我が敵を打ち砕き、その名を再び轟かせよ!」
トウマ「奇縁に導かれ集まりし八つの光あり!その一つ、孝の文字を宿した宝珠に導かれ
し犬士よ!里見家再興を成し遂げしその大いなる力を、亡き父より受け継ぎし宝
剣・村雨丸と共に振るい、今一度邪を退け、功を成せ!」
セイヤ「聞け!我が名は・・・『斉天大聖・孫悟空』!」
トウマ「聞け・・・我が名は『【孝】の八犬士・犬塚信乃』!」

     爆音が轟き、態勢が崩れる二人。
     ホルダーに戯曲をしまい、ゆっくりと起き上がる。
     その雰囲気はさっきまでとは別人のよう。

セイヤ(悟空)「っしゃぁー!行くぜ行くぜ行くぜぇー!」
トウマ(信乃)「やれやれ・・・騒がしい猿だ・・・。」

     セイヤ(悟空)VSトウマ(信乃)
     セイヤは一撃一撃を目いっぱい繰り出すが、すべてトウマに躱されてしまう。

セイヤ(悟空)「あぁーっ!くそぉ!なんで当たらねぇ!」
トウマ(信乃)「馬鹿の一つ覚えみたいに棒切れをブンブンぶん回したところで当たるわけがないでしょう・・・。」
セイヤ(悟空)「キィーッ!オレ様の如意棒を棒切れ呼ばわりしやがって!ドタマに来たぞコンチクショー!」

     猛スピードで突撃するセイヤ(悟空)。
     紙一重で躱すトウマ(信乃)。
     ユキが駆け付ける。
     村雨丸を抜刀するトウマ(信乃)。
     次第にトウマ(信乃)が優位に立つ。
     膝をつき、崩れるセイヤ(悟空)。

トウマ(信乃)「・・どうした?息が上がっていますよ。」
セイヤ(悟空)「・・・余計な・・・お世話だ・・・っ!」

     最後の力を振り絞り、一撃を放つセイヤ(悟空)。
     だが、それも躱され、とどめの一撃を受けてしまう。
     再び崩れ落ちるセイヤ(悟空)。セイヤの雰囲気が戻る。

セイヤ「・・・く・・・ちくしょう・・・っ!」

     納刀するトウマ(信乃)。
     それがきっかけのように雰囲気が戻る。

ユキ 「若、お見事でした。」
トウマ「・・・いや、見事だったのは俺じゃない。セイヤだ。」
セイヤ「ふざけんな!・・・いくら褒められたって勝てなきゃ意味がねぇんだ!」
トウマ「お前は強い。それだけの実力があれば十分演術士として通用するはずだ。たとえ俺に勝てなくとも・・・。」
セイヤ「それじゃ意味がねぇんだ!お前より強くなくちゃ、お前より高く評価されなきゃ・・・!俺には時間がねぇんだ!」
ユキ 「時間、だと?」
セイヤ「・・・母ちゃんが・・・病気なんだ・・・。」
トウマ「・・・。」
ユキ 「・・・。」
セイヤ「おれん家は貧乏でよ・・・父ちゃんは早くに死んじまって母ちゃんがずっとおれたち兄弟を女手一つで育ててくれた。そんな母ちゃんが・・・病気で倒れちまったんだよ・・・。」
トウマ「・・・そういうことか。」
セイヤ「ランクの高い演撃師団に入って即戦力として認められれば、その給料で母ちゃんを入院させられる!おれには金が・・・そしてその金を手にするだけの力がいるんだ!」
ナツキ(声)「ユカー!どこ行ったー!」

     サクラ、ナツキと一緒にやってくる。

ナツキ「・・・む~・・・ここにもいないか・・・。」
サクラ「セイヤ!?・・・大丈夫?」

     セイヤに駆け寄るサクラ。

セイヤ「・・・大丈夫だよ。心配すんなって・・・。」
サクラ「でも・・・。」
セイヤ「おれを誰だと思ってんだよ。無敵のセイヤ様だぜ!」
ユキ 「何が無敵だ。さっきまで若にやられてピーピー泣いていたくせに。」
ナツキ「なに、セイヤ泣いてたの?よしよし、お姉さんが慰めてやるからね~。」
セイヤ「うるせぇ!ガキ扱いすんなババァ!」
ナツキ「誰が何だって・・・!あぁん!?」
トウマ「・・・それだけ元気なら大丈夫だな。」
セイヤ「・・・なんだよ。」
トウマ「強くなりたいのは・・・手に入れたいものがあるのは俺も同じだ。だから俺も、お前に負けるわけにはいかない。」
セイヤ「手に入れたいもの?なんだよそれ?」
トウマ「・・・お前には関係ない。」
セイヤ「てめぇ、人の話聞くだけ聞いて自分の事はだんまりかよ!。」
ナツキ「ねぇ、話し中に悪いんだけどさ、ユカ見なかった?」
トウマ「知らんな。」
セイヤ「ユカリ、いねぇのか?」
サクラ「うん・・・どこにも。」
セイヤ「はぁ!?なんだそれ?」
トウマ「・・・放っておけ。」
ナツキ「ほっとけないから探してるんでしょうが!アンタも協力してよね。」
トウマ「アイツの問題だ。他人の俺たちがどうこうすることじゃない。」
サクラ「けど、ユカリちゃんが苦しんでるのを、私は放っておけない!・・・ユカリちゃんが私に、そうしてくれたように。」
ナツキ「・・・そういうこと。アンタらだってユカリに借りの一つや二つあるでしょ?」
セイヤ「・・・ったく、しゃあねぇなぁ。」
サクラ「ありがとう・・・セイヤ。」
トウマ「ユキ、俺は先に帰る。お前は、こいつらの手伝いをしてやれ。」
ユキ 「しかし若!私は・・・!」
トウマ「頼む。」
ユキ 「・・・はっ。」
トウマ「それと・・・ここでは『若』はやめろ。」

     トウマ、去る。

ナツキ「アイツ、なんだかんだ言ってユカリの事気にしてんじゃん。」
セイヤ「気になってんなら自分も探せってんだよ。これだからいいとこのボンボンはよ~!」
ユキ 「黙れ・・・若の事を悪く言う者は私が許さん・・・!」
サクラ「セイヤもユキちゃんもやめて!ごめんね、ユキちゃん。協力してくれるかな・・・?」
ユキ 「若の命令だ。協力しよう。」
サクラ「ありがとう・・・。」
ユキ 「とりあえず、固まって動くよりも個別に探した方がこの人数であれば効率はいいだろう。」
セイヤ「とかいってよ、そうやって若様のところに帰るつもりなんじゃねぇの?」
ユキ 「見くびるな。私は若の命を受けてここにいる。役目を果たさずに若の元に戻ることなどありえない。」
ナツキ「んじゃ、別々に動きますか!1時間後にまたここに集合ってことで!」

     ばらばらに去る4人。
     暗転。

第四幕
     エタニティア王国東方地区・カグラ村。
ユカリの実家の定食屋。
     店内にはユカリの父・ショウイチと、王国第一演撃師団団長・カオルが
楽しそうに世間話をしている。
そこにユカリが気まずそうに入ってくる。

ユカリ「・・・ただいま。」
カオル「ユカリ、久しぶりだね。」
ユカリ「カオルさん!?・・・お久しぶりです!」
カオル「どう学校の方は?順調?」
ユカリ「・・・あ・・・いや・・・その・・・。」
ショウイチ「悪い。ちょっと席外してくんねぇかな?」
カオル「わかりました。・・・またね、ユカリ。」

     カオル、出ていく。

ショウイチ「何しにきた?時間が勿体ねぇ、手短に要点だけ話せ。」
ユカリ「・・・卒業した後の事なんだけどさ・・・私、ここに戻るよ。」
ショウイチ「話が見えねぇな。何が言いたい?」
ユカリ「・・・私、演術士になるのは諦める。この店の手伝いするよ。」

     しばしの沈黙。気まずい空気が流れる。

ショウイチ「俺が反対するのも押し切って、家出同然で出ていった馬鹿娘が・・・どういう風の吹き回しだ?」
ユカリ「あの時は私も子供だったんだよ・・・。なりたいって強く想えば何でもできるって思ってた。でも現実は違ってた・・・。」
ショウイチ「馬鹿娘、俺がその時なんて言ったか覚えてんのか?」
ユカリ「覚えてるよ・・・『何でもかんでもやりたいだけで出来るわけじゃない。』・・・」
ショウイチ「そっちじゃねぇよ。『どうしてもやるって言うなら、演術士になるまで帰ってくるな』・・・忘れたか?」
ユカリ「・・・。」
ショウイチ「何帰って来てやがる。お前は演術士になれたのか?違うだろ。」
ユカリ「お父さん聞いて!私本当に馬鹿だったと思ってる!お父さんの忠告をちゃんと聞
いておけば、こんなことには・・・。」
ショウイチ「まだわかんねぇのか馬鹿娘!」

     ショウイチの怒声に固まるユカリ。

ショウイチ「お前と話すことは何もない。とっとと帰れ。」
ユカリ「お父さん、私本当に悪かったと思ってる・・・だから・・・。」
ショウイチ「悪かった?お前は悪いことを今までしてたのか?適当に取り繕って許しても
らおうったってそうは問屋が卸さねぇよ。」
ユカリ「そんなつもりじゃ・・・!」
ショウイチ「お前は、現実から逃げ回ってるだけだ。笑わせるな。」
ユカリ「逃げてなんかないよ!ちゃんと向き合って・・・向き合ったから、諦めるって決
めたのに・・・。」
ショウイチ「だからわかってねぇって言ってるんだ。現実と向き合って、向いてねぇって
すぐ投げ出す奴になんざ、うちの店の手伝いは務まらねよ。」
ユカリ「そんな簡単に投げ出してなんかない!努力して・・・努力してそれでもできなか
ったから・・・!諦めたくて諦めたわけじゃ・・・!」
ショウイチ「お前は、何がやりたかったんだ!?」

     ショウイチの質問に止まるユカリ。

ユカリ「・・・え?」
ショウイチ「お前はなんで演術士になりたかった?演術士になって何がやりたかった?答
    えろ。」
ユカリ「そんなこと言われても・・・なれないんだからそんなの意味ない・・・。」
ショウイチ「だからお前は馬鹿だと言ってるんだ。そんなことも見失っているから、そ
んな馬鹿みたいな答えを出すんだ。」
ショウイチ「偉そうに・・・!お父さんに私の何がわかるのよ!?」
ユカリ「わからんし、わかりたいとも思わんな。問答は終いだ。とっとと帰れ。」

     ショウイチ、奥に引っ込む。

ユカリ「なんで・・・なんでわかってくれないの・・・?」

     カオル、戻ってくる。
     優しくユカリの肩をたたく。

ユカリ「・・・カオルさん・・・。」
カオル「ちょっと外の空気吸いに行こうか。」

     無言で頷くユカリ。
     二人で店から出ていく。

第五幕
     夕方。
演術士訓練学校・校庭。
     戻ってくるサクラ。

サクラ「・・・ユカリちゃん、本当にどこ行ったんだろ・・・。」
ミスズ(声)「サクラみーっけ!」

     サクラに猛ダッシュで近づき抱き着くミスズ。

サクラ「みーちゃん先生!?苦しいです・・・!」
ミスズ「あ!ごめんごめん・・・再会できたのがうれしくて、つい・・・。」
ウィル「待ってくださいよ~!」

     遅れて走ってくるウィル。

ミスズ「だらしないなぁ・・・。それでも第一演撃師団副団長?そんなんじゃ団員に示しつかないよ!」
ウィル「僕、走るのだけは昔から苦手なんですよ~・・・知ってますよね?」
ミスズ「しらなーい。」
ウィル「それでよく先生やってられますね。」
ミスズ「てへッ☆」
ウィル「そうやって誤魔化すクセ、直した方がいいですよ。婚期がどんどん遠ざかりますから。」
ミスズ「ザクッ!・・・ウィル~!生徒たちにはともかく、後輩の貴方には言われたくな~い!」
ウィル「痛い!痛いですよ先輩!痛い!」
ミスズ「お仕置きじゃ~!」
サクラ「みーちゃん先生、落ち着いてください!」
ミスズ「サクラ~・・・聞いて~!後輩がちょ~っとばかし偉くなったからっていじめてくるの~!うぇ~んえんえんえん・・・!」
ハルカ「みーちゃん先生・・・。」
ウィル「全く・・・この人はいつまでたっても・・・。」

     サクラの方を向きなおし、跪き、礼をするウィル。

ウィル「お初にお目にかかります。王国第一演撃師団副団長・ウィル=スピアーズと申します。先ほどより、無礼の数々・・・何卒お許しくださいませ、姫。」
サクラ「あなたが何を言ってるのか私にはわかりかねます。人違いではないですか?」
ミスズ「ウィル、言ったでしょ!ここでは姫は姫じゃない、一学生だって。そういうことされると困るのよね・・・。」
ウィル「先輩!しかし、そうはいっても姫は姫。挨拶だけでもしっかりとしておかねば、失礼でしょう!」
ミスズ「まったく・・・ホント貴方って昔からバカ真面目というか融通が利かないというか・・・。」
ウィル「先輩のめんどくささに比べればだいぶマシだと・・・痛い!」
サクラ「あの・・・みーちゃん先生・・・。」
ミスズ「サクラ、ごめん。ウィルには全部事情は話してあるの。それに彼、正直すぎるところはあるけど、いい子だから・・・心配しないで。」
ウィル「はい!姫がお忍びでこの東方地区演術士訓練学校に通っていることは我がスピアーズ家の誇りにかけて、絶対に、誰にも口外いたしません!」

      セイヤがやってくる。
      ウィルの声に反応し、立ち止まる。

ウィル「誰だ!誰かいるのか!?」

     とっさに隠れるセイヤ。

ミスズ「誰かいるの?」
ウィル「・・・確かに、さっき人の気配が・・・。」
ミスズ「もしかして・・・さっきの話聞かれてないよね?」
ウィル「・・・わかりません。」
ミスズ「わかってるの?サクラの正体が姫だってことが誰かにバレたら、サクラはこの学校を即座に辞めて王都に戻るっていう約束を国王陛下としてるって!」
ウィル「・・・はい。」
ミスズ「サクラ・・・。ごめん、私が余計なことしたばっかりに・・・。」
サクラ「顔を上げてください。先生がいたから、今までバレずにやってこれたんです。これでもし私の正体がバレたとしても、来るべき時が来たんだって、受け入れるだけですから・・・。」
ミスズ「サクラ・・・。」
サクラ「ところで、ウィルさんはどうしてここに?私に会いに来たってわけじゃないですよね?」
ウィル「団長と任務でこのエリアに来ておりまして・・・。任務が終わり王都に帰還する途中で、来週の入団許可試験の打ち合わせも兼ねて立ち寄らせていただきました。」
サクラ「そうでしたか。任務、お疲れ様でした。」
ウィル「勿体無いお言葉・・・。恐悦至極に御座います。」
ミスズ「ウィル、出てる出てる。」
ウィル「はっ!・・・すみません、つい・・・。」

     二人のやり取りにくすっと笑うサクラ。

ウィル「・・・ところで姫・・・じゃなかったサクラさん。サクラさんはどうしてこの学校に通ってらっしゃるんですか?演術士に憧れてらっしゃるんですか?」
サクラ「・・・憧れ・・・そうかもしれません。私はきっとなりたかったんだと思います。『姫』ではない、別の何かに・・・。」

     遠くを見つめるサクラ。

サクラ「でも・・・私は姫です。王国に暮らす全ての民の安寧のために、父上同様この身を捧げ尽力することが私の使命。私の生涯を以ってその使命を全うするつもりです。」
ウィル「失礼ですが、貴女は先程は他の何かになりたいと仰っていた。その貴女が姫としての使命を全うしたいと、何故思えるのですか?」
サクラ「・・・以前は、生まれながらに背負った使命の重さに耐えられなかった。だって私には何も取り柄がなくて、何をやらせても上手くいかなくて、ただ周りに世話を焼かせるしかできない、お飾りの姫だったから・・・。」
ミスズ「サクラ・・・。」
サクラ「この学校に来たのは、演術を覚えて、英雄の力を借りることが出来れば、少しはみんなの役に立てるようになるんじゃないかって・・・でも、そんな甘い考えで上手くいくほど演術の世界は甘くはなくて・・・。結局私には何も出来ないんだって、ふさぎ込んでた私を、導いてくれた人がいるんです。その人がいたから、私は、諦めずに戦おうって、何があっても前を向こうって、そう思えるようになったんです。」
ウィル「素敵なご学友と出会えたのですね。」
サクラ「はい。私の初めての、そして一番大切な、友達です。」
ウィル「一度是非、お会いしたいものです。」
ミスズ「そういえば、そのユカリは見つかったの?」
サクラ「・・・いいえ。」
ミスズ「そっか・・・。こんなに想ってくれてる仲間がいるのに、本当に何やってんだか・・・。」
ウィル「何かあったのですか?」
ミスズ「ああ、ごめんね。そのユカリって子がいま絶賛思春期中でさ・・・。悩みMAX
    で現実逃避中なのよ。困った困った。」
ウィル「・・・先輩、先生なんですよね?その言い方って・・・。」
ミスズ「言われなくてもわかってます~。ちゃんと心配してます~。」
ウィル「いや、僕もわかってますけど・・・はぁ・・・この人は全く・・・。」
サクラ「大変な先輩を持っちゃいましたね、ウィルさん。」
ウィル「いえ、サクラさんも、大変な先生を持ってしまいましたね。」

     サクラ、ウィルお互い顔を見合わせて笑う。

ミスズ「・・・何笑ってるの~!私だけのけ者にしないでよ~!」
ウィル「してないですよ。」
ミスズ「ホントに~・・・?」
サクラ「してませんって。」
ミスズ「ホント~・・・?」
サクラ「ホントです。・・・じゃ先生、私ユカリちゃん探しに行くのでこれで失礼します!
    ・・・あ、そうだ!ウィルさん、ユカリちゃん、第一師団の入団試験受けますか
ら、その時に会えますよ!楽しみにしていてください!」
ミスズ「え?ユカリ受けるの辞めるって・・・。」
サクラ「私が絶対に諦めさせません!ユカリちゃんが私にしてくれたことを、今度は私が
する番です!では、失礼します!」

     駆け出すサクラ。

ウィル「行きますか?」
ミスズ「ごめんね。折角久しぶりに会えたからご飯でもと思ってたんだけどさ。」
ウィル「大丈夫ですよ。そっちの方が先輩には似合ってます。」
ミスズ「ありがと。カオル先輩にもよろしく伝えておいてね!さ~て、かわいい生徒に一
    発喝を入れにいきますかぁ!ユカリ~!愛してるぞ~!」

     駆け出すミスズ。
     見送るウィル。
     ミスズがいなくなったのを確認し、セイヤの方へ近づく。

ウィル「・・・もう誰もいませんよ。そろそろ出てきたらどうですか?」

     セイヤ、出てくる。

セイヤ「・・・気づいてたのかよ。」
ウィル「君、名前は?」
セイヤ「セイヤ。セイヤ=シングウ」
ウィル「セイヤ君、今日ここで君が聞いたことは秘密にしてもらいたいのだが・・・。」
セイヤ「誰にも話すつもりはないっすよ。心配しないで大丈夫っす。」
ウィル「ありがとう。君がいい人で本当に良かった。・・・何か、お礼をしなくてはね。」
セイヤ「別に・・・そんなもんいらねぇっすよ。じゃ、おれもユカリ探しに行かなきゃなんで・・・。」
ウィル「そう言わずに。丁度、君のような人に渡したいと思っていたものがあるんだ。」

     ウィル、一冊の戯曲をホルダーから取り出す。

ウィル「この戯曲に宿る英雄は、一介の将軍から王に成り上がった。君のような苦境から
這い上がろうとする者が演ずるにふさわしい英雄だと思うよ。」
セイヤ「おれに・・・ふさわしい英雄・・・?」
ウィル「是非君にはこの英雄と共に、第一師団のエースとして最前線で活躍し、いずれは
我らが第一師団の団長として、富と、名誉を思う存分手にしてもらいたい。」
セイヤ「おれが・・・団長に・・・?富と・・・名誉・・・。」
ウィル「・・・それに、一市民のままでは不釣り合いといわれるかもしれないが、相手が
師団長となれば、君のその想いに誰も何も文句は言う者はいなくなる・・・。ず
っと彼女と一緒にいられる。」
セイヤ「!・・・なんで・・・何を言って・・・!?」
ウィル「誤魔化さなくても、僕にはわかってるよ。好きなんだろう?姫の事が。」
セイヤ「・・・おれは・・・。」
ウィル「ならば猶更、力が必要だ。君の欲しいものすべてを手に入れる力が!」
セイヤ「力が・・・力が欲しい・・・!おれの望むものすべてを手に入れる力が!」

     セイヤ、ウィルから戯曲を受け取る。

ウィル「期待しているよ。セイヤ君。」

     セイヤ、去る。
     セイヤを見送った後にウィル、去る

第六幕
     夕方。
エタニティア王国東方地区・カグラ村。
     村が一望出来る小高い丘。
     カオルとユカリがやってくる。
     
カオル「ごめんね。お父さんとの話、聞かせてもらってた。」
ユカリ「・・・カオルさん、私・・・どうしたらいいのかもうわかりません・・・。」
カオル「ユカリ、お父さんになんて聞かれたか覚えてる?」
ユカリ「え・・・?」
カオル「私も同じことが聞きたい。ユカリはどうして演術士になりたかったの?」
ユカリ「・・・そんなこと・・・もう覚えてません・・・。」
カオル「本当に?」
ユカリ「・・・嘘ついてどうするんですか・・・。」
カオル「・・・ユカリ、あの時私があなたに渡した戯曲、持ってる?」
ユカリ「・・・。」
カオル「見せて。」
ユカリ「・・・。」
カオル「ユカリ。」

     ユカリ、ホルダーから一冊の戯曲を取り出しカオルに渡す。

カオル「・・・嘘つき。」
ユカリ「・・・。」
カオル「私が貴女にこの戯曲を渡した時もボロボロだったけど、ここまでじゃなかったよ。」
ユカリ「・・・嘘ついてません・・・そんなこと覚えてません・・・!」
カオル「お母さんとの約束なのに・・・?」

     抑えていた感情が一気に溢れ出し、泣き崩れるユカリ。

カオル「私は覚えてるよ・・・ユカリが、お母さんと交わした約束。貴女とお母さんの最後の約束。5年前のあの時も、こんな風に空が綺麗に赤く染まってた・・・。」

     暗転

第七幕
     回想。5年前。

ショウイチ(声)「ユカリ、ここにいたのか。」

     照明が変わる。
     夕焼けの丘。
     一人佇むユカリ。
     カオルを連れてショウイチが来る。

ユカリ「お父さん・・・。」
ショウイチ「カオル、王都に帰るってよ。その前にお前と話がしたいって。」
ユカリ「お父さんは行かないの・・・?」
ショウイチ「俺は戻らない。・・・演撃師団を辞めることにした。」
ユカリ「・・・いいの?本当に。」
ショウイチ「当たり前だ。今まで寂しい思いをいっぱいさせて悪かったな。これからは母
さんの分まで、お前と一緒にいるからな。」
ユカリ「・・・ごめんなさい。」
ショウイチ「何言ってんだ?お前が謝ることなんざ一つもねぇよ!カオル、じゃあユカリ
のこと頼んだぜ。」
カオル「はい。」
ショウイチ「・・・わがまま言って済まねぇな。第一演撃師団のこと、よろしく頼む。」
カオル「はい。・・・今まで、ありがとうございました。」

     背中越しに手を振り、立ち去るショウイチ。

カオル「ユカリ・・・一か月しか一緒にいられなかったけど、楽しかったよ。まだ村の復
興は途中だし、家のことも・・・大変だと思うけど・・・。」
ユカリ「お母さん、最後まで二人が来てくれるって、信じてたよ。」
カオル「ごめんなさい・・・!」
ユカリ「違うの。二人が来てくれるから、諦めないでって。私が時間を稼ぐから、何があ
っても隠れて待っててって・・・。そしたら、本当にカオルさんが来てくれた。
カオルさんが来てくれなかったら、私も、きっと今ここにいなかった・・・。」
カオル「・・・リンさん・・・。」
ユカリ「私が最後に見たお母さんの顔は、笑顔だった。怖くてたまらないはずなのに・・・
私を安心させようと・・・ううん、それだけじゃない。本当に二人が来てくれる
って信じてたから、笑顔でいられたんだと思う。」
カオル「・・・そっか・・・。」
ユカリ「悔しいよ。私、何もできなかった。お母さんにも、お父さんにも、カオルさんに
も守ってもらってばっかりで、結局・・・何も・・・!」
カオル「貴女は普通の女の子だもの。何も悔しがる必要はないよ。」
ユカリ「それじゃ嫌だ。・・・私、決めたよ。カオルさんやお父さん、お母さんみたいに私、
なりたい!」
カオル「私たち・・・みたいに?」
ユカリ「うん・・・!信じてくれる人を笑顔にできるような、守りたいものを守り抜ける
ような人に、私はなりたい・・・!」

     空に向かって大きく息を吸い込む。

ユカリ「おかあさーん!見ててー!私、みんなの笑顔を守れるような人になるからー!お
母さんが天国で笑ってみていられるように、私、がんばるからー!約束だよー!」

     思わず、笑みがこぼれるカオル。
     ユカリの元に歩み寄る

カオル「ユカリ・・・貴女に託したいものがあるの。」
ユカリ「え?」

     ホルダーから、一冊の戯曲を取り出しユカリに渡す戯曲。

カオル「これはね、私が先生・・・リンさんにもらった戯曲。きっとこの英雄は、貴女に
一番あってるから・・・って。私が一番最初に召喚出来た英雄で、ずーっと一緒
に戦ってきた相棒・・・。」
ユカリ「そんな大切なもの受け取れません!」
カオル「それでも、私は貴女に託したいの。今のあなたを見て、心からそう思ったから。」
ユカリ「カオルさん・・・。」
カオル「リンさんから託された想いを、今度は私が貴女に託す番・・・。受け取って、ユ
カリ。」

     ぼろぼろの古びた戯曲を、カオルから受け取るユカリ。

ユカリ「カオルさん、ありがとうございます。私、この戯曲大切にします!」
カオル「ユカリ・・・元気でね。」
ユカリ「はい!カオルさんもお元気で。ありがとうございました!」

     去っていくカオル。
     カオルに向けて一礼するユカリ。
     体を起こし、手にもった戯曲を見つめる。

ユカリ「よーし!がんばるぞー!」

     駆け出すユカリ。
     物陰から見ていたショウイチが出てくる。

ショウイチ「・・・ユカリ・・・お前は前に進むんだな・・・。それでいい・・・それで・・・。」

     暗転。
スポットでショウイチだけが舞台上に残る。

ショウイチ「だが俺は・・・俺を許すことが出来ねぇ・・・。何が王国最強の第一演撃師
団団長だ!俺は何のために強くなった・・・?王国を守るため?大勢の民を守る
ため?・・・違う!オレはただ、あいつを守れる力が欲しかっただけだ!それな
のに・・・なぜ俺はあの日あいつの側にいなかった?なぜあの日、すべてを投げ
出してでもあいつの元へ駆けつけなかった?なぜ・・・!」
仮面の男(声)「あの日、もっと早く自分が駆け付けていれば、自分も、娘も大切な存在を
失うことはなかった・・・そう、未だに思っているのでしょうね。貴方は。」

     照明が変わる。
     回想が終わり、ユカリの実家の定食屋。
     物思いにふけっていたショウイチに不意に何者かが声をかける。
     声のする方を向くショウイチ。
     仮面の男が現れる。

ショウイチ「・・・お客さん、悪いけどウチ夜の営業はやってないんだ。帰ってくれねぇ
か。」
仮面の男「私はお客としてここに来たわけではありません。貴方の望みを叶えにやってき
たのです。」
ショウイチ「だったら出て行ってくんねぇかな?それが俺の今の一番の願いだ。」
仮面の男「本当にいいんですか?貴方が心から求めているものを、失うことになるんですよ?5年前のあの時と同じように・・・。」

仮面の男を殴り飛ばすショウイチ。

ショウイチ「お前、何者だ?何の用があってここに来た?」
仮面の男「言ったでしょう?貴方の望みを叶えに来たと。」
ショウイチ「回りくどい話は好きじゃねぇ。本当の目的はなんだ!」
仮面の男「私は、古代文明の失われた学術研究をしておりまして・・・その中でも特に、
死者蘇生に関する研究に力を入れているのです。」
ショウイチ「馬鹿馬鹿しい・・・!死者が蘇るなどあるはずが・・・!」
仮面の男「果たしてそうでしょうか?貴方がた演術士が使用する演術による英雄召喚。あ
れも言ってみれば死者蘇生の一つの形とはいえませんか?」
ショウイチ「それは・・・。」
仮面の男「すでに肉体は滅び、天に召された魂を、戯曲の力を以って現世に呼び戻し、己
の心身を以って再現する。一時的とはいえ、これは立派な死者蘇生です。あとは
その魂を永続的に定着させることが出来れば・・・。」
ショウイチ「・・・できるのか・・・?」
仮面の男「理論上では。」

     仮面の男、一冊の戯曲を取り出す。

仮面の男「・・・この戯曲は、5年前、お亡くなりになった貴方の奥様の魂を宿した戯曲
です。この実験が成功すれば、貴方はまた奥様と会える。話すことも、触れるこ
ともできる。そして、それを奥様も望んでいる・・・。」
ショウイチ「・・・リンが・・・望んでいる・・・?」
仮面の男「はい。・・・協力してくれますね?」
ショウイチ「・・・何をすればいいんだ?」
仮面の男「生贄が必要です。奥様の器になってくれる、奥様の魂と波長の合う者の肉体が。」
ショウイチ「そいつがどこの誰かは分かっているのか?」
仮面の男「もちろんです。ただ・・・なかなかガードが堅い人物でして・・・。」
ショウイチ「回りくどい話は好きじゃねぇと言ったろう。誰だ。さっさと言え。」
仮面の男「王国第一王女・フローラ・エタニティア姫。」
ショウイチ「!?」
仮面の男「・・・ご安心を。通常であれば、姫は王都の堅牢な城内にて、数多の精鋭に守
    られていて手も足も出せません・・・が、今は『サクラ=エイタニ』という偽名
を名乗り、この地域の演術士訓練学校に通っているそうです。もちろん、護衛も
なしに・・・ね。」
ショウイチ「そうか・・・。」
仮面の男「もしかすると、お嬢さんのご学友かもしれませんね。・・・大丈夫ですか?」
ショウイチ「・・・構わんさ。たとえそうであっても、俺の決意は変わらん。俺はリンを
取り戻す!この手がどれだけ汚れようが・・・誰を悲しませることになろうが・・・
必ずな・・・!」

     暗転。

第八幕
     演術士訓練学校学生寮前。
     カオルがユカリと一緒に来る。

ユカリ「カオルさん・・・ありがとうございました。」
カオル「・・・大丈夫?」
ユカリ「わかりません・・・でも、一度やると決めて入学した学校です。とりあえず、卒業するまでは頑張ってみます。」
カオル「そう・・・。」
ユカリ「あと・・・これ・・・。」

    ユカリ、一冊の古びた戯曲をホルダーから取り出し、カオルに渡す。

ユカリ「・・・もっとこの戯曲を託すにふさわしい人がいるはずです。その人に・・・渡してあげてください・・・。」

     カオル、静かに戯曲を受け取る。

カオル「・・・ごめんなさい。私がこの戯曲を渡したことが、結果的に貴女を苦しめることになってしまった・・・。本当に・・・。」
ユカリ「カオルさんは何も悪くないです。私が弱いのがいけないんです。」
カオル「それは違う。貴女は弱くない。」
ユカリ「・・・私は弱いです。カオルさんが託してくれた想いに応えることが出来なかった・・・。私に演術は・・・。」
カオル「そうじゃないの。・・・私は、貴女に演術士になって欲しかったわけじゃない。」
ユカリ「・・・え?じゃあ・・・なんでその戯曲を・・・?」
カオル「お守り替わり、かな。この戯曲は、私にとってリンさんとの思い出。この戯曲からリンさんを感じることで、踏ん張ってやってこられた時がいっぱいあった。・・・だから、貴女にもそうであればいいなって思って・・・。」
ユカリ「・・・はは・・・なにそれ・・・じゃあ、私今まで何やって・・・。」
カオル「貴女の強さは、力が強いとか、演術が出来るとか、そういうことじゃない。そんな事よりももっともっと大事な強さを、貴女は持ってる。」
ユカリ「・・・わかりません・・・カオルさんが何を言ってるのか、何が言いたいのか・・・私にはわかりません!」
サクラ(声)「・・・ユカリちゃん?ユカリちゃんいるの!?」

     ユカリの声を聞いて飛び出してくるサクラ。
     その後にミスズ、ナツキ、ユキ、セイヤ、シュウが続いて出てくる。

サクラ「ユカリちゃん・・!良かった・・・本当に・・・!」
ミスズ「ユ~カ~リ~!」

     サクラが駆け寄るよりも先にユカリに抱き着くミスズ。

ユカリ「ミ、ミスズ先生?」
ミスズ「こらユカリ!人との約束すっぽかしていったいどこほっつき歩いていたのよ~!先生は・・・先生は・・・寂しかったんだからね~!うえ~んえんえんえん!」
サクラ「みーちゃん先生ずるい!私が先!私がユカリちゃんと抱き合うの~!」
ミスズ「心配したんだから~!もう離さないんだから~!お~いおいおいおい!」
サクラ「離れてください~!私がくっつくの~!」
ナツキ「みーちゃん先生さぁ・・・大人なんだからそこは子供に譲ったげなよ~。」
シュウ「ほーんと、いい年して大人げないよねー。」
ミスズ「誰!?今、年のこと言ったの!?」
シュウ「セーヤ君。」
セイヤ「はぁ?」
ミスズ「セイヤ~!誰が婚期逃した年増ババアだって~!?」
セイヤ「言ってねぇし!」
サクラ「ナツ姉!私子供じゃないよ!」
ユキ 「十分子供だ。・・・おこちゃま。」
サクラ「年下のユキちゃんには言われたくない!」
ユキ 「精神年齢は私が上だ。おこちゃま。」
サクラ「なんですとぉ!」
ナツキ「サク~!ホラ、席空いたよー。」
サクラ「ナツ姉ありがとう!・・・ユカリちゃ~ん!」
ユカリ「え?あ、はい。」

    ユカリに抱き着くサクラ。

サクラ「良かった・・・無事で良かった・・・本当に・・・!」
ユカリ「サクラ・・・心配してくれてたの・・・?」
ナツキ「当たり前でしょ!みんなどんだけアンタの事心配したと思ってんのよ!」
ユカリ「ナツキさん・・・。でも私、サクラに酷いこと・・・。」
シュウ「そんなのさー気にしてないのくらい見りゃわかんじゃーんバカ真面目―。」
セイヤ「喧嘩の時に相手の事悪く言うのなんか普通じゃねぇか。んなもんいちいち気にしてたらやってらんねぇよ。」
ユキ 「私は、何であれ若を悪く言う者は絶対に許さんがな。」
セイヤ「こいつの話は聞くな。これは特殊なアレだ。」
ユカリ「みんな・・・。」
カオル「・・・これが、私の言いたかったことだよ。ユカリ。」
ユカリ「カオルさん・・・。」
カオル「貴女の周りを見てごらん。貴女の周りにいる人たちは、貴女が演術が上手いから
あなたの周りにいるの?・・・きっとそうではないはずよ。」
ユカリ「・・・。」
カオル「忘れないで。『演術』は所詮手段でしかない。手段に振り回されないで、ちゃんと
考えて。貴女が何を望んで・・・そのために何をしたいのか。」
ユカリ「私の・・・したいこと・・・。」
カオル「その上で、演術士になることが必要なのであれば、またもがけばいい。・・・でも
その時はきっと、今と違う結果が待っているはずよ。」

     カオル、去る。

ユカリ「カオルさん・・・ありがとうございます。」

     ユカリを囲んで楽しそうに話すサクラ、ミスズ、ナツキ、セイヤ。
     シュウとユキは先に寮内に戻る。。
     その後で、サクラがユカリを引っ張って寮に戻る。
     ミスズ、ナツキ、セイヤもそれに続く。

第九幕
     夜の学生寮の庭。
     トウマが木刀を手に素振りをしている。
そこにユカリがやってくる。

トウマ「・・・何か用か?」
ユカリ「今日は・・・その、ごめんなさい。色々心配かけちゃったみたいで・・・。」
トウマ「結局、どうするんだ?受けるのか?第一師団。」
ユカリ「受けない。・・・演術士も目指さない。」
トウマ「・・・そうか。」

     トウマ、木刀を一本ユカリに差し出す。

トウマ「一本勝負・・・久しぶりに相手しろ。」
ユカリ「えぇ!?なんで?私がトウマに勝てるわけ・・・!」
トウマ「演術なしの、純粋な剣術勝負だ。それならいいだろ?」
ユカリ「でも・・・。」
トウマ「四の五の言うな。互いに手加減なしだ。わかったな。」
ユカリ「う、うん・・・。」
トウマ「行くぞ!」

    ユカリⅤSトウマ。
    トウマの攻撃をすべて受け流すユカリ。

トウマ「どうした!?守ってばかりでは勝てんぞ!」
ユカリ「・・・でも・・・!」
トウマ「互いに手加減なしと言ったろう!」
ユカリ「もう・・・どうなっても知らないよ!」

    攻撃に転じるユカリ。
    互角の勝負も徐々にユカリが優勢になっていく。
    ユカリの一撃が決まる。

トウマ「・・・お前はすごいよ。」
ユカリ「え?」
トウマ「フリ・・・だったんだろう。お前の演術は。」
ユカリ「・・・やっぱり、バレてたか・・・。」
トウマ「お前は演術が苦手。英雄の魂を召喚することも、その力を行使することも出来ない。・・・ならば、出来てるフリをして戦う。・・・まともな人間が考えることじゃない。」
ユカリ「うん・・・バカだよね。」
トウマ「ああバカだ。大バカだ。英雄の力なしで英雄の力に挑む。正気の沙汰じゃない。」
ユカリ「・・・そこまで言わなくても・・・。」
トウマ「それを2年近く貫き通したんだろう。だからすごいと言っているんだ。」

     空を見上げるトウマ。
     つられて空を見るユカリ。

トウマ「・・・俺には、やらなければならない事がある。」
ユカリ「お家の再興だよね・・・。」
トウマ「かつて王国四大公(よんたいこう)の一角『東征龍公(とうせいりゅうこう)』の
地位にあった我がシノノメ家。だが、今はただの地方の没落貴族に過ぎん。・・・
しかし、シノノメの連中は過去の栄光を未だに忘れられず、わずかに残った家臣
や領民に古い慣習を押し付けている。周囲からどんな目で見られているかも気づ
かずにな・・・。」
ユカリ「だから、トウマは第一師団を目指してるんだね。」
トウマ「まずは演術士最強の第一師団団長になる。そしてそれを足掛かりに、やがては東征龍公・・・さらにはその先の地位に上り詰めてみせる!もう『名ばかりのシノノメ家』とは誰にも笑わせない・・・!」
ユカリ「トウマなら出来るよ。きっと・・・。」
トウマ「・・・やっぱり、笑わないんだな。お前は。」
ユカリ「笑わないよ。笑うわけないじゃん。」
トウマ「俺の周りの人間はそうではなかった。父や祖父は、伝統ある誇り高きシノノメの次期当主が汗にまみれて努力をするなど愚の骨頂だと笑った。他の連中は、落ちぶれた人間が必死にあがいている姿が見ていて滑稽だと笑った。・・・俺は天才ではない。他を凌駕する圧倒的な才能も、知恵も、身体能力も、技術も持ち合わせてなどない。」
ユカリ「そんなことないと思うけど・・・。『歴代最強の訓練生』って先生たちも言ってるし。」
トウマ「・・・覚えているか?去年の夏、俺が上級生に勝負を挑み無様に敗れたことを。」

     暗転
     回想。一年前(夏)。
     演術士訓練学校・練武場
     トウマをバカにする先輩たちの笑い声が聞こえる。

先輩A(声)「だっせーなぁー!没落貴族のおぼっちゃまくんよぉ!」

     照明変わる。
     舞台中央で打ちひしがれているトウマ。

トウマ「・・・汚いぞ・・・!演術を使うなど・・・。」
先輩A「あ?使えるもん使って何が悪いんだよ?戦場で相手がてめぇに合わせて手加減してくれると思ってんのか!」

     トウマを蹴る先輩A

トウマ「がはっ!」
先輩B「てめぇ見てるとシノノメ家がどうして落ちぶれていったのかがよーくわかるぜ。てめぇみてぇな勘違い野郎が、ご先祖様の七光りを自分の力だと勘違いしてっからなんだろ?マジ笑えるぜ!」
先輩A「ホントだぜ。身の程をわきまえな、元・四大公家さん。」

     笑う先輩A・B
     ユカリがやってきてトウマと先輩たちの間に立つ。

先輩B「なんだてめぇ?」
ユカリ「演術が使えない一年生相手に演術使って勝って偉そうにふんぞり返って、恥ずかしくないんですか!?それでも先輩ですか!?」
先輩A「ごちゃごちゃうるせぇよ!言いたいことがあるなら力で示せ・・・!」
先輩B「お、おい!・・・相手は女だぜ?流石に・・・。」
先輩A「おいてめぇ、さっき恥ずかしくないかとかなんとか言ってたな。別に恥ずかしくも何ともねぇよ。戦場は力が正義。勝った方が正しいんだ!てめぇもごちゃごちゃ偉そうなこと言いたいなら俺に勝ってからにしろや。」

     ホルダーから戯曲を出す先輩A。

トウマ「・・・逃げろ・・・!」
先輩B「知らねぇぞ・・・俺は知らねぇからな・・・!」
先輩A「英雄召喚!我が声を以って汝の魂を導か・・・がはっ!」

     台詞の詠唱の途中でユカリに攻撃される先輩A

トウマ・先輩B「えーーーーーーーーーーーっ!?」
先輩A「て・・・てめぇ・・・それは流石に卑怯だ・・・ぐふっ!」

     喋ってる途中に容赦なく追撃するユカリ。

ユカリ「卑怯?おかしいですね?『戦場では力が正義、勝った方が正しい』とさっき教えていただいたのですが。」
先輩A「そ、そうだけど!それにしたってあのタイミングで攻撃しないのはお約束というか、暗黙の了解というか・・・ごほっ!」

     さらに喋ってる途中に追撃するユカリ。

ユカリ「実際の戦場では、演術士が英雄を召喚してくれるのを敵は待ってくれるんですか?」
先輩A「・・・そ、それは・・・。」
ミスズ(声)「その子の言う通りよ」

     騒ぎを聞きつけたミスズがやってくる。
     その後ろにはサクラの姿も。

ミスズ「敵は英雄召喚が終わるのを黙って待ってはくれない。いかに相手のスキを突き、安全な場所とタイミングで召喚するかを常に考えなければならない。・・・授業で教えたはずだけど?」
先輩A「・・・はい。」
ミスズ「あと、校則で『授業時間外での無許可の戦闘行為を禁止する』っていうのもあるけど・・・あれぇ~、おかしいなぁ~?みんな知らなかったワケ?」
先輩B「ちげぇよ先生!これはあいつから吹っかけられた喧嘩で・・・!」
ミスズ「はいはいわかったわかった。とにかく、詳しい話は取調室・・・じゃなかった教員室で聞くから、とりあえず全員逮捕で。かつ丼くらいは出してあげるからね。もちろん代金は自腹だよ。はい、レッツゴー!」

     とぼとぼ歩く先輩A・Bと二人を連行するミスズ。

ミスズ「トウマもユカリもちゃんと来るんだよ~!先に行ってるからね~。」

     ミスズ、先輩たちを連れて去る。

サクラ「ユカリちゃん、大丈夫?ケガはない?」
ユカリ「大丈夫。ありがとサクラ、助かったよ。じゃ、私先生のところ行ってくるからまた後でね。・・・トウマ君、行こうか。」
トウマ「・・・俺に構うな。放っておいてくれ・・・。」
ユカリ「・・・そっか。ごめんね。でも、ごめんついでに一つだけ言わせて。」
トウマ「・・・何だ・・・?」
ユカリ「私は、トウマ君の事本当にすごいと思ってる。見てればわかるよ、シノノメ家の再興を本気で考えてて、そのために自分の全てを賭けてでも強くなろうとしてること。誰よりも一生懸命になってるその姿を見て、いつも励まされてるんだ。トウマ君は夢に向かって今日も頑張ってる・・・私もクラスメイトとして、負けないように頑張らないと・・・って。」
トウマ「・・・だが、その結果がこれだ。いくら頑張っても越えられないものがある。・・・
笑えるよな。」
ユカリ「今は、ね。」
トウマ「なに・・・?」
ユカリ「確かに、トウマ君は今日は先輩たちに負けたよ。でも演術を覚えた後なら?1年
    後なら?」
トウマ「何が言いたい・・・?」
ユカリ「負けたのが悔しかったら、次勝てるようにすればいい。力が及ばないなら、知恵
でカバーすればいい。大事なのは諦めない事、そして、そのために行動し続ける
こと。・・・そして、自分には出来ると信じぬくこと。」
トウマ「・・・。」
ユカリ「負けたら終わりじゃないんだって。新しいスタートなんだって。昔、そう教えて
くれた人がいるの。・・・トウマ君はこれで終わりでいいの?負けたら終わりで、
それで諦められるの?」
トウマ「諦められるわけがない・・・俺の生涯をかけて成し遂げると、誓った・・・!」
ユカリ「じゃあ、諦める必要ないじゃん。今日負けてもさ、最終的に夢を叶えればそれで
いいんじゃないかな。」
トウマ「・・・そうだな。お前の言うとおりだ。」

     立ち上がり、去ろうとするトウマ。

ユカリ「え?トウマ君どこ行くの?そっち教員室じゃない・・・。」
トウマ「新しいスタートを切らなくてはならないからな。一分一秒も無駄にしたくない。」
ユカリ「気持ちはわかるけどさ・・・。」

     去っていくトウマ。

サクラ「・・・行っちゃったね。」
ユカリ「・・・こらー!逃げるなトウマー!」

     追いかけるユカリ。
それについていくサクラ。
     回想終わり。
     暗転

第十幕
     夜の学生寮。ロビー。

ユキ(声)「若―!若―!」
サクラ(声)「ユカリちゃーん?ねぇーどこ行ったのー?」

     トウマを探しているユキが出てくる。
反対側からユカリを探しているサクラが出てくる。
     鉢合う二人。

サクラ「あ、ユキちゃん!ユカリちゃん知らない?」
ユキ 「知らん。若はどこだ?」
サクラ「珍しいね。一緒じゃないんだ。」
ユキ 「そういう貴様も珍しいではないか。気持ち悪いほどベタベタしているくせに。」
サクラ「気持ち悪くないよ!仲良しなだけだもん!そういうユキちゃんはどーなの!?いつもいつもトーマ君の事こそこそ付け回して、ストーカーみたいじゃん!」
ユキ 「そんな下劣な行為と一緒にするな!私は任務として若を常にお守りしているだけだ!」
サクラ「じゃあ任務失敗じゃん!今守れてないじゃん!」
ユキ 「む・・・!それは・・・。」

     落ち込むユキ。

ユキ 「申し訳ございません若・・・申し訳・・・!」
サクラ「そ、そんなに落ち込まなくても・・・。ご、ごめんユキちゃん・・・。」

     ナツキがやってくる。

ナツキ「あら、珍しい組み合わせ。」
サクラ「ナツ姉、ユカリちゃん・・・も、そうなんだけど、トーマ君知らない?」
ナツキ「知らない。ま、そのうち戻ってくるんじゃないの?もうすぐ消灯時間だし。」

     シュウがやってくる。

シュウ「そーそー。子供は寝る時間だよー。」
ナツキ「って、アンタも寝る時間でしょ。どこ行くの?」
シュウ「オトナの遊び場―。ナツさんも一緒にどうー?」
ナツキ「嫌。」
サクラ「私行ってみたい!」
シュウ「おこちゃまはダメー。」
サクラ「おこちゃまじゃないよ私!」
ナツキ「・・・どこ行く気か知んないけど、バレないようにしてよ。連帯責任で怒られる
    とかホント御免だからね。」
シュウ「ナツさんのそーいうとこホント好きだわー。ありがとー。」
ナツキ「どーいたしまして。」
シュウ「あー。そーだユキ、庭で愛しの若様がクソ真面目ユカリちゃんとラブラブしてた
けどー・・・あれはユキ的にはOKな感じー?」
ユキ 「・・・何だと!?」
サクラ「ユカリちゃんがトーマ君と!?」
ナツキ「へぇ~・・・なかなか面白い組み合わせね。」
シュウ「じゃー、僕行くからー。いってきまーす。」

     シュウ、出ていく。

ユキ 「ユキ=カゲムラ一生の不覚・・・。まさか若に寄り付く虫の存在を見過ごしてい
    たとは・・・!このままでは殿と奥方様に合わせる顔がない・・・!かくなる上
    は奴の首を討ちとって・・・!」

     殺意をまとい、駆け抜けていくユキ。

サクラ「待ってユキちゃん!ダメだよ~!」

     ユキを追いかけようとするサクラ。

ナツキ「・・・フローラ姫!」
サクラ「なに?・・・あ!」
ナツキ「・・・やっぱりそうなんだ。」
サクラ「あ・・・え~と・・・ナ、ナンノコトデスカー?」
ナツキ「大丈夫、誰にも言わないから心配しないで。よくわからないけど、事情があるんでしょ?」
サクラ「・・・ナツ姉、どうして・・・?」
ナツキ「私の父親が前に第十二演撃師団にいてさ。第十二師団って王都防衛が主な任務だ
から、父親が退役するまでずっと王都で暮らしてたの。だから、遠目からだけど
王族の方々のお姿は何度か拝見してて・・・。」
サクラ「そっか・・・。」
ナツキ「一目見たときから似てるなーって思ってたんだけど、さすがに姫が東方のこんな
田舎の、しかも演術士養成学校にいるわけなんかないし・・・。でも今日、第一
師団長さんがいらっしゃった時の反応見てたら、やっぱりなんかあるなって。」
サクラ「え?私あの時何かした?」
ナツキ「なんか必要以上に避けてる感じがしてさ。団長さんも、サクの方見ないようにし
てた感じだったし。」
サクラ「・・・流石だね。ナツ姉にはかなわないな。」
ナツキ「モヤモヤしてるのが嫌だから、白黒はっきりつけたかっただけなの。ごめんね。」
サクラ「ううん。ごめんね。今まで内緒にしてて。」
ナツキ「言えない事情があるんでしょ?だからさっき言った通り誰かに言うつもりもない
し、悪いけどこっちも、姫でもなんでも今まで通りの接し方するからさ。」
サクラ「ありがとう・・・。」
ナツキ「ところでさ、卒業するまではいられるんでしょ?」
サクラ「うん。」
ナツキ「その後は?やっぱり帰るの?王都に。」
サクラ「・・・うん。」
ナツキ「そっか・・・。」
サクラ「ナツ姉は卒業したらどうするの?どこの演撃師団の入団試験も受けてないみたい
だけど・・・?」
ナツキ「ああ。私は演術士になるつもり元からなかったからさ。」
サクラ「え?」
ナツキ「私がなりたいのはこっち」

     ナツキ、ホルダーから戯曲を取り出す。

ナツキ「私は戯曲作家になりたいの。古代の遺跡や文献から過去の英雄の魂を探し出し、
戯曲を創り出す・・・ずっと前からの私の夢。」
サクラ「じゃあ、この学校に入ったのも、そのため?」
ナツキ「そ。大学まではずーっと考古学の勉強してたんだけどさ、やっぱり戯曲創るなら
演術の事もちゃんと知っとかないとね。」

     ユカリとトウマが戻ってくる。

トウマ「お前ら、こんなところで何話してるんだ?もう消灯時間だぞ。」
ナツキ「それはこっちのセリフ。こんな時間まで二人きりで何してたの~?ん~?」
ユカリ「え?何って・・・。」
トウマ「ただの昔話だ。」
サクラ「・・・どんな昔話~?」
トウマ「いちいち人に話す内容じゃない。ほら、お前ら部屋に戻れ。」
ナツキ・サクラ「あやしい~!」
トウマ「しつこいぞ!さっさと寝ろ!」
サクラ「あれ?そういえばユキちゃんは?」
トウマ「ユキがどうした?」
ナツキ「いや、さっきすごい剣幕でアンタらのとこに向かっていったんだけど・・・。」
ユカリ「そうなの?全然見てないけど・・・。」
サクラ「あれ?おかしいな・・・。道に迷ってるのかな?」
トウマ「ありえんな。」
ナツキ「そーだね、サクならともかく。」
サクラ「ナツ姉~。」

     満身創痍のセイヤがよろめきながら戻ってくる。

サクラ「!セイヤ!大丈夫!?」
セイヤ「・・・大丈夫だ・・・。」
ナツキ「ちょ・・・アンタどこ行く気?」
セイヤ「・・・部屋に決まってんだろ・・・!もう消灯時間だろ・・・。」
ユカリ「セイヤ、その前に医務室に行こう。」
セイヤ「・・・また余計なお節介かよ・・・。こんなもん寝たら治る・・・!」
サクラ「そんなわけないじゃん!ユカリちゃんの言う通り医務室に・・・。」
セイヤ「うるせぇんだよ!どいつもこいつも!ほっとけっつってんだろうが!」

     セイヤに怒鳴られて固まるサクラ。

ナツキ「ちょっとアンタ!自分が今何言ったかわかってんの!?」
ユカリ「ナツキさん落ち着いて!セイヤもどうしたの!?本当におかしいよ!」
セイヤ「・・・おかしいのはてめぇらだろ?いつまで仲良しこよしでうだうだやってんだ
    よ・・・。ここは遊び場じゃねぇんだよ!反吐が出るぜ・・・!」

     部屋に戻ろうとするセイヤ。
     その前に立ちふさがるトウマ。

セイヤ「・・・んだよ、てめぇまで偉そうに説教する気か?・・・いつまでも見下してん
じゃねぇぞクソが・・・!」
トウマ「クソは貴様の方だろう。・・・見損なったぞ。」
セイヤ「見損なった・・・?(笑う)笑わせるなよ!俺の事なんざ見てやしねぇくせに!」

     トウマを払いのけるセイヤ。
     その予想外の力に吹き飛ばされてしまう。

トウマ「ぐ・・・っ!」
セイヤ「・・・これが今の俺の力だ・・・!俺はまだまだ強くなる・・・!今までに俺が
味わった屈辱・・・全部まとめて返してやるぜ・・・!」

     狂気じみた笑い声をあげて部屋に戻るセイヤ。

サクラ「セイヤ・・・どうしちゃったの・・・?」

     サクラの肩をぎゅっと抱き寄せるユカリ。

サクラ「ユカリちゃん・・・。」
ユカリ「大丈夫・・・大丈夫だよ。・・・ごめん、トウマ、ナツキさん、私、サクラを部屋
まで送っていくから・・・。」
ナツキ「・・・うん、おやすみ。」
ユカリ「・・・おやすみなさい。」

     サクラを連れて去るユカリ。
     その後、無言でその場を去るトウマ。
     一人残された後、自分の部屋に戻ろうとするナツキ。
     ふと、何かに気づいたかのようにセイヤの去った方を振り返る。

ナツキ「アイツ・・・まさか・・・。いや、そんな筈ない。アレはもう失われた戯曲のは
    ず・・・。そんな筈は・・・。」

     思い悩むナツキ。
     突然、決心したかのように顔を上げる。

ナツキ「・・・こんなところで悩んでたって始まらない。調べてみるしかないか・・・。」

     ナツキ、去る。

第十一幕
カグラ村近辺。
どこかに向かっている最中のシュウが駆け込んでくる。
舞台中央で立ち止まり、辺りを伺う。
     そこに、仮面の男がゆっくりと姿を現す。

仮面の男「時間通りですね。流石です。」
シュウ「んー、まーねー。これでもデートの待ち合わせとかには一度も遅れたことないん
    でー。」
仮面の男「それは結構。ですが、私はここで一人で来るように伝えた筈ですが?」
シュウ「?どーいうことー?」
仮面の男「いるんでしょう?ユキ=カゲムラさん。」

     ユキが姿を現す。

シュウ「ユキ・・・若様のとこになんでいかなかったのー?」
ユキ 「・・・あのような言葉に私が惑わされるとでも?」
シュウ「・・・そっかー・・・ちょっと舐めすぎてたかー・・・。」
ユキ 「貴様、兄上とどんな話をしたのかは知らんが、貴様は私がここで討つ!たとえ刺
し違えてもな・・・!」

     いきなり仮面の男に斬りかかるユキ。
     しかし攻撃は躱されてしまう
     シュウ、ユキの背後から攻撃する。

ユキ 「・・・兄・・・上・・・?」

     気絶するユキ。

シュウ「ごめんねー。まさかついてきてるとは思わなかったからさー。ま、その代わりと
言っちゃーなんだけど、アンタの言うことなーんでも聞くからさー、許してー。
ね?」
仮面の男「・・・いいでしょう。では、妹さんを殺しなさい。」
シュウ「・・・は?」
仮面の男「私の言うことは何でも聞くのでしょう?」
シュウ「・・・んー・・・ごめん、それ無理だわー。他の事は頑張るからさー、命だけは
    勘弁してやってくんないかなー?」
仮面の男「できないな。」
シュウ「そう・・・じゃあ悪いけど、僕もアンタの言うことは何一つ聞けないな・・・!」

     仮面の男を睨むシュウ。
     その表情は険しく、怒りをあらわにしている。

シュウ「一度しか言わないよ。僕がアンタに協力する条件は一つだ。『ユキに危害を加えな
い』。これを守ってくれるのであれば、僕はなんだってやる。だが・・・そうでな
いというのであれば、僕はアンタを叩き潰す!どんな手段を使ってもね・・・!」
仮面の男「ようやく本来の君を見られた気がするよ。」
シュウ「で、どうするの?悪いけど考える時間はあげない。今この場で即答してもらう。」
仮面の男「いいでしょう。妹さんには危害を加えません。神に誓って。」
シュウ「オーケー。契約成立だね。・・・でもさー、ちょーっとビックリかなー・・・。」
仮面の男「何がです?」
シュウ「信じてるんだー。神様。」
仮面の男「勿論ですよ。全ては神の思し召し。我々は神の描いた物語の登場人物に過ぎな
い。私も筋書きに従って、己の役割をただ演じるのみ。」
シュウ「小難しいことはどーでもいいや。で、アンタのいう物語の僕の役割は何―?」
仮面の男「話が早くて助かるよ。ついてきたまえ。」
シュウ「あー、ちょっとタンマ。ユキ、ここに置いとくわけにもいかないからさー。どっかに閉じ込めておけたりとか出来ないかなー?」
仮面の男「・・・いいのですか?」
シュウ「だってしょーがないでしょー。ほっとくとさっきみたいにガンガン首突っ込んで
きそーだしさー。それよりは閉じ込めておとなしくしててもらったほーが、おに
ーちゃん的には安心なわけー。」
ショウイチ(声)「だったらウチを貸してやる。」

     マントとフードで顔を隠したショウイチがやってくる。

シュウ「誰ー?・・・でもいっかー。ありがとー。恩に着るよー。」
ショウイチ「礼などいらん。お前がその分働いてくれればな。」
シュウ「はーい。なんだかわかんないけど、僕ちゃん頑張っちゃうー。」
ショウイチ「・・・。」
シュウ「・・・何ー?」
ショウイチ「成程な。口は軽いが使えそうな男だ。」
シュウ「あーら、褒められちゃったー。ありがとー。」

     ショウイチ、ユキを担ぐ。

ショウイチ「この娘のことは任せろ。お前たちはさっさと話を済ませておけ。」

     ショウイチ、立ち去る。

シュウ「なにーあの人―。めちゃめちゃ強い人じゃん。あんな人まで巻き込んで一体おた
く何するつもりー?」
仮面の男「別に何も。ただ物語を紡ぐだけです。神の大いなる意思に従って、ね。」

     笑いながら立ち去る仮面の男。
     シュウもその後についていく。
     暗転。

第十二幕
     一週間後。
     東方地区演術士養成学校・練武場。
     第一演撃師団入団試験当日。

セイヤ「サクラ、悪いことは言わねぇ。俺との対戦は棄権しろ。」
サクラ「・・・どうして?」
セイヤ「決まってるだろ。俺とお前じゃ力の差がありすぎて話にならねぇ。それに・・・
俺がぶっ潰したいのはお前じゃねぇ。」
サクラ「セイヤ、私負けないよ。セイヤにも、トーマ君にも。絶対。」
セイヤ「・・・今の俺は昔とは違う。俺の前に立つってんなら手加減も容赦も出来ねぇ。それでもやるってのか?」
サクラ「やるよ。私は逃げない。私も昔とは違うから。」
セイヤ「・・・バカ野郎が・・・!」
サクラ「私、野郎じゃないよ。女の子だよ。もう!」
トウマ「サクラ。」
サクラ「トーマ君、私負けないからね!がんばるぞ!オー!」
トウマ「・・・あいつのため・・・か?」
サクラ「・・・うん。私がユカリちゃんにしてあげられるの、このくらいしかないから。」
トウマ「そうか・・・だったら俺も同じだな。」
サクラ「え?」
トウマ「あいつに、思い出させてやるぞ。諦めなければ、自分を信じぬけば、想いは叶う
ということを。今日の結果でな。」
サクラ「うん!」
カオル(声)「只今よりエタニティア王国第一演撃師団・入団審査試験を行う!」

     舞台上手にセイヤ、下手にサクラが移動する。。
     舞台奥には見守るトウマ、ミスズ、カオル、ウィルの姿が。

ウィル「まずお互いに英雄召喚を行ってもらいます。まずは、サクラ=エイタニさん。前
へ。」
サクラ「はい!」

     サクラが舞台中央に向かって歩き出す。
     舞台中央でホルダーから戯曲を取り出し、構える。

サクラ「英雄召喚!我が声を以って汝の魂を・・・!」
セイヤ「ちょっと待ってください!」
ウィル「・・・何か?」
セイヤ「・・・おれは、この人とは戦えません・・・。」
サクラ「セイヤ?」
ウィル「それは、この試合を放棄するということかい?」
セイヤ「・・・仕方ないじゃないですか。じゃあ、貴方は戦えるんですか?この人の正体
が、王国第一王女・フローラ姫だとしても!」

     ざわつく会場。

サクラ「・・・セイヤ・・・どうして・・・?」
セイヤ「・・・悪い、サクラ。でも、どうしてもお前と戦いたくなかったんだ・・・!今
の俺は・・・俺は・・・!」

     震える腕で戯曲ホルダーから黒い戯曲を取り出すセイヤ。

セイヤ「!?・・・何でだよ・・・!ふざけんな・・・っ!止まれ!おれはこいつとは戦
わない・・・!戦いたくないんだ・・・っ!止まれよぉぉぉっ!」
ウィル「君、どうしたんだ?」
セイヤ「・・・どうした・・・?あんたが・・・あんたが・・・っ!ぐぅぅぅっ!」
サクラ「セイヤ!」
セイヤ「来るなあぁっ!」

     ナツキ、ユカリが練武場に駆け込んでくる。

ナツキ「・・・その戯曲・・・!やっぱり!?」
サクラ「ユカリちゃん、セイヤが・・・!」
ナツキ「セイヤ、今すぐその戯曲を捨てなさい!」
セイヤ「・・・わりぃ・・・出来ねぇ・・・。」
ナツキ「セイヤ!」
セイヤ「もう・・・自分の意志じゃ、手を動かすことが出来ねぇ・・・!」
ユカリ「ナツキさん!セイヤは一体・・・?」
ナツキ「ウィル=スピアーズ第一演撃師団副団長!そして、カオル=ショウザン第一演撃
師団長!お力を貸してください・・・!彼が手にしている黒い戯曲は・・・禁書
です!」
カオル「!?」
ウィル「なんだって!?」
ナツキ「かつて、王国を恐怖に陥れた闇の戯曲【シェイクスピアの四大悲劇】。彼が手にし
ているのは紛れもなくそのうちの一冊です。このままでは・・・闇の英雄がセイ
ヤを乗っ取って復活してしまう・・・!」
トウマ「ならば、その前にその戯曲を斬り捨てる!」

     舞台奥からトウマが飛び出してきてセイヤに斬りかかるが、セイヤに防がれる。

セイヤ「・・・っとぉ・・・あぶねぇあぶねぇ・・・。」
トウマ「貴様は・・・!」
セイヤ「ようやく待ち望んだ娑婆に出られる機会なんだ。こんなところでぶっ潰されてた
まるかよ・・・!」
ウィル「そうか、それは残念だったな。」

     セイヤに容赦なく斬りかかるウィル。

セイヤ「ぐはっ!」
ウィル「台詞の詠唱が終わってない以上、貴様はまだ完全にその力を振るうことが出来な
    い。今の内に消えてもらうぞ!」
カオル「待てウィル!」
サクラ「やめてください!」

     セイヤに斬りかかろうとするウィルの前に立ちはだかるサクラ。

ウィル「お退きください!」
サクラ「嫌です!セイヤは私の仲間!見殺しになんてできません!」
ウィル「王国の民のために生きるというあの言葉は嘘だったのですか!?」
サクラ「嘘じゃないです!だから退くわけにはいきません!セイヤだって王国に生きる民
の一人です!私は・・・一人の犠牲も出したくないんです!」
ウィル「姫・・・!」
ナツキ「セイヤ、しっかりして!聞こえてる!セイヤ!」
セイヤ「・・・サ・・・ク・・・ラ・・・。」
サクラ「セイヤ!」
セイヤ「ごめ・・・ん・・・。こんな・・・つもりじゃ・・・!」
サクラ「しっかりして!勝つんでしょ、トーマ君に!」
トウマ「そうだ!お前は俺に勝つために強くなったんだろう!?その強さを見せてみろ!
こんなところで負けるな!」
セイヤ「・・・トーマ・・・俺を・・・俺を殺してくれ・・・!」
トウマ「何を言って・・・!」
セイヤ「早くしろ!あいつが・・・あいつがまた戻って・・・ぐ・・・がぁぁぁぁあっ!」
サクラ「セイヤ!」
セイヤ「・・・英雄・・・召喚・・・我が声を以って・・・汝の・・・魂を・・・導かん・・・。」
ウィル「召喚が始まった!君たち、そこを退きなさい!」
ユカリ「退きません!セイヤは・・・まだ負けてないんです!だから・・・!」
ウィル「勝てるという保証もない!」
ナツキ「ウィル!・・・お願い・・・!」
ウィル「済まない・・・いくら君の頼みでもこればかりは聞けない。」
ナツキ「ウィル!」
セイヤ「うあぁぁぁぁあっ!」

     セイヤ、突如叫び声をあげる。
     ふらふらとウィルの前に立つ。

セイヤ「・・・殺せよ・・・殺すなら・・・殺せるなら・・・!」
ナツキ「あんた何言って・・・!」
サクラ「そんな・・・嫌だよ・・・嫌だよ!」

     サクラの頬を伝う涙を指で拭うセイヤ。

セイヤ「サクラ、お前と出会えて本当に良かった・・・。ありがとう。」
サクラ「セイヤ!」
セイヤ「お前が・・・どこの誰であっても関係無ぇ・・・俺は・・・お前が好きだ。」

     セイヤ、ウィルに向かってさらに一歩前に出る。

セイヤ「さぁ・・・早くやれぇっ!」

     剣を構えるウィル。

ウィル「その心意気・・・見事だ。」
ミスズ「ウィル、止めて!先輩!」
カオル「・・・。」
ナツキ「ウィル!」
サクラ「お願い・・・お願いやめてぇぇぇぇっ!」
ウィル「はあぁぁぁっ!」

     ウィル、上段に剣を振りかぶる。
     その時、金属音がする。
     剣を落とすウィル。
     すぐさま後ろを振り返る。

ウィル「誰だ!」
シュウ(声)「僕だよー。」

     シュウが現れる。

サクラ「・・・シュウ君・・・?」
シュウ「やほー。みんな元気してたー?」
ナツキ「シュウ・・・ありがと、助かった。」
シュウ「お礼はいらないよー。セーヤ君に死なれるとこっちも困っちゃうからさー。」
サクラ「え?」

     瞬時にウィル、サクラ、ナツキ、トウマ、ユカリを打ち倒し吹っ飛ばすシュウ。

トウマ「どういうつもりだ!」
シュウ「ほらー、あと一言、自分の名前を言うだけでしょー。歴戦の英雄なんだからさー、もっとしっかりしてよねー、将軍。」
セイヤ「・・・訂正しろ・・・!」

     セイヤの雰囲気がどす黒く、禍々しいものに変わる。

セイヤ「俺は・・・将軍ではない!俺は王だ!俺こそが王にふさわしい男!王になることを約束された男!平伏せ、小童ども!我こそは【狂乱の戦王】マクベスなり!」

     轟音が鳴り響く。
     セイヤが完全にマクベスとなり圧倒的なプレッシャーを放つ。

セイヤ(マクベス)「さて・・・。」

     サクラの前に立つセイヤ(マクベス)。

セイヤ(マクベス)「まずは貴様からだ、お姫様。貴様を殺し、その後王族どもを皆殺しにして、その骸の上に俺の王国の玉座を築く。」
サクラ「セイヤは・・・?セイヤはどうなったの!?」
セイヤ(マクベス)「どうだっていいだろ。今から死ぬ貴様には関係ねぇよ。」

     サクラに武器を振り下ろすセイヤ(マクベス)。
     ウィルに攻撃を阻まれる。

ウィル「君たち、姫を連れてここから逃げるんだ・・・!」
サクラ「でもセイヤが・・・!」
カオル「御心配には及びません。彼は必ず私たちが救い出します。」
ユカリ「カオルさん!」
カオル「ユカリ、姫を頼んだよ。」

     剣を抜くカオル。
     セイヤ(マクベス)に向かって攻撃をする。
     カオルの攻撃を防ぐセイヤ(マクベス)。
     ウィルがセイヤ(マクベス)に攻撃を仕掛ける。
     躱すセイヤ(マクベス)

ウィル「くっ!」
セイヤ(マクベス)「甘ぇよ小僧!」
カオル「さあ、今の内だ!行け!」

     カオルがセイヤ(マクベス)に畳みかけるように攻撃する。
     カオル・ウィルVSセイヤ(マクベス)
     セイヤ(マクベス)がはける。
それを追うカオル、ウィル

ユカリ「カオルさん・・・すみません!お願いします!いくよ、サクラ。」
シュウ「そーはいかないよー。」

     逃げようとするユカリたちの前に立ちはだかるシュウ。

ナツキ「シュウ・・・あんた一体何考えてんのよ!」
シュウ「もうこの国はおしまいだよー。蘇ったマクベス王によって滅びを迎える。だったらさー、勝つ方に味方した方が得なんてこと子供でも分かることだと思うけどー?」
サクラ「シュウ君、嘘だよね?」
シュウ「僕、テキトーなことは言うけど、嘘は嫌いなんだよねー。」
ユカリ「どうして!?私たち仲間でしょ!?」
シュウ「違うよー。ただのクラスメイト。勝手に仲間にしないでくれるー?」
ナツキ「あんたは・・・!」
シュウ「君らといた二年間はそれなりに楽しかったよー。いい思い出になった。ありがとー。・・・でも、今日でさよーならだねー。」

     刀を抜くシュウ。

サクラ「シュウ君!」
シュウ「君たちの事は忘れないよー。多分。・・・じゃあねー。」

     シュウに斬りかかるトウマ。
     斬撃を防ぐシュウ。

トウマ「貴様の相手は俺だ・・・!」
ユカリ「トウマ!」
トウマ「ユカリ!ナツキ!サクラを連れて王都に行け!こいつは俺がここで食い止める!」
サクラ「嫌だよ!どうして・・・どうしてシュウ君とまで戦わなきゃいけないの!?」
トウマ「・・・安心しろ。俺はこいつを殺したりはしない。ただお仕置きしてわからせてやるだけだ。こいつの考えが間違ってるってな。」
ユカリ「トウマ・・・待ってるからね・・・!」
トウマ「ああ。時間はかからん。すぐに合流する。」
サクラ「トーマ君・・・シュウ君・・・死なないで・・・!」
ナツキ「このバカのこと・・・頼んだよ!」

     ユカリ、サクラ、ナツキ、逃げる。

シュウ「揃いも揃ってお人よしだねー。敵に寝返った奴の心配するなんてさー。」
トウマ「お前は敵じゃない。俺たちの・・・仲間だ。」
シュウ「仲間?君が言う?僕たち兄妹を駒のように扱うシノノメ家の人間である君が?笑わせるなよ・・・!」
トウマ「シュウ・・・聞いてくれ、俺は・・・!」
シュウ「構えなよ。僕を止めるんだろう?ここで僕を止められなければ、君の大切なお仲間が死ぬことになるよー。いいのー?」
トウマ「・・・。」

     静かに刀を構えるトウマ。

シュウ「こうして君と戦うのは、10年ぶりだねー。」
トウマ「・・・そうだな。あの日以来だ。」
シュウ「あの時と同じように、本気で相手してあげるよ。」
トウマ「・・・望むところだ。」
シュウ「『歴代最強の訓練生』ねぇー・・・ちょーっとは強くなってるのかなー?」
トウマ「・・・さぁな。」
シュウ「退屈させるなよー、若様。」

     トウマVSシュウ。
     戦いの途中で戦いながらはける。

     場所は変わって校庭。
     剣と剣がぶつかり合う音が聞こえる。
     カオルとウィルがセイヤ(マクベス)と戦いながら舞台上に出てくる。
     そこにミスズがやってくる。

ミスズ「先輩!ウィル!」
ウィル「遅いですよ!何してたんですか?」
ミスズ「ごめんごめん、武器も戯曲も教員室に置いてきてたからさ・・・。」
カオル「・・・ウィル、ミスズ、済まない。お前たちにここを任せてもいいか?」
ミスズ「ふぇ?」
ウィル「・・・何故です?」
カオル「・・・奴は、まだ本気で戦っていない。」
ウィル「え!?」
カオル「奴が一人で王国を滅ぼせるほどの力を持っているというのなら、我々二人の力でこうも簡単に抑え込めるのはおかしい。何より・・・王族を皆殺しにするというなら、姫をあまりにも簡単に逃がしすぎだ。」
ウィル「・・・何か裏がある、と?」
カオル「わからん・・・だが、嫌な予感がする。あの時と同じように・・・。」
ミスズ「・・・わかりました。行ってください、先輩。」
カオル「・・・すまない。」
ミスズ「何謝ってるんですか!?ダイジョーブですって!こっちには天才演術士様様が付いてるんですよ!闇の英雄の一人や二人くらいちょちょいのちょーいです!ね?」
ウィル「先輩、それって完全に人任せってことですか?」
ミスズ「ソ・・・ソンナコトナイヨー。」
ウィル「じゃあ、僕の目を見て言ってください!さぁ!さぁ!」
セイヤ(マクベス)「いつまでそのくだらんコントを見てればいい?・・・こっちは忙しいんだ。あまり待たせるなよ・・・。」
ミスズ「くだらん・・・ですって・・・?あったまきた!だったら絶対大爆笑間違いなしのとーっておきの究極ショートコントを見せてやる!」
ウィル「え?先輩そっち!?」
ミスズ「ショートコント『    』・・・はい、ウィル。」
ウィル「は?」
ミスズ「何やってんの?早くやって!早く!」
ウィル「嘘ですよね?」
セイヤ(マクベス)「どうした?早くやれ。」
ウィル「はぁ!?」
カオル「ウィル、王国のためだ!」
ウィル「団長まで!?」
ミスズ「(客席に)皆さんも見たいですよね~?」

     ミスズ、客席を煽る。
     ウィル、しぶしぶショートコントをやる。
     お客さんの反応を受けてウィル、ミスズ、セイヤ(マクベス)がアドリブ
でやり取りをする。

カオル「すまないウィル!ミスズ!あとは頼んだぞ!」

     どさくさに紛れてカオルが退場する。

ミスズ「ありがとウィル。協力してくれて。」
ウィル「貸し一つ、ですよ。先輩。」
セイヤ(マクベス)「さて、次はどんな余興を見せてくれる?お笑いコンビ。」
ウィル「悪いが余興はこれで終わりだ。ここから先は本気でやらせてもらう。」
セイヤ(マクベス)「正気か?貴様らごときが、あの女抜きでこの俺に勝てるとでも?」
ミスズ「勝つよ。勝って貴方からセイヤを取り戻す!」
セイヤ(マクベス)「戯言を・・・。」
ミスズ「ウィル、絶対に殺しちゃダメだからね。」
ウィル「・・・手加減は出来ませんよ。きっと。」

     ミスズ、ウィル、戯曲ホルダーから戯曲を取り出す。

ミスズ・ウィル「英雄召喚!」

     暗転。

第十三幕
     カグラ村・ユカリの実家。
     ユキが働いている。

ユキ 「くっ・・・こんなところでいつまでもこうしているわけにはいかんというのに・・・!
兄上・・・若・・・!」
ショウイチ「よう。」

     ショウイチが現れる。

ユキ 「店主殿!もう十分働いた!これで助けてもらった借りは返せたはずだ!いい加減、約束通り奴の事を教えて頂きたい!」
ショウイチ「・・・悪いな。あれは嘘だ。」
ユキ 「何だと!?」
ショウイチ「あの仮面の男について知りたければ店の手伝いをしろ・・・そう言えばお前さんを引き止められると思ってな。すまん。」
ユキ 「・・・なぜそんな真似を?」
ショウイチ「それがお前さんの兄貴の願いだからだ。あの男は、たとえ自分の身がどうなろうとも、お前さんを守ろうとしていた。」
ユキ 「兄上が・・・。」
ショウイチ「・・・おそらく、もうすぐ全てに片が付く。そうなれば兄貴が迎えに来るだろう。お前さんはそれまでこの店でおとなしく待っていろ。」
ユキ 「・・・それは・・・出来ません。」
ショウイチ「お前・・・。」
ユキ 「兄上が自分の身を犠牲にしてでも私の事を守ろうとしたように、私にも同じように守りたいものがあります。そのためには・・・たとえ兄上の気持ちを踏みにじることになろうとも、私は行かねばならんのです。」
ショウイチ「・・・命を落とすことになってもいいのか?」
ユキ 「構いません。ここで何もせずに、後悔するよりは。」
ショウイチ「・・・やれやれ、どっかのバカ娘と同じタイプか・・・。」
ユキ 「は?」
ショウイチ「わかった。もう何も言わん。ただし・・・命を無駄に投げ出すような真似だけはするな。お前さんが何を大事にしているのかは知らんが、命より大事なモノなんてのは何処にもねぇ。お前が死ねば、お前の兄貴は必ず不幸になる。それを忘れるな。」
ユキ 「わかりました、肝に銘じます。」
ショウイチ「お前さんの通っている演術士養成学校に行け。そこに行けば全てがわかる。」
ユキ 「承知いたしました。・・・あの、店主殿。」
ショウイチ「何だ?」
ユキ 「また来てもいいですか?今度は兄と、私の友人も一緒に。」
ショウイチ「・・・お前さんが生きてたら・・・な。」
ユキ 「ありがとうございます。必ず生きて、またここに来ます。御免。」

     ユキ、去る。
     入れ替わりで仮面の男が現れる。

ショウイチ「・・・出番か?」
仮面の男「ええ。予定通り、フローラ姫が学校の外に出て王都に向かいました。」
ショウイチ「わかった。行こう。」
仮面の男「もう一つ、お伝えしたいことが。」
ショウイチ「何だ?」
仮面の男「お嬢さんが、姫と一緒に行動しているようです。」
ショウイチ「・・・そうか。」
仮面の男「お嬢さんはどうやら姫と随分仲が良いようです。・・・大丈夫ですか。」
ショウイチ「くどい。前にも言ったはずだ。俺はリンを取り戻す。そのためなら、どんな
犠牲も厭わないと。」

     ショウイチ、マントとフードを身にまとい、その場を後にする。
     仮面の男もその後に続く。

場所は変わって、東方地区演術士養成学校付近の王都に続く街道。
     ユカリ、ナツキ、サクラが駆け込んでくる。
     立ち止まるユカリ。

ユカリ「待ってナツキさん!王都に行く前に、寄りたい場所があるの。」
ナツキ「どこ?」
ユカリ「カグラ村。」
ナツキ「王都と真逆の方向じゃない。なんで?」
ユカリ「お父さんの力を借りようと思って。私のお父さん・・・元演術士なの。この先何
があるかわからない状況で、私たちだけで王都を目指すよりいいと思って・・・。」
ナツキ「確かに・・・一理あるか。王都とは方向は真逆だけど、そんなに遠いわけじゃな
い。」
ユカリ「サクラ、それでも大丈夫?」
サクラ「私は・・・別に大丈夫だよ。」
ナツキ「よし、じゃあカグラ村に向かいますか!」

     ナツキ、去る。
     ユカリとサクラもその後に続くが、不意にサクラの足が止まる。
     それに気づいてユカリも止まる。

ユカリ「サクラ?」
サクラ「・・・ごめんね、ユカリちゃん。黙ってて・・・。」
ユカリ「何が?」
サクラ「・・・私が、姫だってこと。」
ユカリ「・・・ああ!そのこと!びっくりしたよ~。何で教えて・・・って、事情がある
のか。言えるわけないよね。」
サクラ「怒ってないの?」
ユカリ「怒る?何に?」
サクラ「だって私、嘘ついてたんだよ!私、演術士になるわけじゃない。それなのに・・・
私は・・・私は・・・!」
ユカリ「・・・でも、一生懸命だった。サクラはいつも。それは嘘じゃないでしょ。」
サクラ「・・・。」
ユカリ「セイヤも言ってたじゃん。サクラがどこの誰でも関係ない。私にとって、サクラ
はサクラ。それじゃダメかな?」
サクラ「・・・ユカリちゃん・・・!」

     ユカリに寄りかかり泣きだすサクラ。

ユカリ「もう・・・相変わらず泣き虫なんだから。」
ナツキ(声)「ちょっとー!二人とも何してんのー?早くいく・・・うっ!」

     ナツキの言葉が途中で止まり、ナツキが倒れる。
     ナツキのはけた方向から、フードとマントを身につけた男(ショウイチ)が
ゆっくりと現れる。

ショウイチ「・・・フローラ姫、だな?」
ユカリ「サクラ、下がって!」

     剣を抜き、構えるユカリ。

ショウイチ「お前には用は無い。命が惜しくば下がっていろ。」
ユカリ「サクラに何の用ですか?」
ショウイチ「命を貰う。」
ユカリ「そんな事・・・させない!」

     ユカリVSショウイチ
     ユカリの攻撃はことごとくショウイチに受け流される。

ショウイチ「これ以上は時間の無駄だ。下がっていろ・・・!」

     ショウイチ、ユカリを殴り飛ばす。

サクラ「ユカリちゃん!」
ユカリ「サクラ・・・ごめん・・・逃げて・・・!」
サクラ「でも・・・!」
ユカリ「お願い!逃げて!」

     ユカリ、立ち上がりショウイチに掴みかかる。

サクラ「ユカリちゃん!」
ユカリ「早く!今の内に!」
ショウイチ「いい加減・・・諦めろ!」

     ショウイチ、ユカリを振り払う。
     その時にフードが外れ、ショウイチの素顔があらわになる。
     ショウイチの顔を見て、固まるユカリ

ユカリ「う・・・そ・・・。」
ショウイチ「・・・ちっ。」
ユカリ「おとうさん・・・なんで・・・?」
サクラ「え?」
ユカリ「なんでお父さんがサクラの命を狙うの!何で!?答えてよぉっ!」
ショウイチ「子供は黙ってろ!」
ユカリ「・・・何それ?そんなこと言われて、はいそうですかって黙ってられるわけないじゃん!確かに私は子供かもしれない・・・でも、子供だからって、自分の父親が親友を殺そうとしてるのを黙って見てることなんかできない!」
ショウイチ「何も出来んくせに、何もわからんくせに強がりだけは一人前だな。」
ユカリ「そんなこと・・・!」
ショウイチ「だったら、戦ってみるか?この俺と。」
ユカリ「戦う・・・私が・・・お父さんと・・・?」

     体の震えが止まらないユカリ。
     顔が真っ青になる。

サクラ「ユカリちゃん・・・逃げて!戦う必要なんてない!私の事はいいから、逃げて!」
ユカリ「・・・え?」
サクラ「私も何とかして逃げるから!私は大丈夫だから!だから・・・逃げて!」
ユカリ「・・・逃げる・・・?サクラを置いて、逃げる・・?私だけ・・・?・・・冗談じゃない!」

     ショウイチに斬りかかるユカリ。
     だが、ショウイチに軽くあしらわれる。

ショウイチ「・・・頼む。もう立ち上がるな。お前を傷つけたい訳じゃねぇんだ・・・!」
ユカリ「・・・だったら、せめて理由を教えてよ・・・。お父さんはなぜサクラを殺そう
とするの?」
仮面の男(声)「最愛の人の復活のため・・・ですよ。お嬢さん。」

     仮面の男が現れる。

ショウイチ「てめぇ・・・!」
仮面の男「いいではないですか。もしかしたらお嬢さんも協力してくれるかもしれません
    よ?なにしろ、お母さんを生き返らせるという話なんですから。」
ユカリ「お母さんを・・・生き返らせる?・・・何それ?どういうこと?・・・なんでそ
れとサクラが関係・・・?」
仮面の男「貴女のお母さんの魂に一番適合する身体の持ち主がフローラ姫だからです。悪
い話ではないでしょう?貴女の親友は、これからは貴女のお母さんになる。貴女
と、貴女のお父さんと、そして貴女のお母さんになった親友と、これから三人家
族仲良く暮らすことが出来る。・・・どうです?」
ユカリ「お父さん・・・本当?」
ショウイチ「俺は・・・リンが生き返るなら、なんだってやる。」
ユカリ「なにそれ・・・?そんな事、お母さんが喜ぶって思ってるの?」
ショウイチ「・・・。」
ユカリ「・・・頭来た・・・!あったまきたこのバカオヤジ!」

     ショウイチを殴るユカリ。

ユカリ「私だってお母さんに会えるなら会いたいよ!でも、こんなのは違う!そんなの間
違ってる!誰かを犠牲にしてまで生き返りたいなんて絶対お母さん思わない!そ
んなことしたってお母さんが悲しむだけだよ!それが一番わかってるのは・・・
お父さんなんじゃないの・・・?」
ショウイチ「・・・。」
ユカリ「何とか・・・何とか言えよこのバカオヤジ!」
ショウイチ「・・・気は済んだか?」
ユカリ「・・・は?」
ショウイチ「お前の言う通り、リンはそんな事望んでいないのかもしれない。あいつを悲
しませることになるのかもしれない。・・・俺は所詮、あいつを守ると誓っておき
ながら、守れなかった男だ。憎まれようが、恨まれようが構わない。だが、あい
つには生きていてほしいんだ・・・!」
ユカリ「・・・お父さん・・・。」
ショウイチ「問答は終いだ。下がれユカリ。俺の道を阻むものは誰であろうと容赦はしな
    い。」
サクラ「待ってください!」

     ショウイチの前に立つサクラ。

サクラ「そういうことなら構いません。この命、喜んで捧げましょう。」
ユカリ「サクラ、何言って・・・!」
サクラ「私は、ユカリちゃんに会うまでずっと、何で生きてるんだろうって思って生きて
たの。何をやってもダメで、何も出来なくて・・・。でも、ユカリちゃんのおか
げで、私は初めて生きててよかったって、毎日が楽しいって思えるようになった
の・・・だから・・・。」
ユカリ「ダメだよ!そんなのお母さんも・・・私も望んでない!私は・・・これからもず
っとサクラと一緒にいたい!・・・一緒に・・・。」
サクラ「ユカリちゃん・・・私、ユカリちゃんに会えてよかった。私と友達になってくれ
    てありがとう・・・。」
ユカリ「嫌だ!そんなの嫌だ!絶対に・・・嫌だぁっ!」

     サクラを押しのけてショウイチに斬りかかるユカリ。
     受け止めるショウイチ。

仮面の男「やれやれ・・・わがままなお嬢さんだ。お父さんの願いも、親友の想いも、貴
女は踏みにじるというのですか?」
ユカリ「そうだよ!わがままでもいい!嫌われてもいい!私は嫌なの!お父さんがサクラ
を殺すところなんか見たくない!そんなの絶対に許さない!」
カオル(声)「ああ、そうだな。私も同感だ。」

     カオルが現れる。

カオル「ユカリ、よく頑張ったね。あとは私に任せなさい。」
ショウイチ「・・・カオル。」
カオル「ショウイチさん。貴方は私が止めます。」
ショウイチ「お前には、余計な言葉は不要なようだな。」
カオル「ええ。言葉で貴方が止まらないことくらい、十分わかっていますから。」

     舞台中央にカオルとショウイチを残し、他の面々は舞台後方に下がる。

カオル「聖剣バルムンクの勇者・ジークフリートよ!我に力を!」

     ショウイチが腰に差している二本の刀を抜く。

ショウイチ「武蔵!俺に力を貸せ!」
カオル「はぁぁぁぁっ!」
ショウイチ「うぉぉぉぉっ!」

     激しく戦う二人。
     戦いは苛烈さを増していく。

サクラ「今のは・・・?」
仮面の男「演術ですよ。君たちが行っている英雄召喚、その上級版・・・といったところ
です。」
ナツキ「嘘でしょ!?台詞の詠唱もしてなければ、英雄の人格も現れてないのに・・・!」
仮面の男「召喚のレベルが上がれば、台詞の詠唱無しで、その力のみを自分に宿すという
ことも自在にできるようになります。ただし、それが出来るのは演撃師団の師団
長クラスでも数人程度しかいませんがね。」
カオル「ぐぅっ・・・!」

     カオルを攻撃し、演装具・バルムンクを奪うショウイチ。

ショウイチ「借りるぜ。」
カオル「くっ!・・・ベオウルフ!」

     新たな聖剣を取り出し、斬りかかるカオル。

ショウイチ「遅えっ!」

     カオルの攻撃を弾くショウイチ。
     二本目の聖剣もショウイチに奪い取られてしまう。

ショウイチ「天下無双の剣豪・宮本武蔵が聖剣で二刀流・・・鬼に金棒ってのはこういうことを言うんだろうな。・・・どうする?まだやるか?」
カオル「・・・私の二つ名、お忘れですか?」
ショウイチ「『七聖剣』のカオル=ショウザン。」
カオル「そう・・・七人の聖剣の勇者を自在に召喚し、戦うのが私の戦法!私にはまだ五
本の聖剣と五人の勇者が共にある!」

     三本目の聖剣を取り出し、構えるカオル。

ショウイチ「ならば、残りの聖剣も勇者もすべて叩き折るのみ・・・!」

     ショウイチが攻撃を繰り出す。
     防戦一方のカオル。
    ショウイチの攻撃を捌き、渾身の一撃を放つカオル。

カオル「はぁぁぁっ!」

    聖剣二本がかりで受け止めるショウイチ。
     競り合う二人。

ショウイチ「見事だ・・・!俺の持ってる剣が聖剣じゃなきゃあ決まってた・・・!」
カオル「く・・・ぐぅぅぅぅっ!」
ショウイチ「これで・・・終いだぁっ!」

    カオルの全力の攻撃を弾き返し、そのまま全身全霊を込めた一撃を放つ
ショウイチ。
     それでもなお、倒れないカオル。

カオル「・・・まだ・・・まだ終われない・・・っ!」

     ショウイチに残りの力を振り絞り一撃を返すカオル。

ショウイチ「ぐ・・・っ!」

     カオルの攻撃を受けてよろめくショウイチ。
     膝をつく二人。
     お互いを睨みあう。。

サクラ「ユカリちゃん!大丈夫!?」

     真っ青な顔で震えているユカリ。

ナツキ「ユカ!?」
ユカリ「・・・どうして・・・。」

     ユカリの瞳から涙が零れ落ちる。

ユカリ「あの二人を見てると心が苦しくなる・・・胸が潰れてしまいそうになる・・・。」
ショウイチ「・・・カオル、いい加減諦めろ。お前は俺には勝てねぇ・・・。」
カオル「誰が・・・諦めるものか・・・っ!」
ショウイチ「無駄に命を捨てるな!テメェの命は何のためにある!王国に生きる、多くの
民の平和と、命を守るためだろうが!」
カオル「・・・私の命は・・・あの時、捨てました・・・リンさんを守れなかったあの時
    に・・・。」
ショウイチ「テメェはよくやった!団長というしがらみに囚われて動けなかった俺に代わ
ってお前は立場も、規則も、全てを投げうってお前は走ってくれた・・・!お前
がいなければ・・・俺はユカリも失うところだった・・・!」
カオル「でも!リンさんは守れなかった!貴方との約束も!そして・・・貴方の心も・・・。」

     ゆっくりと立ち上がるカオル。

カオル「私は・・・貴方になら殺されても構いません・・・。それは、貴方の大切なモノ
    を守れなかった私の罪への・・・罰です・・・!」
ショウイチ「・・・バカ野郎が!」

カオルを殴り飛ばすショウイチ。

ショウイチ「・・・お前が背負うことじゃねぇんだ・・・。お前は生きろ。生きて役目を
全うしろ。アイツの分まで・・・俺の分まで・・・。」

     ゆっくりとサクラの方へ向かうショウイチ。
     ショウイチの前に立ち塞がるユカリ。

ショウイチ「・・・どけ、ユカリ。」
ユカリ「・・・やっとわかった。この痛みは二人の心の痛み・・・。」
ショウイチ「・・・。」
ユカリ「お父さんは、サクラを殺すことも、お母さんを生き返らすことも望んでない・・・。
ただ、自分が罰を受けて死ぬことを望んでいる・・・そうなんでしょう?」
ショウイチ「・・・。」
ユカリ「・・・私、本当に馬鹿だ。こんなに身近にいる人たちの苦しみを、何にもわかっ
てなかった・・・。ううん、わかろうともしてなかった。二人は強いんだ、特別
なんだって。・・・そんなわけないのに。大切な人をなくして辛くなんかない人な
んていないのに・・・!」

     無言でユカリを殴り飛ばすショウイチ。

サクラ「ユカリちゃん!」
ナツキ「ユカ!」
ショウイチ「(ナツキに)お前さんは、王都に向かい救援を呼べ。元・第一師団長のショウ
イチ=シキベが乱心し姫をさらい、カグラ村に立て籠もっていると。・・・姫、行
きましょう。」
サクラ「・・・もうやめましょう。カオルさんと、ユカリちゃんの気持ち・・・伝わって
るんでしょう・・・?」
ショウイチ「・・・。」
ナツキ「貴方が死ねば、貴方はそれで気が済むのかもしれない。でも、二人はどうなるん
です!貴方の事を想っている、あの二人は!」
ショウイチ「・・・恨んでくれて構わない・・・。それも、俺の罪・・・。」
ナツキ「バッカじゃないの!アンタ、ホントにあの二人がアンタの事恨むと思ってるの!
違うでしょ!逆だよ!責めるんだよ!今のアンタみたいに、自分たちの事をずっ
と!ずっと・・・!」
サクラ「お願いです・・・!あの二人のために・・・生きてください!」
仮面の男「外野が口出しすることではありませんよ。」

     剣を抜き、ナツキとサクラを制止する仮面の男。

カオル「・・・団長!」
ショウイチ「・・・団長はお前だ、カオル。後は、頼んだぞ・・・。」

     サクラを連れて立ち去ろうとするショウイチ。

ユカリ「・・・待って・・・ください。」

     ショウイチを呼び止めるユカリ。
     起き上がるユカリ。
     一度立ち止まるも、構わず歩き出そうとするショウイチ。

ユカリ「お願いです。私の話を聞いてくれませんか?・・・ショウイチさん。」

     その言葉に驚き、振り返るショウイチ。
     ユカリの姿に、懐かしいものを感じる。

ショウイチ「リン・・・なのか?」
ユカリ「酷い人ですね。5年たったら自分の妻の事もわからなくなるんですか?」
ショウイチ「リン・・・リン・・・!」

     ユカリ(リン)を抱きしめるショウイチ。

ショウイチ「リン・・・俺は・・・俺は・・・!」
ユカリ(リン)「ショウイチさん、私は幸せでした。貴方に出会えて、貴方と一緒になれて、
そして、ユカリに出会えて・・・。本当に幸せでした。・・・ありがとう。」
ショウイチ「でも、俺はお前の未来を守れなかった!お前ともっとずっと一緒にいたかっ
た・・・!それなのに・・・!」
ユカリ(リン)「それは私も同じです。でも・・・人はいつか必ず死にます。人の命はいつ
消えるかわからない、儚いもの。だからこそ、いつ消えても後悔しないよう、一
日一日を、一瞬一瞬を、一生懸命生きるんです。ね、そう教えたわよね?カオル。」
カオル「はい・・・リン先生・・・!」
ユカリ(リン)「私は、あの時まで一生懸命生きた。私の想いを繋いでくれる人たちにも出
会えた。こんなに幸せなことはありません。」
ショウイチ「リン・・・。」
ユカリ(リン)「だからショウイチさん。貴方は貴方の人生を、目一杯生きてください。私
が大好きな、ショウイチさんのままで・・・。」

     ショウイチ、無言で頷く。

ユカリ(リン)「カオル・・・ユカリの事、ありがとうね。」
カオル「リン先生・・・私は・・・!」
ユカリ(リン)「これからも、ショウイチさんとユカリの事、よろしくね。」
カオル「はい!この命に替えても!」
ユカリ(リン)「ふふ・・・相変わらず大げさね。」
ショウイチ「・・・行くのか?」
ユカリ(リン)「はい。」
ショウイチ「・・・すまない。」
ユカリ(リン)「謝るのは私の方です。うっかり死んでしまったせいで、貴方の事、苦しめ
てしまって・・・。」
ショウイチ「うっかりって・・・お前なぁ・・・。」

     微笑みあう二人。

ユカリ(リン)「ショウイチさん、ありがとうございました。」
ショウイチ「リン・・・ありがとな。」
ユカリ(リン)「さようなら。」
ショウイチ「ああ・・・。」

     目を閉じるユカリ。
ユカリからリンの気配が消える。
倒れそうになるユカリを、しっかりと受け止めるショウイチ。

ショウイチ「・・・さようなら、リン。安らかに眠れ・・・。」
仮面の男「・・・何だ・・・?今のは・・・?なぜ?なぜ戯曲もなしに・・・!?ありえ
ない!ありえないぃぃぃぃぃっ!」

     取り乱す仮面の男。
     ユカリに剣を向ける。

仮面の男「その娘は危険だ!戯曲無しで、英雄でもない者の魂を呼ぶ!人間ごときの分際
    で!ここで殺す!絶対に!」
カオル「よそ見してると危ないですよ。」

     猛スピードで仮面の男に斬りかかるカオル。
     ほぼ同時にショウイチも仮面の男に一撃を繰り出す。
     攻撃をまともに食らう仮面の男。

ショウイチ「悪いな。お前の思い通りにはもう動かんよ。俺は、俺の道を生きる!」
仮面の男「・・・貴様の・・・意志だと?くくくくっ・・・・笑わせるな!神の手のひら
の上で弄ばれていることにも気づかぬ愚かなキャラクター風情が・・・!貴様ら
が、あの女のためにここで争い、死ぬことは定められていた運命なのだよ!5年
前からなぁっ!」
カオル「何だと・・・!どういうことだ!?」
仮面の男「5年もかけて作り上げた悲劇が・・・こんなことで・・・!」

     よろめきながらはける仮面の男。
     その姿は跡形もなく消えてしまう。

サクラ「消え・・・た・・・?」
ナツキ「どうなってんの・・・?」
ショウイチ「『幻影(ヴィジョン)』か・・・。」
カオル「おそらく。ですが、あれだけの分身を創り出せるとは・・・。」
ショウイチ「本体は相当なレベルの術士・・・か。・・・にしても、ひでぇ様だな。」
カオル「お互い様ですよ。それに・・・貴方がやったんでしょう。」
ショウイチ「・・・カオル。」
カオル「何も・・・言わないでください。私たちは、まだ生きてる。それでいいんですよ、
きっと。」
ユカリ「・・・う・・・うう・・・。」
サクラ「ユカリちゃん!」
ナツキ「ユカ!」
ユカリ「サクラ・・・ナツキさん・・・。」
カオル「ユカリ・・・!」

     ユカリを抱きしめるカオル。

ユカリ「カオルさん・・・ごめんなさい・・・私ずっと気づかなくて・・・。」
カオル「ユカリ・・・ばか・・・!」
ユカリ「カオルさん・・・?」
カオル「ありがとう・・・ありがとう・・・ユカリ・・・。」
ショウイチ「・・・よう、馬鹿娘。」
ユカリ「お父さん・・・うん、私・・・やっぱり馬鹿だっ・・・痛っ!」 
ショウイチ「そうやっていちいち人の言うこと真に受けてっから馬鹿って言われんだ。こ
の馬鹿娘が。そんなんじゃ向こうで母さんが心配するだろうが。」
ユカリ「・・・お母さんに、会えたんだね。」
ショウイチ「・・・ああ。」
ユカリ「・・・良かった。」

     ユカリの頭を優しくなでるショウイチ。

ショウイチ「・・・ありがとよ。」
ナツキ「そういえばユカ、どうやってお母さんを召喚したの?アイツの言ってたように戯
曲もないし・・・それにそもそもアンタ、演術は・・・。」
ユカリ「・・・私にも・・・わからない。でも・・・何とかしたいって・・・お母さんの
想いを二人に届けたいって・・・そう思ったら・・・胸の奥が熱くなって・・・
お母さんの声が聞こえた気がして・・・。」
カオル「演術にとって最も大事なことは、演じる相手の魂を感じること。それは・・・理
屈じゃない。」
ユカリ「魂・・・。」
サクラ「ユカリちゃん・・・出来たね、演術。」
ユカリ「・・・うん。」
サクラ「私は信じてたよ。ユカリちゃんなら絶対にできるって。」
ユカリ「サクラ・・・ありがとう。」
ナツキ「ところで、ショウイチさん、カオルさん。私たちは王都に向かい、姫の保護をお
願いしようと思うのですが・・・。」
カオル「済まない。私は急ぎ養成学校に戻る。・・・マクベスをミスズ達に任せてきている
んだ。放っておくわけには・・・。」
ユカリ「私が戻ります。」
カオル・ショウイチ・ナツキ・サクラ「!?」
ショウイチ「今度もさっきみたいな奇跡が起こると思ってるなら大間違いだぞ。」
ユカリ「お父さん、あの時の質問の答え、今ならちゃんと言える。・・・私が演術士になりたかったのは・・・みんなの笑顔を守りたいから。何もできないからって、何もしないのはもう嫌だよ!」
サクラ「ユカリちゃん・・・。」
ユカリ「何もできないかもしれない・・・でも、何かできるかもしれない!それに、私は
一人じゃない。向こうにはトウマがいる。セイヤだってまだきっと戦ってる。、ミ
スズ先生も、ウィルさんも。トウマが戦ってるなら、ユキもきっと来る。シュウ
が仲間に戻ってくればシュウの力も借りられる。そして・・・私の中には、カオ
ルさんと、お父さんと、お母さんもいる。・・・力が及ばないなら、知恵でカバー
すればいい。一人で勝てないなら、仲間の力を借りればいい。大事なのは・・・!」
カオル「大事なのは諦めない事、そして、そのために行動し続けること。・・・そして、自
分には出来ると信じぬくこと。私が、貴方に伝えた言葉。そして・・・ショウイ
チさんと、リンさんに教わった言葉。」
ユカリ「カオルさん。私、今度こそちゃんと戦います。演術が使えなくても、演術士でな
くても、私自身の力で、みんなの笑顔を守るために。」
カオル「だったら、これを持っていきなさい。」

     カオル、一冊の古ぼけた戯曲をユカリに差し出す。

ユカリ「これは・・・。」
カオル「5年前に渡した時はお守り替わりだった。でも、今は違う。確信してる。この戯
曲の英雄を、今のあなたならきっと召喚出来る。『七聖剣』最強の英雄、【円卓の
騎士王】アーサーを・・・!」
ユカリ「・・・ありがとうございます。私、やってみます!」

     ユカリ、カオルから戯曲を受け取る。
     その重さをしっかりと受け止める。

カオル「それと・・・これも。」

     カオル、一振りの剣をユカリに渡す。

ユカリ「演装具・聖剣エクスカリバー・・・。」
カオル「必ず、生きて・・・勝って帰ってきなさい。」
ユカリ「はい!」
ショウイチ「待て、ユカリ!」

     行こうとするユカリを止めるショウイチ。
     振り返るユカリ。
     ショウイチが一冊の戯曲をユカリに投げ渡す。

ユカリ「これ・・・!?」
ショウイチ「宮本武蔵の戯曲だ。お前に使いこなせるとは思わんが、何かの役には立つかもしれん。・・・持っていけ。」
ユカリ「お父さん・・・。」
ショウイチ「俺を一人にするなよ。馬鹿娘。」
ナツキ「ユカ!・・・がんばれ!」
ユカリ「ナツキさん・・・ナツキさんも、ちゃんと一緒だから!」
サクラ「ユカリちゃん、絶対・・・絶対また会おうね!ユカリちゃんなら大丈夫!私、信じてるから・・・!私も・・・!」
ユカリ「うん!サクラもちゃんとここにいるよ!サクラがずっと信じてくれたから、私は今ここにいる!戦える!サクラが信じてくれるなら、私、絶対に負けない・・・!みんな・・・行ってきます!」

     ユカリ、走り去る。
     暗転。

第十四幕
     東方地区演術士養成学校・練武場。
     照明が付くと、トウマとシュウが戦っている。
     シュウの強さに終始押されっぱなしのトウマ。
     ついに倒れる。

シュウ「あのさー・・・そんなんで東征龍公とか、マジ無理だと思うんですけど、それで
    もまだそんな寝言ほざきますー?」
トウマ「ああ・・・諦めんさ。俺には取り戻さなければならないものがあるからな・・・!」
シュウ「・・・気に入らないなー・・・!」

     トウマを蹴り飛ばすシュウ。

シュウ「・・・君、今の状況わかってるー?絶体絶命ってやつだよ!もっと後悔しろよ!
絶望しろよ!なぁ!?」
トウマ「・・・後悔も、絶望も・・・数えきれないくらいしてきたさ・・・だからもう飽
きたんだよ。そんなことしたって何も変わらないからな!」
シュウ「・・・はあ?」
トウマ「力が及ばないなら、知恵でカバーすればいい。一人で勝てないなら、仲間の力を
借りればいい。大事なのは諦めない事!」
シュウ「・・・マジ寒いよ、君。それで何が変わる?知恵でカバーしようが勝てないから
やられてるんでしょー?仲間の力?君は今一人なんだよ!仲間なんかどこに
も・・・!」
ユキ(声)「ここにいる!」

     ユキがシュウに斬りかかる。
     攻撃を受けるシュウ。

シュウ「ユキ!どうしてここに・・・!?」
ユキ 「若、お待たせしました。」
トウマ「待ってなどいないさ。丁度いい所だ。」
ユキ 「私が時間を稼ぎます。」
トウマ「頼む。」

     ホルダーから戯曲を取り出すトウマ。

シュウ「させないよ!」
トウマ「英雄召喚!」

     台詞の詠唱を始めるトウマ。
     シュウが阻止しようとするがユキに阻まれる。

シュウ「・・・わっかんないなぁ!何でそんな奴を助ける?僕たち兄妹を引き裂いた元凶
だよ!」
ユキ 「・・・やはり、兄上はそのことを気に病んでいらしたのですね。」
シュウ「当然だろう!10年前、僕はあいつの要望に応えて、手加減なしで手合わせをし
    た!その結果・・・あいつはケガをした!そのせいで・・・そのせいでカゲムラ
    家に反逆の疑いがかけられた・・・!たかが子供同士の手合わせでケガをしたっ
てだけで・・・!」
ユキ 「その疑いを晴らすため、私は人質として、シノノメの家に差し出された・・・。」
シュウ「ユキ・・・君を絶対に取り戻す。もうすぐなんだ・・・!もうすぐこの国は終る。その混乱に乗じて、あいつも、シノノメの人間も全員滅ぼしてやるのさ・・・!そうすれば君は、また僕たちと一緒に暮らせる!」
トウマ「残念だが、その願いは叶わない・・・!」
シュウ「何・・・!?」
トウマ「聞け・・・我が名は『【孝】の八犬士・犬塚信乃』!」

     トウマ、信乃の召喚を終えてシュウに攻撃する。
     怒涛の連続攻撃でシュウを追い込んでいく。

トウマ(信乃)「形勢逆転、だな。私が出てきた以上、貴公に勝ち目はない。」
シュウ「それはどーかなー?」

     シュウ、ホルダーから戯曲を取り出す。

ユキ 「させない・・・!」

     ユキ、シュウを攻撃するも躱される。
     同時にトウマ(信乃)の斬撃が来る。
     トウマ(信乃)の攻撃を受けるシュウ。

トウマ(信乃)「召喚などさせると思うか・・・!」
シュウ「でも、出来ちゃうんだなー。・・・行くよ、半蔵。」

     シュウの雰囲気が変わる。
     トウマ(信乃)とユキを攻撃で吹っ飛ばす。
     戯曲をホルダーにしまうシュウ。

トウマ(信乃)「馬鹿な・・・!台詞の詠唱無しに召喚・・・だと!?」
シュウ(半蔵)「伊賀忍軍頭領、服部半蔵・・・参る!」

     トウマ(信乃)VSシュウ(半蔵)
     ギリギリの戦いを繰り広げる二人。
     徐々に押され始めるトウマ(信乃)。
     ついには膝を付く。

シュウ(半蔵)「悲しいな、犬塚信乃。貴様がいくら拙者と互角の力を持っていようとも、貴様の主の身体はもはやボロボロ・・・。それでは存分に力も発揮できまい。」
トウマ「・・・このくらい・・・丁度いいハンデだ・・・!」
シュウ(半蔵)「・・・演じきれなくなっているぞ、トウマ=シノノメ。」
トウマ「そんな・・・ことは・・・ない!」
シュウ(半蔵)「無様な。」

     刀を振り下ろすシュウ(半蔵)。
     辛うじて避けるトウマ。

シュウ(半蔵)「まだ足搔くか・・・貴様も武家の生まれなら、潔く最期を受け入れろ!」
トウマ「例えみじめであろうと、格好悪かろうと、こんなところで死ねるか!」
シュウ(半蔵)「笑わせるな。そんな気持ち一つで変わるほど、現実は甘くなどない!」
トウマ「・・・それは半蔵、貴方の言葉か?それとも・・・お前の言葉か、シュウ!」
シュウ「!?」

     一瞬出来た隙をついて、シュウ(半蔵)から逃れるトウマ。

トウマ「ユキ!まだか!」
ユキ 「もう少し・・・です・・・!」
シュウ「ユキ?そういえば今まで一体何を・・・!?」

     ユキを見るシュウ。
     その手には一冊の戯曲が。

シュウ「・・・そういうことか!」

     ユキを攻撃しようとするシュウ。
     それを止めるトウマ。

シュウ「トーマ君・・・君は最初からそのつもりで・・・!」
トウマ「言ったろう、一人で勝てないなら、仲間の力を借りればいい、と!」
ユキ 「行きます!若!」
トウマ「行け!ユキ!」
ユキ 「聞け!我が名は『真田十勇士・猿飛佐助』!」

     ホルダーに戯曲をしまい、刀を抜くユキ(佐助)

ユキ(佐助)「いっくぞぉーーーーー!」
シュウ「半蔵!もう一度だ!」

     とっさに半蔵を呼び出し、応戦するシュウ。

トウマ「佐助殿、どの位行けそうです?」
ユキ(佐助)「うーん・・・わっかんないけど、あんま長くは続かないよ。ユキちゃん演術あんま得意じゃないからさ。台詞の詠唱に時間かかるし、召喚した後も再現力は高いんだけど、持続力は低いからね・・・。」
トウマ「そうですか。」
ユキ(佐助)「あ、でも前よりは長くいけるかも。みーちゃん先生に感謝だね。こりゃ。」
トウマ「佐助殿もそう呼んでるんですね・・・。」
ユキ(佐助)「じゃ、いきますか。トーマ!」
トウマ「承知!」

     トウマ・ユキ(佐助)VSシュウ(半蔵)
     二人がかりで何とか食らいつくトウマ・ユキ(佐助)コンビ。
     激しい攻防の末、ユキ(佐助)の渾身の一撃がシュウ(半蔵)に決まる。

ユキ(佐助)「これで・・・決まりだぁっ!」
シュウ(半蔵)「まだだ・・・ここで終われるかぁっ!」

     カウンターでユキ(佐助)を攻撃するシュウ(半蔵)。
     倒れるユキ(佐助)。
     半蔵の力を使い果たし、元に戻るシュウ。

シュウ「・・・まさかここまで手こずるとはねー・・・褒めてあげるよ。」
トウマ「シュウ・・・。」
シュウ「でも、ここからどうする?確かに僕はもう半蔵は呼べない。けど、僕自身として
はまだ戦える。満身創痍の君と僕では勝負はもう見えたね。」
トウマ「・・・そうかもな。」
シュウ「さよなら、若様。」

     トウマに斬撃を繰り出すシュウ。
     それを止めるトウマ。

トウマ「ええ・・・これで終わりですよ・・・シュウ殿。」
シュウ「トーマ君・・・じゃない!?」
トウマ(信乃)「はぁぁぁぁぁっ!」

     シュウの剣を弾き返し、渾身の斬撃を放つトウマ(信乃).
     シュウがついに倒れる。

トウマ(信乃)「ご安心を、峰打ちです。」

     納刀するトウマ(信乃)。
雰囲気が戻る。

シュウ「いつの間に・・・台詞無しで召喚出来るように・・・?」
トウマ「出来んよ。今の俺にそんな高度なことはな。」
シュウ「じゃあ、どうやって・・・!」
トウマ「信乃に演技をしてもらった。お前の油断を誘うために、俺を演じてもらっていた
のさ。」
シュウ「は?・・・何それ・・・?」
ユキ 「・・・若・・・。」
トウマ「ユキ!大丈夫か?」
ユキ 「・・・大丈夫です。勝ったのですか・・・?」
シュウ「負けたよ!負―け!負―けーまーしーたー!」
トウマ「シュウ・・・。」
シュウ「行きなよ。僕はもう、みんなの邪魔はしない。つーか、こんなんじゃしたくても
出来ないしねー。」
トウマ「・・・ユキ、済まんが・・・。」
ユキ 「はい。兄上の事はお任せください。私も・・・兄上に話したいことがあります。」
トウマ「頼んだ。」
ユキ 「はい。若。」
トウマ「・・・若はやめろと言ってるだろう。」

     トウマ、去る。

ユキ 「兄上と同じように、若も悔やんでいるのです。10年前のあの時の事を。」
シュウ「え・・・?」
ユキ 「私がシノノメ家に引き取られた日、若は泣きながら私に謝りました『自分が弱い
から、だからシュウも、ユキも傷つけた。本当にごめんなさい。』・・・そう何度
も床に頭を打ち付けながら・・・。」
シュウ「・・・。」
ユキ 「若は、友として、兄上と対等でいたかった。だから、兄上が主従関係に遠慮して、
手合わせ稽古の時にわざと負けるのが気に入らなかったそうです。だから、本気
で勝負してほしかった・・・でも、結果としてそれが裏目に出てしまった・・・。」
シュウ「どーでもいいけどそんなこと。若様が僕らの事どー思おうが、シノノメとカゲム
ラの関係は変わらない。彼と僕が友になることなんて・・・ありえない。」
ユキ 「兄上、若がなぜ、東征龍公になりたいかご存知ですか?」
シュウ「知らないよ。キョーミないし・・・。」
ユキ 「兄上と私と、友達になるためです。」
シュウ「・・・は?」
ユキ 「東征龍公になれば、殿が隠居をする前であっても、その実績を盾に家督を譲ることを迫ることが出来る。そうすれば、シノノメ家の当主として、カゲムラ家との主従関係を解消することが出来る・・・。」
シュウ「そしたら晴れて僕らはお友達・・・か。」
ユキ 「はい。」
シュウ「・・・バッカだねー・・・そううまくいくと思ってんのー?これだから温室育ちのお坊ちゃんは・・・。」
ユキ 「確かに、うまくいくとは私も思えません。ですが、若はその目標のために、ご自身の全てを賭けて努力していらっしゃる・・・。そのお姿を見ると、信じたくなってくるのです。きっと、その日が来ると。」
シュウ「・・・ふーん・・・。」
ユキ 「兄上、どうか兄上も力を貸してください!本当は兄上も望んでいるのでしょう?昔のように、三人肩を並べて笑いあえる日が来ることを・・・。」
シュウ「夢だよ・・・そんなものは、遠い昔に見た夢。」
ユキ 「夢は・・・叶えるものです。兄上。」
シュウ「・・・君の気持ちはよーく分かった。だったら、君のするべきことがあるはずじゃなーい?・・・若様を支えてあげなよ。ここで死なせるわけにはいかない、でしょー?」
ユキ 「兄上・・・。」
シュウ「僕は大丈夫―。じゃ、頼んだよ。ユキ。」

     シュウ、去る。
     ユキ、シュウの去った方を見つめる。
     意を決してトウマの去った方を見る。
     トウマの後を追う。

第十五幕
     東方地区演術士養成学校・校庭。
     セイヤ(マクベス)と戦うミスズ、ウィル。

トウマ(声)「先生!ウィル副団長!」

     トウマが駆け込んでくる。

ミスズ「トーマ、シュウは?」
トウマ「まぁ・・・何とか・・・。」
ミスズ「何とか?何とかって何?どーゆーこと?」
トウマ「こういう非常時にもそういうノリで来るのやめろ!」
ウィル「本当ですよ。・・・イライラする。」
ミスズ「ご、ごめんウィル・・・。ウィル?」
ウィル「先輩、すみません・・・事情が変わりました。」
ミスズ「え?」

     ミスズを斬り捨てるウィル。
     何が起きたかわからずに崩れ落ちるミスズ。

ウィル「ショウイチさんと団長が手負いの今、一番厄介なのが貴女だ。ここで消えてもら
いますよ、ミスズ先輩。」
トウマ「先生!・・・あんた、一体何を!?」
ウィル「黙っててくれないかな。君たち訓練生のおかげでいろいろと予定が狂ってしまっ
たんだ。こうなったらもう、僕自身で修正を加えるしかない。」
トウマ「・・・あんたが黒幕だった・・・ってことか。」
ウィル「マクベス、遊びは終わりだ。このゴミを始末しろ。」
セイヤ(マクベス)「だから言ったじゃねぇか、こんな回りくどいことなんざしなくても、
最初から俺様一人で十分だってなぁ!」

     セイヤ(マクベス)の強烈な一撃。
     吹っ飛ぶトウマ。
     戯曲を取り出すトウマ。

セイヤ(マクベス)「オイオイ正気か?貴様が台詞の詠唱を終えるのを待つほど、今の俺は
    優しくねぇよ。」
トウマ「時間はいらんさ、そういう術があると、教えてもらったからな!行くぞ、信乃!」

     台詞無しで信乃を召喚するトウマ。
     戯曲をしまい、村雨丸を抜くトウマ(信乃)。

ウィル「・・・全く、君といい、ユカリ君といい・・・予想以上の力を見せてくれる。第
一師団副団長の立場からすると喜ばしいことなんだろうけど・・・今はただ目障
りなだけだ・・・。マクベス!」

     トウマ(信乃)に攻撃するセイヤ(マクベス)。
     激しい戦いが繰り広げられる。

セイヤ(マクベス)「・・・その程度か。あくびが出るぜ!」
ユキ(佐助)「じゃあ、そのあくび、オイラが止めてやるよっ!」

     ユキ(佐助)が出てきて戦いに加わる。

セイヤ(マクベス)「ちょろちょろと・・・小賢しい!」

     トウマ(信乃)とユキ(佐助)が見事な連携でセイヤ(マクベス)を翻弄する。
     だが、マクベスに決定打を与えるには至らない。

ユキ(佐助)「・・・堅いなぁ・・・どうやったら倒れんのあいつ?」
トウマ(信乃)「佐助殿、時間は・・・?」
ユキ(佐助)「ちょーっとまずいかも・・・。」
トウマ(信乃)「では・・・一気に決めるとしましょう!」
ユキ(佐助)「おっけー!いっくぜぇー!」

     二人の全力の攻撃が決まる。
     ・・・が、セイヤ(マクベス)は微動だにしない。

セイヤ(マクベス)「こんなもんで攻撃してるつもりか?攻撃ってのはな・・・こうやるん
だ!」

     セイヤ(マクベス)の攻撃をもろに食らい倒れる二人。
     召喚が解ける。

セイヤ(マクベス)「お、まだ生きてんのか。意外にしぶといな。」

     ユカリが駆け込んでくる。

ユカリ「トウマ!ユキ!大丈夫?」
トウマ「・・・お前・・・どうして・・・?」
ユカリ「どうしてって、決まってるじゃん!セイヤを取り戻すためだよ!」
トウマ「そうか・・・ようやくお前らしくなったようだな!」
ウィル「ようこそ。お待ちしてましたよ、ユカリ=シキベさん。」
ユカリ「ウィルさん・・・?」
トウマ「奴がこの事件の黒幕だ。」
ユカリ「!?」
ウィル「貴女のせいで、僕が創り上げた最高の悲劇が台無しだ・・・。許さない、貴女だ
けは絶対に!」
ユカリ「許さないのはこっちです。貴方のせいで、大勢の人が苦しみ、傷ついた!その罪
    を償ってもらいます!」
ウィル「貴様ごとき虫けらが、神の行為を罪呼ばわりし、あまつさえ償えと?図に乗るな
よ!・・・マクベス!まずはこの女の仲間を八つ裂きにし、絶望感をたっぷり味
わわせてからこの女を始末しろ!」
セイヤ(マクベス)「だそうだ。いい声を上げて死んでくれよ・・・!」

      セイヤ(マクベス)が攻撃する。
      避ける三人。

ユカリ「トウマ、ユキ、ごめん!時間を稼いで!」
ユキ 「時間?」
ユカリ「今から英雄を召喚する!」
トウマ「やれるんだな?」
ユカリ「任せて!」
トウマ「わかった。行くぞ、ユキ!」
ユキ 「若の期待、裏切るなよ!」

     セイヤ(マクベス)に向かっていく二人。
     ユカリ、戯曲をホルダーから取り出し、召喚の構えを取る。

ユカリ「・・・英雄召喚!我が声を以って汝の魂を導かん・・・我が身に宿り、其の力を
示せ・・・!」

     暗転。

第十六幕
     東方地区演術士養成学校付近の王都に続く街道。
     照明がつくと、ハルカ、ナツキ、カオル、ショウイチがいる。

ナツキ「・・・嘘です!ウィルが・・・仮面の男の正体だなんて!」
ショウイチ「俺もそう思いてぇ・・・だが、そう考えれば全て辻褄が合う。」
ナツキ「カオルさん!」
カオル「・・・すまないナツキ君。私もウィルの事は信じたいが・・・不審な点が多すぎ
る。」
ナツキ「・・・そんな・・・!」
サクラ「ナツ姉・・・。」
ショウイチ「向こうにはまだミスズがいる。信じるしかねぇか・・・。」
カオル「・・・はい。」
ショウイチ「そういえばよ、お前、俺と戦ってる時にアーサーを何故呼ばなかった?武蔵
に対抗するならアーサーを呼ぶべきだったと思うが・・・?」
カオル「呼びたくても、呼べなかったんです。・・・だって、あの戯曲の中にはアーサーの
魂はいなかったから・・・。」
サクラ「え!?じゃあ、ユカリちゃんの持ってる戯曲じゃ英雄は召喚出来ないんじゃ・・・!」
カオル「大丈夫です。ユカリは絶対に英雄を召喚出来ます。」
ショウイチ「まさか・・・。」
カオル「はい。アーサー王の魂は、ユカリの中にいます。きっと、ずっと前から。」
ショウイチ「・・・成程な。そういうことか。」
サクラ「何が・・・ですか・・・?」
カオル「姫、ユカリが今まで演術を使えなかったのはユカリのせいじゃない。おそらく、
彼女の中に宿ってしまったアーサーの魂が、他の英雄の魂をユカリの中に入って
こないようにしてたのでしょう。」
ショウイチ「バカ真面目でクソ律儀なあいつの事だ。あの戯曲で英雄召喚をするのは、ち
ゃんと演術が出来るようになってから・・・とか考えて、まだアーサーの召
喚は試したことがないんだろうな。」
サクラ「でも、アーサー王の魂はいつの間にユカリちゃんに・・・。」
カオル「おそらく、私が戯曲を渡してすぐではないかと。きっと魂をその身に宿すことは
出来たけれど、その力を表現することは出来なかったのでしょう。」
ショウイチ「そっからずーっとあいつの中にいたってことか。いつか呼び出される日が来
ることを待ちわびながら・・・。」
ナツキ「あー!やっぱりもう無理!ごめんサク、私行く!」
サクラ「ナツ姉!?行くってどこに?」
ナツキ「学校!」
サクラ「え!?」
ナツキ「私の目で事実を確かめたいの!本当にウィルが仮面の男なのか、もしそうだとし
たら、なんでこんなことしたのか!」
ショウイチ「お、おいお前・・・!」
ナツキ「ショウイチさん、カオル団長、すいません!サクの事お願いします!」
サクラ「待って!」
ナツキ「止めても無駄だよ!何があっても私・・・!」
サクラ「私も行く!」
ショウイチ「オイオイ・・・!」
カオル「姫、それは・・・!」
サクラ「わかってます。私の立場を考えれば、王都に行くべきなのは。でも・・・本当は
そんなの嫌なんです!私は、まだサクラ=エイタニなんです!」
ナツキ「サク・・・。」
サクラ「止めても無駄だよ、ナツ姉。」
ナツキ「誰が。・・・行こう。」
サクラ「うん!」
ショウイチ「待てよお嬢さん方。そういうことなら俺らも行くぜ。」
カオル「ですね。私たちだけで王都に行ったところでしょうがないですし。」
サクラ「・・・でも、お二人とも怪我が・・・。」
ショウイチ「馬鹿にしてもらっちゃ困るねぇ。これでもアンタら二人よりはずっと強えよ。」
カオル「そうと決まれば、急ぎましょう!」

     学校に向かう4人。
     暗転。

第十七幕
     場所は戻って東方地区演術士養成学校・校庭。
     トウマ・ユキVSセイヤ(マクベス)
     圧倒的にトウマ・ユキが不利。
     意地で食らいつくトウマとユキ。

セイヤ(マクベス)「しつけぇよ!いい加減・・・くたばれぇっ!」
ユキ 「若!」

     トウマをかばってセイヤ(マクベス)の攻撃を食らうユキ。

トウマ「ユキ!」
セイヤ(マクベス)「次はテメェだ!」
ユカリ「待ちなさい!」

     セイヤ(マクベス)を制するユカリ。

ユカリ「トウマ、ありがとう。後は私に任せて。」
トウマ「散々待たせやがって・・・後は・・・頼んだ・・・ぞ・・・。」

     力尽きて倒れるトウマ。

ユカリ「マクベス王、これ以上、セイヤの身体で好き勝手はさせない。セイヤを返しても
らいます。」
セイヤ(マクベス)「でかい口叩くなよ子娘風情が・・・!テメェに何ができる!」
ユカリ「貴方を、倒します。」
セイヤ(マクベス)「ほざけぇっ!」

     怒りに任せて強烈な一撃を放つセイヤ(マクベス)
     攻撃を躱し、鞘からエクスカリバーを抜くユカリ。

ユカリ「はぁぁぁぁぁっ!」

     閃光一閃、セイヤ(マクベス)が倒れる。

セイヤ(マクベス)「・・・てめぇ・・・何者だ・・・!?」
ユカリ「聞け・・・我が名は『【円卓の騎士王】アーサー』!」

     ユカリの雰囲気が、アーサーのものに完全に変わる。
     ユカリ(アーサー)がウィルの方を向く。

ユカリ(アーサー)「5年振りだな。久しいな、ウィル」
ウィル「アーサー王もお変わりないようで・・・。」
ユカリ(アーサー)「何故、こんなマネをした。ショウイチもミスズもカオルも、貴公の事
を信頼していた。何故皆を裏切るようなことを・・・!」
ウィル「僕は初めからこうするつもりだった。すべて予定通りです。・・・それに、ちゃあんと伏線は張っておきましたよ。」

     ウィル、ホルダーから一冊の戯曲を取り出す。

ウィル「僕が愛用している戯曲です。英雄の名前、憶えていますか?」
ユカリ(アーサー)「・・・ランスロット。」
ウィル「そう、【湖の騎士】ランスロット。円卓の騎士の一人であり、貴方の右腕ともいう
べき騎士、そして・・・貴方を裏切った騎士でもある。僕は、カオルさんが貴方
をよく召喚すると聞き、あえてこの戯曲を選んでいたのです。」
ユカリ(アーサー)「成程な。最後には自分も敵に回る・・・そういうメッセージだったと
いうことか。」
ウィル「ヒントがある方が、物語はより面白さを増しますからね。話はここまでです。立
て、マクベス。」
セイヤ(マクベス)「・・・チッ。やれやれ、人使いの荒い作者様だな、オイ!」

     セイヤ(マクベス)めんどくさそうに立ち上がる。
     その間に、倒れているミスズのところに行くユカリ(アーサー)。
     ミスズをエクスカリバーでつつくユカリ(アーサー)

ミスズ「痛い!もう、誰!?何すんの!?」
ユカリ(アーサー)「ようやく起きたか。」
ミスズ「ユカリ?・・・じゃない?え?まさか?え、何で?」
ユカリ(アーサー)「そんなことよりミスズ、あの二人を頼む。」
ミスズ「うわぁ!トーマ!ユキ!大丈夫?えらいこっちゃ!」
ユカリ(アーサー)「・・・しらじらしい。全部見ていて知っているのだろう?倒れながら
    も起死回生のチャンスを作るために、息を殺してタイミングを窺っていた。お前
はそういう奴だ。」
ミスズ「てへッ☆」
ウィル「・・・全く、かわいげのない人ですよ。不意打ちにもしっかり対応して致命傷は
避けているんですから。」
ミスズ「バレてた?」
ウィル「何年コンビやってたと思ってるんです。」
ミスズ「そうだね。・・・ねぇウィル・・・。」
ユカリ(アーサー)「済まんが、話は後にしてくれ。先に二人を。」
トウマ「・・・俺は・・・大丈夫だ・・・。ユキを・・・・!」
ミスズ「わかった!先生にまっかせなさい!」

     ユキを抱えてはけるミスズ。

セイヤ(マクベス)「どうやら、テメェは他の連中よりは出来るようだな。」
ユカリ(アーサー)「余は王の中の王だからな。貴公の様なまがい物の王とは訳が違う。」
セイヤ(マクベス)「そうやって図に乗ってる奴を地べたに這いつくばらせるのが俺は大好
きでなぁ!楽しみだぜ・・・!」
ユカリ(アーサー)「余も楽しみだ。共に戦えるこの瞬間をどれだけ待ち望んでいたこと
か。・・・ようやく余の名前を呼んでくれたな、ユカリよ!」

     エクスカリバーを構えるユカリ(アーサー)。
     ユカリ(アーサー)VSセイヤ(マクベス)
     激しい戦いが繰り広げられる。
     ややユカリ(アーサー)が優勢。
     そこに、サクラ、ナツキ、カオル、ショウイチが駆け付ける。

ナツキ「あれが・・・ユカリ・・・?」
サクラ「トーマ君、大丈夫?」
トウマ「・・・悔しいな。」
サクラ「え?」
トウマ「追いついた、追い越したと思ったら、また前に立ってやがる・・・。」
サクラ「うん。すごいよね・・・ユカリちゃん。」
カオル「リンさん、見ていますか・・・。ユカリが・・・アーサーを・・・。」
ショウイチ「見せてみろ馬鹿娘。お前の想いの強さを・・・その力を!」
トウマ・サクラ・ナツキ「行けー!」
ユカリ(アーサー)「うおぉぉぉぉぉっ!」

     ユカリ(アーサー)の最後の一撃が決まる。
     倒れるセイヤ(マクベス)

ユカリ(アーサー)「マクベスは倒れた。ウィル、今度は貴公が余と戦うか?」
ナツキ「待って!・・・彼と、話をさせてください・・・。」
ウィル「・・・ナツキ。」
ナツキ「ウィル・・・私ね、戯曲作家になることにしたんだ。」
ウィル「・・・。」
ナツキ「高校卒業までずっと貴方と一緒にいて、貴方から色んな物語を教えてもらううち
    に、私ももっとたくさんの世界を見てみたいって、多くの人に伝えたいって、そ
う思ったの・・・。ウィル、教えてくれたよね。世界は一つじゃない。人の数だ
け、想いの数だけ世界はあるって。」
ウィル「・・・。」
ナツキ「演術は・・・失われてしまった過去の『世界』と今の『世界』を繋ぐための技術
だって、戯曲はそのための扉と鍵なんだって。その言葉がずっと私の心から離れ
なかった。貴方が第一演撃師団の副団長になったって聞いて、きっと貴方はあの
頃と同じようにたくさんの世界を繋げようとしてるんだと思って・・・そんな貴
方の力になりたくて・・・私は・・・!」
ウィル「まだそんな夢物語を信じているのかい?いい加減大人になった方がいいよ、ナツ
    キ。」
ナツキ「・・・え?」
ウィル「人はどうしようもなく愚かな生き物だ。結局どんな技術も人を傷つけることにし
か使わない、使えない。演術もそうだ。英雄とは戦いに生きた者だけを指すのか?
多くの民の幸せのために、力なくとも知恵を尽くした者は英雄ではないのか?」
サクラ「それは・・・。」
ウィル「かつて私は、数多くの戯曲を、演術と共にこの国にもたらした!まだ王国はなく、
人々は争いに明け暮れ、人々は死の恐怖に常におびえていた時代だ。演術が、人々
を守る剣となり、盾となり、恵みをもたらす太陽となり、雨となることを願った!
だが、結果どうだ!結局演術は奪い合いの・・・殺し合いの道具でしかない!人
は・・・どこまで行っても過去からは何も学ばない・・・。世界は・・・繋がら
ない!」
サクラ「ウィルさん・・・貴方は一体・・・?」
ウィル「私は・・・ウィリアム=シェイクスピア。伝説の戯曲作家の名と意志を継ぐ者に
して演術の創作者なり。」
ショウイチ「何だと!?」
カオル「貴方が・・・シェイクスピア・・・!?」
ナツキ「ウィル・・・何を言って・・・?」
ウィル「貴様ら人間がいつまでも変わらないのであれば、私が貴様らの筋書きを全て決め
てやる・・・。私が神となり、貴様らは神の描く物語の登場人物となる。逆らう
ことは許さない。」
ユカリ(アーサー)「ウィル、貴公の思い通りにはさせん!」

     ウィル、戯曲を取り出し、剣を抜く。

ユカリ(アーサー)「召喚などさせるものか!」

     ウィルに攻撃するユカリ(アーサー)。
     それを受け止めるウィル。

ウィル「・・・かかりましたね。」
ユカリ(アーサー)「何?」
サクラ「ユカリちゃん後ろ!」

     ユカリ(アーサー)が振り返る。
     セイヤ(マクベス)が立ち上がり攻撃を仕掛けていた。
     セイヤ(マクベス)の攻撃を食らってしまうユカリ(アーサー)。

ユカリ(アーサー)「ぐ・・・っ!」
サクラ「ユカリちゃん!」
トウマ「あいつ・・・まだ!?」
ナツキ「魔女の・・・予言・・・。」
ショウイチ「何?」
ウィル「そう、魔女の予言にマクベスは守られている・・・『女から生まれたものにマクベ
スは倒せない』。」
カオル「何だと!?それでは・・・!」
ウィル「そう!いかにアーサー王が強かろうが、女から生まれている英雄である限り、こ
の戦いを終わらせることは不可能!終わり方があるとすればただ一つ!貴方達の
『全滅』です!」

     さらに襲い掛かるセイヤ(マクベス)。

セイヤ(マクベス)「ようやく王になれたんだ・・・!主をこの手で討ち!血塗られた道を
選び!己の安らかなる眠りを殺してまで手にした王冠を・・・!失ってたまるか!
俺は・・・王だぁっ!」
ユカリ(アーサー)「くっ!」
ショウイチ「カオル!」
カオル「はい!」

     ユカリ(アーサー)に狂ったように攻撃を仕掛けるセイヤ(マクベス)。
     ショウイチとカオルも戦いに加わる。

セイヤ(マクベス)「邪魔すんな!・・・王になれば、アイツと釣り合える・・・!この力
があれば、アイツに負けねぇ!俺の望むもんが全部手に入るんだ!」
トウマ「なに・・・?」
サクラ「今の言葉・・・セイヤ!?」
トウマ「マクベスが弱ってきている影響で、セイヤが帰って来てるのか・・・!?」
サクラ「ナツ姉!何かない?何か・・・マクベスを倒せる方法!」
ナツキ「・・・ある。」
サクラ「何!?」
ナツキ「孫悟空・・・孫悟空ならきっと勝てる。」
トウマ「たしか孫悟空は岩から生まれた妖怪。であれば魔女の予言には当てはまらな
い・・・!」
サクラ「それだよ!よっし、じゃあ孫悟空を召喚しよう!セイヤ!」
ナツキ「・・・。」
トウマ「・・・。」
サクラ「・・・ダメじゃん!孫悟空の戯曲持ってるのセイヤじゃん!セイヤ今マクベスじ
ゃん! どうしよう!どうしよう!」
ユキ(声)「まだ・・・手はあります!」

     ユキ、ミスズが戻ってくる。

サクラ「ユキちゃん!」
ユキ 「・・・若。殿からシノノメ家当主に伝わる家宝を預かってまいります。アレなら
    ば・・・!」
ミスズ「シノノメ家の・・・家宝・・・!まさか!『神の戯曲』!」
サクラ「聞いたことがある。エタニティア王国創立に大きく関わった四人の演術士の話・・・。
のちに王国四大公となった彼らは、神すらその身に宿したという・・・。」
ナツキ「そうか!神であれば魔女の予言に当てはまらない!トーマ!」
トウマ「・・・。」
サクラ「トーマ君?」
シュウ(声)「びびってんのー?未来の東征龍公―。」

     シュウが戻ってくる。

ユキ 「兄上!」
シュウ「やほー。みんな元気そーでなによりー。心配してたんだよー。」
ナツキ「嘘ばっか。」
シュウ「相変わらず手厳しーなー。そこも好きー。」
トウマ「シュウ・・・。」
シュウ「ビビってんでしょー。神の召喚に成功したことがあるのは初代シノノメ家当主た
だ一人。それ以降の当主で召喚に成功した人は一人もいない、幻の戯曲。今じゃ
ただの家宝として大事にしまってあるだけっていう笑える代物だもんねー。コレ。」

     シュウ、一冊の戯曲と一振りの刀を見せる。

トウマ「それは!?」
シュウ「(ドラえもんっぽく)シノノメ家の家宝―。」
ユキ 「なぜそれを!?」
シュウ「そこに落ちてたー。」
ナツキ「嘘つけ!」
ユキ 「盗ってきたのですか・・・こうなることを予測して・・・。」
シュウ「んな訳ないじゃーん。たまたまだよたーまーたーまー。」
サクラ「これさえあれば、マクベスに・・・!」
シュウ「勝てるかもねー?」
トウマ「・・・。」
ミスズ「・・・トーマ?どうしたの?」
トウマ「・・・シュウ、お前がそれを使え。」
シュウ「・・・は?」
ユキ 「若?何を!?」
トウマ「この局面は、一つの失敗さえ許されない・・・。だったら、少しでも可能性の高
い方に・・・。」

     トウマの胸倉を掴むシュウ。

シュウ「なにー?肝心なところで逃げんの・・・!?」
トウマ「逃げてなどない!勝つために、最善を尽くしてるだけだ!俺には力がない・・・
お前の様な才能もない!だから、知恵を絞って・・・!」
シュウ「君は強い!」
トウマ「・・・シュウ?」
シュウ「君は強いよ・・・僕なんかよりずっと。僕は諦めた、とっくの昔に。もう無理な
んだって。でも君は戦ってた!ずっと・・・ずっと!」
ユキ 「兄上・・・。」
シュウ「強さは・・・才能や、力で決まるんじゃない・・・。ユカリちゃんだってそうだ
ろ?」
サクラ「シュウ君・・・。」
シュウ「僕は・・・ずっと君たちが羨ましかった。何があっても前に進み続ける君たちが・・・
まぶしかった・・・。」
ナツキ「・・シュウ。」
シュウ「東征龍公になるんだろう?そしてまた3人で肩を並べて笑うんだろ?・・・信じ
させてくれよ・・・!君ならできるって!証明してみろよ!トウマ!」
ミスズ「トーマ・・・シュウの想いに貴方はどう応えるの・・・?」
トウマ「・・・俺は・・・。」
サクラ「トーマ君・・・ユカリちゃんに、追いつくんでしょ?追い越すんでしょ?」
ナツキ「別に失敗したっていいじゃん。成功するまで何度でも挑戦すればさ。」
ユキ 「私たちがそれまで奴を足止めします!若・・・どうか、私にも信じさせてくださ
い!貴方の夢が・・・いつか必ず現実になると!」

     トウマに家宝の戯曲と剣を差し出すユキ。

トウマ「・・・バカだな俺は。何を迷うことがある・・・。これは俺の役目だ!俺の望む
未来につながっている!大事なのは・・・諦めない事!」

     トウマ、剣を腰に差し、戯曲を開き召喚の構えを取る。

トウマ「・・・武神降臨!我が全身全霊を以って大いなる其の御霊を導かん・・・!」
ウィル「それを、僕が黙って見過ごすと思うかい?」
シュウ「思ってないよー。変態コスプレ副団長閣下―。」
ユキ 「若の邪魔をするものは、何人たりとも容赦しない!」

     シュウ・ユキVSウィル

ミスズ「サクラ、ナツキ・・・行ける?」
サクラ「はい!」
ナツキ「しゃーない。やりますか!」
ミスズ「頼りにしてるからね。学年ナンバー2、ナンバー3!」

     戯曲をホルダーから出し、構えるミスズ、サクラ、ナツキ

サクラ・ナツキ「英雄召喚!我が声を以って汝の魂を導かん・・・我が身に宿り、其の力
を示せ!」
ミスズ「英雄召喚!出番だよ、総司君!」

     一足先に召喚を終え、攻撃に加わるミスズ。

ウィル「来ましたね、沖田総司・・・!」
ミスズ(沖田)「ランスロット呼びなよ。アイツごと斬り捨ててやるからさ!」
ウィル「英雄の力を借りるなど、神である私には不要の行為だ。」

     ウィル、ランスロットの演装具・アロンダイトを鞘から抜く。
     ミスズ(沖田)・シュウ・ユキVSウィル。
     万全でない3人は次第に押されていく。

ウィル「さすがの天才剣士様も、そのケガでは十分に戦えないようですね。」
ミスズ(沖田)「冗談・・・!このくらいで!」
ウィル「そういえば君、労咳持ちでしたっけ。」
ミスズ(沖田)「な!」

     ウィルの言葉に反応するように、ミスズ(沖田)の体調が悪化していく。
     咳き込むミスズ(沖田)。

ミスズ(沖田)「・・・なん・・・で・・・!僕は今は魂だけの存在なのに・・・!」
ウィル「これが神の力ですよ。それより・・・そのままその体に居続けると、ミスズ先輩
にまで労咳が移ってしまいますよ。」
ミスズ(沖田)「・・・貴様・・・!」
シュウ「いーよ、沖田さん。後は僕らでやっとくから休んでてー。」
ミスズ(沖田)「・・・けど!」
シュウ「だいじょーぶ。もーすぐ助っ人もきそーだし。」
ナツキ「聞け!我が名は『【平原の女王】カラミティ・ジェーン』!」
サクラ「聞け!我が名は『【オルレアンの乙女】ジャンヌ・ダルク』!」

     召喚を終えるナツキとサクラ。

ナツキ(ジェーン)「神様だか何様だか知んないけどさ、アタシの邪魔するってんならテメ
ェのドタマに鉛玉ぶち込んでやるよ・・・!」
サクラ(ジャンヌ)「偽りの神を名乗る者よ。己の罪を悔い、真なる神の裁きを受けなさい。」
ウィル「やれやれ、次から次へと・・・。」
トウマ「ぐあぁぁぁぁっ!」

     神の強大な力に耐えきれず、膝を付くトウマ。
     トウマのもとに駆け付けるユキ。

ユキ 「若!大丈夫ですか・・・?」
トウマ「すまん・・・だが、大丈夫だ。これしきの事で・・・!」
カオル「ぐう・・・っ!」
ショウイチ「がはっ!」

     セイヤ(マクベス)の前に力尽きて倒れるカオル、ショウイチ。

ウィル「歴戦の勇者たちはすべて地に伏し、残ったのは訓練生ばかり。・・・そして、最後
の起死回生の策すら失敗に終わった。これで・・・チェックメイトです。」
ナツキ(ジェーン)「ちょっと!勝手に終わらせないでくれる?こちとら出てきたばっかで
力有り余ってんだからさ、アンタらが泣いて謝るまで暴れまわらせてもらうよ!」
シュウ「悪いけど、こっちは最初っから年寄りに頼る気なんかさらっさらないんだよねー。
世代交代ってやつ?つーまーりー、この物語の主役は僕らなんですけどー。」
ユキ 「物語にはこれくらいのピンチは付き物だ。ここから逆転させてもらう!」
サクラ(ジャンヌ)「サクラさんの声が聞こえます。『私たちは諦めない!絶対に勝つ!主
人公パワーで!』・・・この強き想いを力に変えて,私達はこの戦に勝利します!」
ウィル「滑稽だな。説得力がまるでない。君たちが物語の主人公?思い上がるなよ。貴様
らごときが主人公の物語など駄作もいい所だ。実にくだらない。」
セイヤ(マクベス)「・・・馬鹿に・・・するなよ・・・!」
ウィル「何・・・?」
セイヤ「テメェの考えた筋書きの方がよっぽどつまんねぇよ・・・!それよりもよ・・・
まだ演術士にもなってねぇ学生が、神を超えるって話の方が・・・最高にワクワ
クすんじゃねぇか・・・!ぐっ!」

     ウィルに殴られるセイヤ。

ウィル「気をしっかり持てマクベス。そんな蛆虫ごときの好きにさせるな・・・!」
トウマ「セイヤ!」

     膝を付くセイヤ。
     再度禍々しい雰囲気がセイヤを包む。

セイヤ(マクベス)「・・・クソガキどもが・・・!調子に乗ってんじゃねぇぞぉっ!」
ユカリ「・・・いい加減気づいたらどうですか?追い込まれているのは、貴方達だという
ことに。」
セイヤ(マクベス)「なんだと・・・!?」
ユカリ「私たちは、絶対に諦めない。たとえ相手が神であったとしても、みんなの笑顔を守るために・・・乗り越えていくだけです!」
セイヤ(マクベス)「吠えるな!負け犬どもが!貴様らがどんなに強くなろうがこの俺は倒せない!魔女の予言に守られている限り、女から生まれた貴様らでは俺には勝てんのだ!」
トウマ「・・・勝つさ。どんな苦境であろうと乗り越える術を、俺たちはここで身につけた!時には教えてもらい・・・時には互いに気づかされて・・・。魔女の予言くらいで屈するようなヤワな魂を、俺たちは持ち合わせていない!」
ウィル「・・・もう貴様らの精神論は聞き飽きました。とっとと終わらせましょう。」
シュウ「それはこっちも同じ事だよー。また時間稼ぐから、トーマ君宜しく。」
ユキ 「兄上、お供致します。」
ナツキ(ジェーン)「じゃ、アタシもこっちいこっかな。」

     シュウ、ユキ、ナツキ(ジェーン)がウィルに攻撃を仕掛ける。

サクラ(ジャンヌ)「ユカリさん、私たちはセイヤさんを・・・。」
ユカリ「うん、行こう!サクラ!」
サクラ(ジャンヌ)「ふふ・・・。」
ユカリ「あ、サクラじゃなかったですね・・・。すみません、ジャンヌさん。」
サクラ(ジャンヌ)「どちらでも結構ですが・・・貴方とこうして共に戦えることを、サクラさんがとても喜んでいますよ。」
ユカリ「・・・私も・・・嬉しいよ、サクラ。」
セイヤ(マクベス)「小娘どもが・・・アーサーがいなきゃテメェらなんぞ・・・!」
ユカリ(アーサー)「余が・・・どうかしたのか?」
セイヤ(マクベス)「何だと!?テメェ、召喚が解けたんじゃ・・・!」
ユカリ(アーサー)「そんなこと誰も、一言も言ってはおらんぞ。さて・・・もうひと踏ん張りと行こうか!」

     ユカリ(アーサー)・サクラ(ジャンヌ)VSセイヤ(マクベス)
     二つの戦いが佳境に入るころ、戦場に雷鳴がとどろく。
     舞台中央には厳かな雰囲気に包まれているトウマがいる。

ウィル「この気配・・・まさか、本当に神を・・・!させるか・・・これ以上好き勝手にさせるかぁっ!」

     トウマに攻撃しようとするも、シュウとユキに阻まれるウィル。

シュウ「デート中によそ見なんてサイテーだよー!」
ユキ 「若には指一本触れさせん!」
ウィル「邪魔をするなぁっ!」

     ウィル、シュウに斬りかかる。
     ウィルの剣を体で止めるシュウ。

シュウ「・・・二人とも・・・今だぁっ!」
ユキ・ナツキ(ジェーン)「はぁぁぁぁぁっ!」

     ユキとナツキ(ジェーン)の連続攻撃が決まる。
     ウィルが倒れる。シュウも倒れる。
     ユキはシュウに、ナツキはウィルに近寄る。

ナツキ「・・・ウィル・・・。」
ユキ 「兄上!」
シュウ「・・・だいじょぶ、これくらい・・・それよりも・・・見届けないとね、世紀の
瞬間を・・・。」
ユカリ(アーサー)・サクラ(ジャンヌ)「たぁぁぁっ!」

     二人の攻撃を受けてよろめくセイヤ(マクベス)

セイヤ(マクベス)「こんな・・・バカな・・・!だが俺にはまだ・・・予言の加護が・・!」
トウマ「それも、もう終わる。」
セイヤ(マクベス)「何・・・?」
トウマ「刮目して、その目に焼き付けよ!我に宿りし神の姿・・・その名は・・・『スサノ
オノミコト』なり!」

     天地に雷鳴が轟く。
     膝を付き、屈するトウマ。
     ゆっくりと立ち上がる。

セイヤ(マクベス)「神だと・・・?貴様ごときに・・・神が呼べるものか!」

     トウマに攻撃をするセイヤ(マクベス)。
     だが素手で簡単に止められてしまう。
     セイヤ(マクベス)を殴るトウマ。
     吹っ飛ぶセイヤ(マクベス)。

セイヤ(マクベス)「馬鹿な・・・?何だ・・・何なんだこの力は!?」
トウマ「・・・悪いな・・・あまり長くはもたん。一気にケリをつけさせてもらうぞ!」

     トウマ、腰に差した家宝の剣を抜く。

トウマ「演神器・天羽々斬(アメノハバキリ)よ・・・その力を今こそ示せ!」

     大きく構えるトウマ。
     全ての力を天羽々斬に込めている。

セイヤ(マクベス)「・・・冗談じゃねぇ・・・!こんなところでやられてたまるか!」
ユカリ(アーサー)「逃がさん!」

     セイヤ(マクベス)が逃げようとするが、ユカリ(アーサー)と
サクラ(ジャンヌ)に阻まれる。

サクラ(ジャンヌ)「終わりです。観念なさい・・・!」
セイヤ(マクベス)「終わりだと・・・こんな・・・バカなことが・・・ぐぅっ!」

     苦しみだすセイヤ(マクベス)。

セイヤ(マクベス)。「・・・てめぇ・・・何度も俺の邪魔ばかりしやがって・・・!俺は
マクベスだぞ!貴様らの様な・・・ガキどもに・・・負けるものかぁっ!」

     最後の力を振り絞り、ユカリ(アーサー)とサクラ(ジャンヌ)を
蹴散らすセイヤ(マクベス)。

ユカリ(アーサー)「くっ!」
サクラ(ジャンヌ)「・・・まだこんな力が・・・!」
セイヤ(マクベス)「そうだ・・・神だろうが何だろうが俺が負けるわけがねぇ!貴様らが
限界を超えるならば、この俺はさらにその上を行くまで!」

     剣を構え、トウマに対峙するセイヤ(マクベス)。

トウマ「いざ・・・尋常に・・・!」
トウマ・セイヤ(マクベス)「勝負!」

     トウマVSセイヤ(マクベス)。
     両者死力を尽くした決戦。
     トウマの最後の一撃がセイヤ(マクベス)に入る。
     仁王立ちのまま倒れないセイヤ(マクベス)。

セイヤ(マクベス)「貴様らの友人に感謝だな。俺の中でガタガタ抜かしやがるから、最後の最後に騎士として勝負に臨むことが出来た・・・。」
トウマ「・・・そうか。」
セイヤ(マクベス)「貴様らと戦えたことを誇りに思う・・・。貴様らの・・・勝ちだ・・・!」

     崩れ落ちるセイヤ(マクベス)。
     セイヤから禍々しい雰囲気が消える。
     セイヤに駆け寄るサクラ、ユカリ、トウマ、ナツキ。

サクラ「セイヤ!しっかり・・・!」
セイヤ「・・・サクラ・・・みんな・・・俺・・・!」
トウマ「・・・また、俺の勝ちだな・・・セイヤ。」
ユカリ「ちょっと、トウマ!」
セイヤ「・・・ああ。また負けた・・・ちっくしょー・・・!」
トウマ「・・・また、やるぞ。いつでもかかってこい。次も、俺が勝つ。」
セイヤ「ヘッ・・・言ってろ。次こそおれが勝つ!」

     固い握手を交わすトウマとセイヤ。

ナツキ「結局それで解決するんだ・・・男ってバカよね。」
シュウ「いやいやナツさーん、男全員をあの二人と一緒にしないでもらえますー。」
ナツキ「アンタはもうちょっと馬鹿になったら。さっきみたいにさ。」
シュウ「え?」
ナツキ「カッコ良かったよ、さっきのアンタ。『君は強い!』・・・だっけ。」
シュウ「ちょ、ナツさん!」
ミスズ「『信じさせてくれよ・・・君ならできるって!』」
シュウ「みーちゃん先生まで!?」
ナツキ・ミスズ「『証明してみろよ!トウマ!』」
シュウ「・・・死にたい・・・。」
ユキ 「人間、素直が一番です。」
セイヤ「なに?何の話?面白そうじゃん、聞かせろよ。」
シュウ「うるさいなー!そういう君はどーなのさー。ドサマギでちゃっかりサクラちゃんに告ってんじゃーん!」
セイヤ「テメェ、ふざけんな!マジ黙れ!」
サクラ「セイヤ!ボロボロなんだからじっとしてなきゃ・・・!」
シュウ「どーすんのー、サクラちゃーん?どーせ振るなら早めがいいと思うよー。」
サクラ「え?え?えっと・・・。」
セイヤ「なんで振られる前提なんだよ!」
シュウ「えー?OKしてもらえると思ってんのー?マジでー?その顔でー?」
セイヤ「顔関係なくねぇ!?」

     楽しそうに騒ぐ訓練生たち。
     起き上がったショウイチとカオルがミスズの元に行く。

ショウイチ「勝ったのか・・・。」
ミスズ「団長!先輩!」
ショウイチ「俺はもう団長じゃねぇよ。」
カオル「すごいな、お前の生徒たちは・・・。」
ミスズ「はい!自慢の、生徒たちです。」
ユカリ「二人とも!みんな疲れてんだから、その話はあとで・・・。」
シュウ「後っていつ?今じゃなきゃ、サクラちゃん王都に帰って、もう戻ってこないかもしんないのにー?」

     シュウの言葉に固まる一同。

ナツキ「・・・相変わらず、アンタ痛いとこつくわね。」
ミスズ「・・・そうね。こうなった以上、サクラはもうみんなと一緒には・・・。」
サクラ「・・・ごめんね、みんな。」
ユカリ「サクラのせいじゃないじゃん!サクラは何も悪くないんだし・・・。」
ウィル「そう、悪いのは私・・・とでも言っておきましょうか・・・。」

     ゆっくりと起き上がるウィル。
     全員に緊張が走る。

ウィル「・・・まさかマクベスまで倒すとは・・・お見事です。今回のこの悲劇は、もう駄目になってしまったようですね・・・。」

     話しながら舞台中央奥にゆっくり進むウィル。
     不気味な雰囲気に圧倒されて全員手出しできない。

ウィル「・・・だが、悲劇の種はこれだけではない。王国中にまだまだある。今回は残念ですが・・・その分、次回作はもっといい作品を創るとしよう。」

     振り返り全員を見るウィル。

ウィル「君たちには色々と学ばせてもらった。そのお礼代わりと言っては何だが、今回は見逃してあげよう。・・・しかし、次に私の邪魔をした時は・・・。わかっているね?」

     恐ろしく冷たい視線で全員を威圧するウィル。

ウィル「さらばだ。愚かなる人間どもよ・・・。」
ユカリ「・・・待ってください!」

     立ち去ろうとするウィルを引き止めるユカリ。

ユカリ「私は・・・貴方の笑顔も守りたい!私たちは・・・まだ貴方の問いに答えていない!」
ナツキ「ユカリ・・・。」
ユカリ「ウィルさん・・・人間は、変われるよ・・・。世界は・・・想いは、繋がるよ。」
ナツキ「そうだよ!貴方だって見たでしょ。ユカリが、戯曲無しに、英雄でもなんでもないユカリのお母さんを召喚したのを・・・。そして、ショウイチさんやカオル団長、ユカリの想いがつながって・・・争いが止まったのを。」
サクラ「あれこそ、貴方の理想なのではないですか?私は、あの時確信しました。演術にはまだ未来がある、と。それを私は王家の人間として、王国の民の未来のために活用しようと思っています・・・。」
ミスズ「・・・ウィル、また一緒に戦おう。貴方の理想を現実にするために!」
ウィル「・・・私が何度そう期待したと思っている・・・?そのたびに何度裏切られたと思っている!人の闇は!業は!・・・お前たちが思っているよりもずっと!ずっと深いんだよ!」
ユカリ「それでも!私たちは信じる!だって・・・私たちは繋がれたから!」
ウィル「世界のほんの一部がつながったところで何が変わる!?ろうそくの灯程度の明かりで、照らせる闇ではない!」
トウマ「やってみなくてはわかるまい・・・!」
セイヤ「俺は馬鹿だから、アンタの理屈はわかんねえ。けど、ユカリの言葉の方が、熱くなったし、グッと来たぜ!」
シュウ「結局、アンタは諦めて逃げただけじゃーん。・・・でも、僕らはそうじゃない!」
ユキ 「未来を見ないものが、神を名のるな。」
ショウイチ「ウィル、偉そうなことは言えた立場じゃねぇが・・・俺たちと一緒に、こいつ等を信じてみねぇか・・・?」
カオル「我らの力で、若い彼らの理想を助けていこう。お前の力が必要だ・・・ウィル。」
ウィル「戯言だ・・・。あの時も・・・エタニティア初代国王も・・・四大公も・・・かつて同じことを言っていた・・・。あれから400年・・・結局その理想を見せてくれる者はいなかった・・・!」
ナツキ「ウィル!」
ウィル「ナツキ・・・僕と一緒に来ないか・・・?君は・・・僕の理想を覚えていてくれた。僕と・・・世界を導こう。」
ナツキ「・・・ウィル、それは違うよ。私は、みんなと一緒に進む。ゆっくりでも、人の可能性を信じて、歩いていきたい。」
ウィル「・・・残念だよ。」

     剣を抜くウィル。

ウィル「そこまで言うのであれば、お前たちの力を見せてみよ!私を超えられない程度の人間が、何を言ったところで響きはしない!」
シュウ「やれやれー・・・結局戦うのかぁー。」
トウマ「お前は休んでろ。無理はするな。」
シュウ「じょーだん。僕がいなきゃ、雑魚ばっかで話になんないじゃーん。」
セイヤ「俺も戦うぜ!」
ユキ 「くれぐれも、足を引っ張るなよ。」
セイヤ「へっ!誰が!」
サクラ「ナツ姉・・・。」
ナツキ「サク、行くよ」

     戯曲を取り出すナツキ。サクラもそれに続く。
     同時にセイヤも召喚の構えに入る。

セイヤ・ナツキ・サクラ「英雄召喚!」
ショウイチ「カオル、ミスズ、まだ戦えるか。」
ミスズ「もう限界ですけど・・・突破します!」
カオル「ミスズ、これを。」
ミスズ「聖剣デュランダルと・・・英雄ローランの戯曲!」
カオル「ショウイチさん。」
ショウイチ「聖剣エッケザックスと英雄ディートリヒの戯曲か。」
カオル「行きましょう!ユカリと共に、ウィルの笑顔を取り戻すために!」
ユカリ「スサノオ様、まだ呼べる?」
トウマ「無理だ。信乃を呼ぶ力も残ってない。・・・だが。」
ユカリ「なに、どうしたの?」
トウマ「なぜだろうな、心が昂ってしょうがない。己の力のみで、神に等しい力を持つ者に立ち向かう。最高の状況だな・・・!」
ユカリ「人の事正気の沙汰じゃないとか言ってたくせに。」
トウマ「俺たちで道を切り開く。お前が決めろ。ユカリ。」
ユカリ「わかった。・・・もう一度、力を貸して・・・アーサー!」
セイヤ「孫悟空!」
ナツキ「カラミティ・ジェーン!」
サクラ「ジャンヌ・ダルク!」
ウィル「相手にとって不足なし・・・来い!」

     ウィルVS全員。

ウィル「キレがないな。そんな攻撃が通用するか!」

     ウィルのこうげき。
     つうこんのいちげき!
     ユキ、シュウは脱落した。

ウィル「所詮は付け焼刃の聖剣・・・恐れるに足らん!」

     ウィルのこうげき。
     つうこんのいちげき!
     ミスズ、ショウイチは脱落した。

ウィル「英雄の力がどれだけ強かろうが、器がまともに戦えないようでは話にならん!」

     ウィルのこうげき。
     つうこんのいちげき!
     セイヤ、カオルは脱落した。
     間髪入れずにナツキ(ジェーン)が攻撃をする。
     受け止めるウィル。

ウィル「ナツキ・・・強くなったね。でも、その程度ではまだ僕には届かない。」

     ウィルのこうげき。
ナツキは脱落した。

ウィル「強い意志を持った瞳・・・成程、確かに2年前まで王都にいたころの貴女とは別
人のようだ・・・。そして、君も。戦うごとに、苦境を乗り越えるたびに強くな
る。演術無しでここまで持ちこたえるとはね。・・・だが!」

     ウィルのこうげき。
     つうこんのいちげき!
     サクラ、トウマは脱落した。

ウィル「君たちがいくら成長し、世界を変えようと、君たちが死ねば、変えた筈の世界は
元に戻る。その繰り返しだ。一部の者がどれだけ足搔こうと、世界の流れは変わ
らない。」
ユカリ「だから!貴方は演術を創ったんじゃないの!過去と今を繋げて、新たなる未来を
創り出すために!」
ウィル「だが結局、それも無意味だった!」

     ウィルのこうげき。
     つうこんのいちげき!
     ユカリ倒れる。

ウィル「終わりだ。400年前、四大公が神の力を持ってさえ、私を止めることは出来な
かった。そして今も・・・結局は何も変わらない。変えられはしない。」
ユカリ「・・・まだ・・・終わってない・・・!」

     立ち上がるユカリ。

ウィル「立ったところで何ができる。」
ユカリ「貴方に、人間の可能性を見せる・・・!貴方に勝つことで!」
ウィル「お前には無理だ。」
ユカリ「ふふ・・・。」
ウィル「なにが可笑しい?」
ユカリ「何度、その言葉を私たちは言われてきただろう・・・でも、諦めなかった。だっ
て・・・無理でもなんでもやりたいんだもん!だから・・・強くなった!」
ウィル「なんだ・・・?この気迫は・・・。」
ユカリ「力で及ばないなら、知恵でカバーして・・・一人で勝てないなら仲間の力を借り
て・・・今までも・・・これからも・・・私たちは戦う!そして・・・必ず夢を
叶える!お願い!アーサー!貴方の力を貸して!」

     アーサーを召喚するユカリ。
     ウィルと対峙する。

ユカリ(アーサー)「ウィル、貴公の負けだ。」
ウィル「何・・・?」
ユカリ(アーサー)「信じぬものが、信じるものに勝てるはずがない。」
ウィル「世迷い言を・・・。」
ユカリ(アーサー)「見せてやる。ユカリの言っていた人間の可能性というやつをな!」

     エクスカリバーを鞘にしまうユカリ(アーサー)。
     トウマの傍らに落ちている天羽々斬を拾う。

ユカリ(アーサー)「トウマ、貴公と神の力・・・借りるぞ。」
ウィル「借り物の剣を振るうことが、人間の可能性ですか・・・?」
ユカリ(アーサー)「・・・黙って見ていろ。本番はここからだ!」

     ユカリ(アーサー)、ホルダーから一冊の戯曲を取り出す。

ショウイチ「あれは・・・!」
ユカリ(アーサー)「英雄召喚!力を貸せ!宮本武蔵!」

     轟音が鳴り響く。
     エクスカリバーを引き抜き、天羽々斬とエクスカリバーの二刀流の
     構えを取るユカリ(アーサー)。

ユカリ(アーサー)「これが二天一流の極意か・・・。感謝する、武蔵殿!」
ウィル「英雄が・・・英雄召喚だと・・・。馬鹿な・・・!?」
ユカリ(アーサー)「馬鹿だろう。だが、その馬鹿正直なほどの真っ直ぐな想いが、我らを
繋ぎ、この力を生んだのだ・・・!ユカリが繋いだ想いを!力を!その身にしか
と受けてみよ!」

     ユカリ(アーサー二刀流)VSウィル。
     互角の勝負。
     ウィルの渾身の一撃を、エクスカリバーで弾いた、次の瞬間、天羽々斬での
     攻撃がウィルに決まる。
     だが、ウィルはまだ倒れない。
     互いに距離を取り構える二人。
     二人の力と、想いの全てを込めた最後の一撃。
     相撃ちで決まる。
     止まる二人。

ウィル「・・・見事だ。人間の可能性・・・見せてもらった。」
ミスズ「ウィル・・・。」
ウィル「400年かかって、たったの一歩。しかも人の歴史から見れば、ほんの僅か、小
さなものに過ぎない・・・。」
ユカリ「それでもいい。たとえ小さくても、私たちは次の一歩をまた踏み出す。それを繰
り返していく。ずっと・・・ずっと・・・理想を現実に変えるまで。」
ウィル「・・・面白い。ならば、次の一歩、楽しみにしよう。」

     剣をしまうウィル。

ウィル「君の言葉が現実になるかどうか、また見せてくれたまえ。次の舞台でまた会おう、
ユカリ=シキベ。」
ユカリ「次も・・・止めてみせます。必ず。」

     フッと微笑み、立ち去るウィル。
     それと同時にユカリが倒れる。
     暗転。
     ユカリの名前を呼ぶ一同。
     BGMが流れる。

第十八幕
     一週間後。
     エタニティア王国東方地区・カグラ村。
     ユカリの実家の定食屋。
     ショウイチが作業をしている。
     カオルが店にやってくる。

ショウイチ「おう。どうだ、調子は?」
カオル「医者には安静にしているように言われましたが・・・そんな暇は。」
ショウイチ「だろうな。優秀な副団長が抜けたんだ。さぞかし大変だろうよ。」
カオル「誰かさんが戻ってくれれば助かるんですけどね~。」
ショウイチ「ミスズは?」
カオル「フラれました。学生たちを置いて、現場に戻れないって。」
ショウイチ「すっかり立派な先生だな。」
カオル「ええ。本当に。」

     ユキ、トウマとシュウを連れて店に来る。

ユキ 「店主殿!」
ショウイチ「おう、ユキ!元気そうだな。トウマとシュウも。」
ユキ 「約束を、果たしに来ました。」
ショウイチ「覚えててくれたのか。」
ユキ 「無論。」
ショウイチ「待ってろ。最高の飯を用意してやる。」

     ショウイチ、奥に引っ込む。

カオル「トウマ君、久しぶりだね。」
トウマ「お久しぶりです。」
シュウ「久しぶりって言っても一週間しかたってないけどねー。」
ユキ 「兄上!」
カオル「本当はここで渡すつもりではなかったんだけど・・・受け取ってくれるかい。」

     カオル、トウマに書類を渡す。
     内容を確認するトウマ。

トウマ「王国第一演撃師団、入団許可証・・・。」
カオル「試験はうやむやになってしまったけど・・・その後の戦いで、君にその力量があることは十分証明できた。期待しているよ。」
ユキ 「若!」
シュウ「よかったじゃーん、トーマ君。」
トウマ「ありがとうございます!」
カオル「それと、、もう一つ。」

     カオル、トウマにもう一つ書類を渡す。
     内容を確認するトウマ。

トウマ「・・・これは!」
シュウ「なになにー・・・任命書・・・貴殿を・・・王国第一演撃師団副団長に任命する!?ちょ、コレ!」
ユキ 「団長殿!?」

     料理を持ってショウイチ戻ってくる。

ショウイチ「成程。そうなったか。」
カオル「ミスズの推薦だ。君ならばできるはずだと。」
トウマ「・・・しかし。」
カオル「そう、古参の団員からしたら面白くないだろうね。でも・・・ウィルは実力で周囲を黙らせた。彼に出来たことが、君には出来ないと?」
シュウ「あらあらー東征龍公になるってお方が随分弱気だことー。」
カオル「ちなみに、この任命書は受け取りを拒否することも出来る。どうする・・・?」
トウマ「トウマ=シノノメ、命に替えてもこの大役、見事果たしてみせます!」
ユキ 「若・・・。流石です・・・。見事です・・・。」

     ナツキが駆け込んでくる。

ナツキ「ショウイチさん!」
ショウイチ「おう、ナッちゃん。どうした?」
ナツキ「私も連れて行ってください!」
ショウイチ「なんだ藪から棒に。一体何のことを・・・。」
ナツキ「とぼけないでください!探しに行くんですよね・・・ウィルを!」
ユキ 「本当ですか?」
シュウ「ホントだよー。んで、それに僕もついていくー。」
トウマ「何だと!?どういうことだ!何も聞いてないぞ!」
シュウ「今初めて言ったもーん。当たり前じゃーん。」
ユキ 「兄上・・・なぜ?」
シュウ「まあ、こないだの一件がなんだかんだ問題になってさー。ま、当たり前だよねー、姫を殺そうとした賊の味方しちゃったんだからさー。」
ユキ 「しかしそれは・・・!」
シュウ「さらにまずいことに、僕の場合、シノノメ家の家宝無断拝借しちゃったからさー。結果はともかく、あちこちから睨まれてて。ほとぼりが冷めるまで旅にでも・・・って思ってたらさー・・サクラちゃんに呼ばれたんだー。」
トウマ「サクラに?」
ショウイチ「俺もだ。姫は、俺たちの罪を許すかわりに、今回の首謀者であるウィルを探し出すようお命じになった。」
シュウ「そーゆーこと。」
ナツキ「私も・・・連れて行ってください!」
シュウ「ダーメー。」
ナツキ「何で!」
シュウ「ナツさんは・・・まず、卒業してよ。」
ナツキ「あ・・・。」
トウマ「シュウ・・・。」
シュウ「僕もさ、サクラちゃんも、もう学校に戻ることは出来ない。でも、ナツさんはそーじゃないじゃん。」
ナツキ「・・・何よ。相変わらず痛いとこついてさ・・・ホントヤな奴。」
シュウ「みんなと一緒に、卒業証書受け取ったら、僕らのとこに来なよ。ちゃーんと逐一連絡するからさー。」
ナツキ「嘘だったらただじゃおかないからね。」
シュウ「おーこわー。」
ショウイチ「つーわけで、この店もしばらく休業する。良かったらみんなジャンジャン食べてくれ!食材余らせといても勿体ないだけだからな!」
ユキ 「任せてください!食べるのは得意です!」
シュウ「僕もー。」
カオル「ショウイチさん、私はこれで・・・。」
ショウイチ「おう。カオル!」
カオル「はい。」
ショウイチ「これからもユカリの事、よろしく頼む。」
カオル「はい!」

     にぎやかな店内を後にするカオル。
     暗転。

     場所は変わって演術士訓練学校・教員室。
     ミスズに呼び出されたセイヤが立っている。
     そこにセイヤが駆け込んでくる。

ミスズ「セ~イ~ヤ~!」

     抱き着こうとするも躱されるミスズ。

ミスズ「久しぶりだっていうのにヒドイ!ヒドイよセイヤ!」
セイヤ「アンタは相変わらず元気だな・・・!」
ミスズ「もち☆元気だけが取り柄ですからッ!キラッ☆」
セイヤ「自分で言うな。」
ミスズ「退院おめでとう、セイヤ。」
セイヤ「・・・どうも。」
ミスズ「どした?暗いぞ~セイヤ~。」
セイヤ「・・・おれ、ここに戻ってきてもいいんですかね。」
ミスズ「どういうこと?」
セイヤ「だって、そうじゃないですか!おれが・・・あんな誘惑に負けなければ、サクラはまだ学校に居られた!みんなも傷つかずに済んだ!おれのせいで・・・おれのせいでみんなめちゃくちゃになったんだ!」
ミスズ「セイヤ・・・。せいやっ!」

     セイヤの脳天にチョップするミスズ。

セイヤ「いってぇな!何すんだよ!」
ミスズ「アンタが誘いに乗ろうが乗るまいが、結果こうなってたわよ。ウィルは、何があっても決めたことはやり通す・・・頑固者だったから。」
セイヤ「先生・・・。」
ミスズ「そ・れ・に!あの一件があったから、みんな成長できた。そっちの方が大きいと思うよ。私は。」
セイヤ「・・・でもよ・・・!でも・・・。」
カオル「今、君に学校を辞められては私も困るな。」

     カオルやってくる。

セイヤ「カオル団長!」
カオル「せっかくのこれが、無意味になってしまうからね。」

     セイヤに書類を渡すカオル。
     内容を確認するセイヤ。

セイヤ「・・・これって・・・。」
カオル「第一演撃師団の入団許可証だ。受け取ってくれ。君にはその資格がある。」
ミスズ「おめでとう、セイヤ。」
セイヤ「・・・でも・・・おれはぁっ!」
カオル「君の活躍を祈っている。おめでとう・・・姫からの伝言だ。」
セイヤ「サクラ・・・。」

     許可証を握りしめるセイヤ。

セイヤ「おれ・・・頑張ります!絶対・・・絶対に・・・!」
カオル「期待しているよ、セイヤ君。」
ミスズ「あ、そういえば!どうでしたトーマ。副団長やるって言ってくれました?」
セイヤ「何!?トーマが副団長!?」
カオル「お前・・・それをこのタイミングで聞くか・・・。」
セイヤ「ちくしょ~・・・ちっくしょーーーー!!!」

     暗転。

     場所は変わってエタニティア王国王都・王城。
     自室にて休んでいるサクラ。
     ノックの音が聞こえる。

???「失礼します。」
サクラ「どうぞ。」

     帽子を目深にかぶった男が入ってくる。

サクラ「・・・ウィル・・・さん?」

     帽子を取って正体を明かすウィル。

ウィル「おや、バレてしまいましたね。」
サクラ「お元気そうですね。」
ウィル「人、呼ばないのですか・・・?」
サクラ「はい。私、ウィルさんの事、好きですから。」
ウィル「・・・やれやれ。おだてても、次の舞台の幕開けはやめませんよ。」
サクラ「大丈夫です。また、私たちが止めます。」

     真っ直ぐなまなざしで、ウィルを見つめるサクラ。

ウィル「どうやら、心配は不要だったようですね。」
サクラ「心配?」
ウィル「ええ。昔の貴女ならこう答えたでしょう。『ユカリちゃんたちが止めてくれる』。」
サクラ「そうかもしれませんね。でも・・・今は違います。私も戦います。私は、フローラ=エタニティア姫でもあり、演術士サクラ=エイタニでもあるんです。」

     戯曲を見せるサクラ。

ウィル「やれやれ・・・とんだおてんば姫になってしまわれた。」
サクラ「もう、行くんですか。」
ウィル「はい。あ、ちなみに・・・。」
サクラ「わかってます。幻影(ヴィジョン)なんでしょう。本体ではなく。」
ウィル「貴方のご学友にやられたダメージが思いのほか深くてね。」
サクラ「ユカリちゃん、ステキな人だったでしょう?」
ウィル「ええ。貴女の言っていた通りでした。」

     立ち去ろうとするウィル。

サクラ「ナツ姉・・・じゃなかった、ナツキさん。貴方の事、待ってますよ。」
ウィル「・・・今はまだ、彼女の元には戻れません。」
サクラ「じゃあ、私たちが戻れるようにします!」
ウィル「戯言を・・・残念ですが、そうはなりませんよ・・・。」

     フッと微笑んだあと、去るウィル。

サクラ「幻影(ヴィジョン)か・・・。便利だな。どうやったら使えるようになるんだろ・・・。」
カオル(声)「姫、よろしいですか?」
サクラ「はい。どうぞ。」

     カオルが入ってくる。

サクラ「準備は出来ています。行きましょう!」
カオル「しかし・・・よろしいのですか?抜け出したことが国王陛下に知られたら・・・。」
サクラ「そんなのどーだっていいんです!それより、私はユカリちゃんが心配なんです。あのあと、倒れてからずっと眠ったままだなんて・・・。」
カオル「先ほど、東方地区の病院から、より設備の整っている王都の病院への搬送が無事に終了いたしました。」
サクラ「ごめんなさい。わがまま言って護衛についてもらって・・・。」
カオル「いえ。ユカリは私にとっても大切な存在です。丁度東方地区に用事もありましたし・・・。」
サクラ「みんな、どうでした?元気そうでした?」
カオル「はい。変わらず。」
サクラ「・・・そうですか。」
カオル「では、行きますか?」
サクラ「はい!」

     部屋を出ていくサクラとカオル。
     暗転。

エピローグ
     時は流れ、5年後・・・。
     エタニティア王国東方地区・カグラ村。
     今は酒場になっている、ユカリの実家の定食屋。
     机に向かい、本に書き込みをしているナツキ。
     手を止め、天井を見上げてため息をつく。

ナツキ「・・・ふーっ・・・。」
ショウイチ「お、書けたかい?」
ナツキ「いえ、まだまだです。ようやく最初の事件が終わったあたりで・・・。」
ショウイチ「・・・どれどれ。」

     ナツキの書いていた本を手に取り読むショウイチ。

ナツキ「・・・どうです。」
ショウイチ「・・・なかなかよく書けてるんじゃねぇか?」
ナツキ「ホントですか!」
ショウイチ「ああ。」
ナツキ「・・・よかったー・・・。」
ショウイチ「懐かしいな・・・あれからもう5年も経つのか・・・。」
セイヤ(声)「失礼します!」

     セイヤが店内に入ってくる。
     その後に続いてユキとトウマが入ってくる。

セイヤ「ご無沙汰しております!ショウイチ元団長!」
ショウイチ「・・・おいおい、ここは酒場だぞ。そんなかたっ苦しい雰囲気で入ってくる馬鹿がどこにいるよ。」
ユキ 「すみません。ここにいました。」
セイヤ「うるっせぇよ!」
ナツキ「・・・全く、副団長になっても相変わらずね、セイヤ。」
セイヤ「ナツキじゃねぇか!久しぶりだなぁ・・・元気にしてたか?」
ナツキ「うん。何とかね。トーマもユキも久しぶり。」
ユキ 「うむ。」
トウマ「ああ。」
ナツキ「・・・少しやせた?」
ユキ 「そうなのだ!若と言ったら、忙しさにかまけてすぐ食事を抜こうとするのだ!ナツキからも何か言ってやって・・・!」
トウマ「わかったわかった!だからここに飯食いに来たんだろうが!それに・・・若はやめろと何度言ったら・・・!」
ユキ 「失礼しました!団長閣下!」
トウマ「・・・そうじゃなくてだな・・・。」
ナツキ「アンタたちも相変わらずね。・・・あれ、そういえばシュウは?」
セイヤ「さあ?ユキ、知ってるか?」
ユキ 「兄上がどこで何をしてるか知ってるものなど、どこにもいようはずがない。」
ナツキ「アイツも結局相変わらず・・・か。」
ショウイチ「ところで、第一師団の幹部様ご一行が雁首揃えて何用だ?」
トウマ「東方地区の遺跡探索任務です。先ほど、王都からこの村に。」
ショウイチ「そうか。ご苦労さん。ま、うまい飯と酒で疲れを取ってくれ。」
トウマ「ありがとうございます。・・・ところで、カオルさんは?」
ショウイチ「ああ、買い出しに出かけてる。もうすぐ戻ってくるんじゃねぇか?」
セイヤ「ショウイチさん!飯!酒!」
ユキ 「バカ者!団長が先だ!」
ショウイチ「わーったわーった。ちょっと待ってろ。」

     奥に引っ込むショウイチ。
     机の上の本が気になるトウマ。

トウマ「・・・これは・・・?」
ナツキ「ああ。それ、前に言ってたやつ。」
セイヤ「あれか!俺たちの活躍を記録した物語を作って、後の時代に残すっていう!」
ユキ 「貴様のではない!若の活躍だ!」
ナツキ「トウマ・・・どうしたの?」
トウマ「俺たちは・・・5年前から前に進んでいるのか・・・?結局未だにウイルを捕まえられてはいない。アイツは・・・今こうしている間にも新たな悲劇を生み出そうとしている・・・。確かに、経験を積み、立場も変わった・・・だが、結局のところ、俺たちはまだあの頃と同じガキのまんまじゃないのか・・・。」
セイヤ「うわ、また出た弱気トーマ。」
ナツキ「根暗トーマ。」
シュウ「泣き虫トーマ。」
トウマ・ナツキ・セイヤ・ユキ「え!?」

    突然加わった聞き覚えのある声の方を向く4人。

トウマ・ナツキ・セイヤ・ユキ「シュウ(兄上)!?」
シュウ「やほー。元気してたー。。」
トウマ「お前、今まで一体どこで何を!?」
シュウ「決まってんじゃーん5年前からずーっとウィルさん追っかけてるよー。」
ナツキ「そういえば!アンタ連絡くれるって言ったのに全然くれなかったじゃん!」
シュウ「もー時効だよー。言わない言わないー。それより、一緒に来てくんないかなー。僕たちだけじゃちょーっと心細くて・・・。」
ユキ 「来てくれ?どこに?」
セイヤ「いや待て、僕・・・たち?」
トウマ「誰かと一緒なのか?」
シュウ「ユカリちゃんとサクラちゃん。」
トウマ・ナツキ・セイヤ・ユキ「はぁ!?」
セイヤ「サクラが何で?アイツは王都にいるんじゃ・・・!」
シュウ「王都にいるの、あれサクラちゃんの幻影(ヴィジョン)だよ。本物は2年前から僕らとずーっと一緒に冒険してるよー。」
セイヤ「はぁ!?」
トウマ「ユカリも・・・いるのか?」
シュウ「うん。第一師団からプリンセスガードに異動になったのも、サクラちゃんがユカリちゃんと一緒に冒険するためだからねー。いやあ、二人して僕のところに押しかけてきたときはそりゃもうビックリしたよ、もー。」
トウマ「アイツら・・・!」
ナツキ「やるじゃん二人とも・・・!」
ユキ 「兄上、もしや来てくれというのは・・・!」
シュウ「うん。ウィルさん見っけたからさー、これからバトろうと思ってー。来る?」
トウマ・ナツキ・セイヤ・ユキ「もちろん!」

     奥からショウイチが戻ってくる。

ショウイチ「どうした?どこか行くのか?・・・ん?シュウ?」
シュウ「ご無沙汰してまーす。積もる話はまた後でー。」
ナツキ「ショウイチさん、待っててください!ウィルも連れて戻ってきますから!」
ショウイチ「!・・・そうか、行ってこい!」
トウマ・ナツキ・セイヤ・ユキ・シュウ「行ってきます!」

     駆け出す5人。
     それを見送り、奥へ戻るショウイチ。
     場所は変わって、カグラ村の人通りのない道。
     買い出しを終えて、店に戻る途中のカオルとミスズ。

カオル「すまんな。遊びに来てたのに手伝ってもらって。」
ミスズ「いえいえ~。先輩こそ無理は禁物です!家でおとなしくしていてください!」
カオル「そういうわけにはいかんよ。それに、じっとしてるのは性に合わないしね。」

     その前に、一人の男が立ち塞がる。

ウィル「お久しぶりです。団長。」
ミスズ「ウィル・・・。」
カオル「私はもう、団長ではないよ。」
ウィル「存じてますよ。演術士もやめ、今は一人の女性としての幸せを掴んでいる。」
カオル「・・・。」
ウィル「おめでとうございます。遅くなりましたが・・・私からのプレゼントです!」
ミスズ「先輩危ない!」

     剣を抜き、カオルに斬りかかるウィル。
     カオルをかばうミスズ。
     それよりも早く駆け付け攻撃を防ぐユカリ。

ウィル「・・・来ましたね!ユカリ=シキベ!」
ユカリ「させないよ!今回も止めてみせる!」

     攻撃を弾き、距離を取る二人。

カオル「ユカリ・・・。」
サクラ「カオルさん!先生!大丈夫ですか・・・?」
ミスズ「サクラ・・・!」
ユカリ「カオルさん・・・見てて、今度は私が貴女を守ります!」
トウマ「ユカリ!サクラ!」

     トウマ・ナツキ・セイヤ・ユキ・シュウが合流する。

ウィル「役者は揃ったようですね・・・。では新たな舞台の幕を開けましょうか!」
セイヤ「行くぜみんなぁっ!」
ユキ 「お前が仕切るな。」
シュウ「さーて、久しぶりに大暴れしますかー!」
ナツキ「ウィル・・・今度こそ貴方を変えてみせる!」
サクラ「みーちゃん先生、カオルさん、後は私たちに任せてください!」
トウマ「また、強くなったようだな・・・。」
ユカリ「そういうトウマもね。」
トウマ「見せてやるぞ・・・人間の、俺たちの可能性を!」
ユカリ「うん!」

     ホルダーから戯曲を取り出し構える7人。

ユカリ・トウマ・サクラ・ナツキ・シュウ・セイヤ・ユキ「英雄召喚!」

     暗転。
     BGMが流れる。
     スポットライトがユカリに当たる。

ユカリ「この物語は、私たちが演術士として、自分たちの夢を掴む物語。」
トウマ「そして、人間の歴史に絶望した一人の男に、人の可能性と、未来を、戦いの中で示し続けた物語。」
サクラ「この物語は・・・まだ終わらない物語。このあと10年、20年と続く物語。」
セイヤ「今は誰も知らない・・・この戦いも、この戦いで世界が変わっていくことも。」
ユキ 「でも、それでもいい。誰かに知ってもらうために、伝えるために戦っているわけではないから。」
シュウ「ただ、いつか・・・この物語を読んだ人たちに、僕たちが信じ、貫いた想いがたった一人でいい、知ってもらえたら、伝わったら、これ以上の幸福はない。」
ナツキ「私たちは、どこにでもいる、普通の人間・・・悩み、傷つき、苦しみ、迷い・・・ただ、諦めなかった。自分と、仲間たちを信じて前に進み続けた。ただ、それだけ。・・・でも、それだけでも世界は変わる。変えられる!私が書き残した、私たちの物語は、そういう物語!」

     照明が変わる。
     エクスカリバーを抜き構えるユカリ。

ユカリ「行くよ!みんな!」

     各々武器を持ち、ウィルに向かっていく。
     戦いが始まる。
     ウィルと、ユカリたちの想いをぶつけあった、まだまだ続く長い戦いが。
     7人に迷いはない。
     その先に、自分たちの未来があることを知っているから。
     7人は戦う。
     自分たちの信じた理想を、夢を、現実にするために、戦う。
《完》

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