僕の声はいつか届く【脚本】

シーン①
光の霊窟・最深部

シオン「・・・高い霊力を感じる。この扉の奥だ。」
セージ「長かったなぁ・・・俺もう腹減って死にそうだわ。」
ルナ 「では、貴方はそこで死んでて頂いて結構ですわ。ここから先はわたくしとシオン様だけでやりますので。」
セージ「あーそう。んじゃ、お二人さん後よろしく。」
ルナ 「ただし、貴方には報酬はお分けいたしませんので、そのつもりで。」
セージ「っざけんな!誰のおかげでここまで来られたと思ってんだ!」
ルナ 「貴方のおかげでないことだけは確かですわね。」
セージ「んだと脳筋女!俺の魔法がなかったらてめぇ何回死んでたと思ってんだ!」
ルナ 「誰が脳筋女ですって!この骨男!」

二人のやりとりを見て笑うシオン。

セージ「何笑ってんだよシオン。」
シオン「いや、難易度S級の霊窟の最奥だというのに、君たちは相変わらずだと思ってね。
・・・セージ、これ。」

懐から携帯食を取り出しセージに渡すシオン。

シオン「君の魔法がなくては俺たちはここまで来られなかった。だから、済まないが後もう
一踏ん張り頼む。このクエストが終わって帰ったら、気の済むまで腹いっぱい食べ
てくれ。もちろん、俺の奢りだ。」
セージ「マジか!?さっすが神様仏様シオン様!俄然やる気出てきたぜぇっ!」
ルナ 「・・・単純な男。」
シオン「ルナ、君の剣が俺の進む道を切り開いてくれるから、俺はSランクの【声霊術師】になれた。感謝している・・・」
ルナ 「い、いえ!そんな!わたくしなんて特にたいしたことは何も・・・!今のシオン様
があるのは、シオン様ご自身の才と弛まぬ日々の鍛錬がもたらしたもの・・・わた
くしはただ、シオン様をお側で見ていただけで・・・。」
セージ「ほふぁふぇほふぃふぇふふぁふぇっふぇふふぃふふふっふぉふふぁんふぁふぁ」
ルナ 「貴方は黙って食べることに集中していればよろしいのよ!」
セージ「んぐっ!んん!」
ルナ 「もう!ほんとに世話の焼ける・・・はい、お水ですわ!」

ルナから受け取った水筒の水を急いで流しこむセージ

セージ「・・・ぷはぁっ!やべぇやべぇ。マジでここで死ぬところだったぜ・・・。」
ルナ 「ではわたくしは、貴方の命の恩人ということですわね。これで貸しひとつですわ。」
セージ「こんなことで貸しひとつとかってお前、どんだけ器小さいんだよ、もうちょっと
優しくなれよ脳筋女。」
ルナ 「貴方はもう少し礼儀を覚えなさい!」

二人のやりとりにまた笑うシオン

ルナ 「何がおかしいのですかシオン様!」
シオン「すまない、つい・・・でも、二人とパーティーを組めて本当によかった。最高の剣士と魔術士・・・二人の力があったから、どんな霊窟でも、聖霊の元にたどり着けた。本当に、二人とも俺にはもったいない仲間だよ。」
セージ「んなことねぇよ。結局はお前がいなきゃ、聖霊は浄化できねぇ。俺たちにできるのは、お前ら声霊術師を霊窟の奥の祭壇に連れていくために、魔物を片付けることだけだからな。」
ルナ 「闇の力に取り込まれ、穢れてしまった聖霊の魂を救えるのは、声霊術師のみ。結局はシオン様がいなくては霊窟の攻略はできませんもの。」
シオン「二人とも・・・。」
セージ「さてと、んじゃ、さっさと終わらせて、美味い飯でも食べに行きますか!」
ルナ 「参りましょう・・・シオン様!」
シオン「ああ・・・ここからは俺の仕事。ここまで連れてきてくれた二人の働きを、絶対に無駄にはしない・・・!」

祭壇の間の扉をひらくルナ。
圧倒的な闇の瘴気の圧力が、3人を襲う。

光の聖霊「・・・グォォォォォォーッ!」
セージ「・・・オイオイ・・・ここにおわすのは光の聖霊様じゃなかったのかよ・・・あれじゃまっくろくろすけじゃねぇか。」
シオン「なんという邪気・・・まさかここまでとは・・・!」
ルナ 「シオン様!セージ!」

祭壇の間を包む闇から、無数の魔物が生み出される。

セージ「やべぇな・・・早いとこなんとかしねぇと、あいつの瘴気から生み出される魔物でこの部屋が埋め尽くされちまうな。」
ルナ 「闇が濃い・・・魔物の強さも尋常ではなさそうですわね・・・!」
セージ「さて・・・シオン、さすがの俺たちもこれじゃ長くはもたねぇぞ。悪りぃけど、さっさと決めてくれ。」
ルナ 「声霊術の発動までは、わたくしたちが命にかえてもシオン様を守り抜きます!」
セージ「頼むぜ!・・・風刃の魔術・ブレイドトルネード!」
ルナ 「奥義・無双剣舞!はぁぁぁぁぁっ!」

セージとルナが、魔物達と戦い始める。

シオン「声霊術・術式展開!光の聖霊よ、俺の声が、聞こえるか・・・?」
光の精霊「クルシイ・・・キサマラノセイデ・・・ユルサヌ・・・!」
シオン「お前を、その苦しみから救ってみせる・・・俺の声は、そのためにある・・・!
俺の声に、ありったけの霊力を込めて・・・届け!俺の声よ!闇に呑まれし聖霊の御霊を・・・導けぇっ!」

シーン②
授業中の学院

先生 「世界を創造した神々は、人々をより良く導き、助けるための存在として聖霊を
お創りになりました。聖霊たちは、霊窟の祭壇から、火や水、風、土といった、
それぞれの属性に応じた祝福や恩恵を、人々にもたらしました。人々の暮らしは
豊かになりましたが、さらなる豊かさを求める人の欲が、そこに闇をもたらしまし
た。人の心より生まれし闇は、聖霊たちを悪しき存在へと変え、破壊と混沌を人々
にもたらすようになったのです・・・。」

授業後。
学院の校庭で、一人黄昏るレン。

レン 「・・・その闇を払い、聖霊たちをあるべき姿へと還す、選ばれしもの。それが
【声霊術師】・・・か。」
生徒1「おい、聞いたか?シオン様の話!」
生徒2「聞いた聞いた!難易度Sランクの光の霊窟を浄化したんだろ!すげぇよな!」
生徒3「さすがシオン様!私たちの憧れ、目標よねー!」
レン 「・・・。」
ユイ 「なーに暗い顔してんのよ、レン。」
レン 「・・・ユイ。」
ユイ 「お昼ご飯食べた?」
レン 「まだだけど・・・。」
ユイ 「じゃあ、一緒に食べよ!ほら、行くよ。」
レン 「うん・・・。」
ユイ 「・・・それにしても、すごいよね、シオンさん」
レン 「・・・そうだね。」
ユイ 「レンもさ、この学院を卒業したら、いつかシオンさんみたいになるのかな・・・?」
レン 「・・・なれないよ。」
ユイ 「レン?」
レン 「・・・兄弟でも、才能に溢れてて、数多の聖霊からも愛されてる兄さんと僕は違う。基本の呼吸すら上手にできない・・・。声霊術の源になる霊力だって標準以下・・・。クラスメイトが浄化できる、低級の聖霊でさえ浄化できたことなんてない・・・。」
ユイ 「でも!レンは学院の声霊術学科に入れたじゃない!霊窟を攻略するための冒険者を育てるこの学院・・・だけど、誰もが声霊術師になるための声霊術を学べるわけじゃない。声霊術師としての資格と才能がなければ・・・!」
レン 「何かの、間違いだったんだよ。それか・・・期待したんじゃないかな。『あの天才シオンの弟なら、きっと同じようにすごい声霊術師になるんじゃないか』って。その期待は見事に裏切ったわけだけど。」
ユイ 「そんなこと・・・!」
レン 「もうみんな気付いてるんだよ、僕には何を期待しても無理なんだって。だって僕はできそこないの落ちこぼれ・・・。」
ユイ 「うるさい!馬鹿!」

レンの頬を打つユイ

ユイ 「・・・だったら、なんであんたは努力してるの?知ってるんだからね、あんたが授業終わった後も、一人残って呼吸と、基本の声霊術の練習してるの。全部ずっと見てたんだから!周りのクラスメイトが、今更そんなことしたって何にもならないのにって笑っても、馬鹿みたいに毎日毎日繰り返して練習してるのは・・・なんのためよ!」
レン 「・・・痛い・・・。」
ユイ 「当然よ!思いっきりぶっ叩いてやったんだから!人の気も知らないで、この馬鹿!」

怒ってどこかへ行ってしまうユイ。

レン 「・・・ユイにはわからないんだ。偉大な兄を持ってしまった出来の悪い弟の苦労
も・・・比べ続けられる辛さも・・・。」
セージ「そうだなぁ・・・シオンと比べて、俺は全く偉大な兄じゃねぇからなぁ。」
レン 「セージさん!?」
セージ「あいつ馬鹿力だから痛かったろ。悪かったな。」
レン 「セージさん・・・その、さっきの言葉は・・・。」
セージ「気にしてねぇよ。俺がダメな兄貴だってのは俺がよーく知ってるからよ。」
レン 「そんなことないです!セージさんは・・・世界でも五本の指に入る偉大な魔術士じ
ゃないですか!」
セージ「そう!すっげぇ苦労して魔術を極めてよ!やれ天才だの最強だのと世間様は持ち
上げてくれるのに、ユイのやつは全然認めてくんねぇの!おかしくねぇ?」
レン 「そ、そうですね・・・。」
セージ「・・・っと、こうしてる場合じゃねぇな。行くか。」
レン 「え?行くってどこへ?」
セージ「決まってんだろ。学食だよ。ユイと飯食いに行く途中だったんだろ?ユイの代わり
に俺が飯ご馳走してやんよ。」
レン 「え?でも、いえ、そんな悪いですし・・・。」
セージ「気にすんなって。オラ、もたもたしてっと昼休み終わっちまうぜ。行くぞー!」

セージに連れて行かれるレン

シーン③
レンの自宅前

ユイ 「・・・そろそろ、レン帰ってくるかな・・・あぁ・・・なんで私レンのことぶっち
ゃったんだろ・・・。謝ったら許してくれるかな・・・許してもらえなかったらど
うしよう・・・あぁ!もう、モヤモヤする・・・!」
マナ 「・・・あの。」
ユイ 「ひゃい!?」
マナ 「きゃあ!」
ユイ 「ご、ごめんなさい!急に後ろから声かけられたからビックリして・・・。」
マナ 「すみません・・・急に後ろから声をかけてしまって・・・あの・・・」
ユイ 「なに?」
マナ 「レンさん・・・戻ってらっしゃいますか・・・?」
ユイ 「え?レン?・・・まだだけど・・・レンに何か用事があるの?」
マナ 「はい・・・お願いしたいことが・・・。」
ユイ 「お願い?」
レン 「・・・ユイ?」
ユイ 「ひゃあっ!」
レン 「ご、ごめん!」
ユイ 「レ、レン!?お帰りなさい・・・!」
レン 「う、うん・・・ただいま・・・。」
ユイ 「・・・あ、あのねレン。お昼のことなんだけど・・・!」
マナ 「レンさん。」
ユイ 「うわっ!」
レン 「え、あ、はい・・・?」
マナ 「助けてください・・・!」
レン 「助ける・・・?」
マナ 「貴方の力が、必要なんです・・・!」
レン 「ユイ、この子は・・・?」
ユイ 「私も知らないわよ!レンの帰りを待ってたら、急に声かけられて・・・。」
マナ 「どうかお願いします・・・聖霊を・・・浄化してください・・・!」
レン 「え・・・!?」
ユイ 「今、聖霊の浄化って・・・?」
マナ 「貴方の力で、どうか聖霊を助けて・・・。」
レン 「・・・無理だよ。」
マナ 「・・・え?」
ユイ 「レン!」
レン 「僕には、そんな力なんてない。きっと君は兄さんと僕を間違えてるんだ。悪いけど、兄さんはまだ戻ってきてないんだ。兄さんが戻ってきたら、君のこと伝えておくから・・・。」
マナ 「間違えてなんかいません!間違えるわけありません!だって、私は・・・私は、貴方に・・・!」
レン 「え・・・?ちょっと・・・君・・・?」
セージ「あーあー、可愛い女の子泣かしちゃって。罪な男だねぇ、お前も。」
ユイ 「お兄ちゃん!?どうしてここに?」
セージ「愛しの妹の帰りが遅いからさ、心配して様子見に来たわけよ。」
ユイ 「いつまでも子供扱いしないでよ!この馬鹿兄!」
セージ「んで、どーすんの、レン。泣いてる女の子、ほっとくの?」
レン 「それは・・・。」
ユイ 「そうだよ!この子はレンの力が必要って言ってるんだよ!シオンさんじゃなくて、レンの!」
レン 「・・・そんなこと言われても・・・僕には・・・。」
セージ「シオンだって最初から凄かったわけじゃねぇ。失敗したことなんて山のようにある。それでもあいつは前に進み続けた。血の滲む、それこそ地獄みてぇな修練を経て、今のあいつがあるんだ。あいつを一番近くで見続けてきたお前は、本当はそれをわかってるはずだ。だから、誰に何を言われようが、努力を続けてる。そうだろ?」
ユイ 「お兄ちゃん・・・。」
セージ「結果なんてもんはな、そのうちついてくんだ。結果を出すための努力を、結果が出る前にやめちまうなんて、もったいねぇぞ。」
レン 「・・・。」
セージ「やれやれ・・・お嬢ちゃん、今日のところは帰ってくんな。」
ユイ 「ちょっとお兄ちゃん!」
マナ 「いやです!レンさんのお力を借りられるまで私は・・・!」
セージ「最後まで話を聞きなって。今日はもう遅い。はいそうですかって言って、今すぐ出発ってわけにはいかねぇだろ?」
マナ 「え・・・?」
セージ「レン、明日の朝までに準備整えろ。粗暴な妹の面倒をいつも見てくれてる礼に、おにーさんがお前に結果ってやつを出させてやる。」
レン 「え・・・?」
セージ「ちなみにお前に拒否権はねぇ。嫌だっつっても、無理矢理連れてくから覚悟しろ。」
ユイ 「さっすがお兄ちゃん!大好き!」
セージ「そうだろう!そうだろう!お兄ちゃんはさすがなのだ!もっと褒め称えなさい。」
マナ 「ありがとうございます・・・!」
レン 「・・・聖霊を・・・浄化・・・。できるのか・・・僕に・・・?」

シーン④
雪山の山頂付近

ユイ 「・・・さむい・・・ねぇ・・・まだつかないの・・・?」
マナ 「すみませんユイさん・・・あともう少しですから・・・。」
セージ「勝手についてきて文句ばっか言ってんじゃねぇよ。嫌なら帰れ。」
ユイ 「いやですー!それに、お兄ちゃん魔術士としては一流だけど、物理戦闘はからきしじゃん!この間だって、魔法が効かない魔物が出てきて、ルナさんがいないと死ぬところだったんでしょ!?」
セージ「・・・ルナめ・・・余計なこといいやがって・・・。」
マナ 「あ!見えました・・・あそこです。あそこが霊窟の入り口です・・・!」
ユイ 「本当!?よーっし、じゃあここからが本番ってわけね!行くよレン!」
レン 「・・・。」
ユイ 「・・・レン?」
レン 「・・・マナ、本当にあの中に行かなきゃいけないの・・・?」
マナ 「・・・はい。」
レン 「・・・こんな大きな力・・・僕にはどうすることもできない・・・無理だよ・・・!」
マナ 「レンさん・・・。」
ユイ 「なに今更びびってんの!ここまできたんだからあとはやるだけでしょ!大丈夫、こっちには世界最強の魔術士がいるんだから!ねぇ、お兄ちゃん?」
セージ「・・・ああ、そうだな。」
ユイ 「それに、私だって頑張って役に立ってみせるから!これでも学院の剣術科では、トップの成績なんだからね。だから・・・大丈夫。レンの努力は、絶対無駄じゃなかったって、今日、ここで証明しようよ!」
レン 「でも・・・。」
マナ 「大丈夫です。レンさん・・・私も、貴方のお役に立てるよう、頑張ります・・・。だから、信じてください・・・。」
レン 「信じる・・・?」
マナ 「はい・・・貴方を信じる、私たちのことを。そして・・・貴方自身のことを・・・。」
レン 「・・・。」
マナ 「行きましょう・・・貴方の助けを、聖霊が待っています・・・。」
ユイ 「行こう、レン!」
レン 「・・・うん。行こう・・・。」

霊窟の入り口に向かって進むマナ、ユイ、レン。
一人、動かないセージ。

ユイ 「もう、何やってるのお兄ちゃん!置いていくよ!」
セージ「ああ!今行く!・・・嫌な予感がするな。一応、予防線は張っておくか・・・。」

シーン⑤
霊窟内部

ユイ 「へぇー・・・話には聞いてたけど・・・霊窟の中ってこんなに明るいんだ・・・。」
セージ「・・・マナちゃん、ここにいる聖霊は、本当に闇に堕ちてるのか?」
マナ 「・・・はい。」
ユイ 「どうしたの?お兄ちゃん」
セージ「俺が今まで攻略してきた、霊窟には、ここまでの光を放つものは一つもなかった。闇に堕ちた聖霊に、光を満たす力なんてあるわけがないからな。」
レン 「それって、どういう・・・?」
セージ「マナちゃん、君は俺たちに何か隠し事をしてないかい?」
マナ 「・・・してません。」
セージ「君からは、人ならざるものの気配がする。それも、隠し事ではないのかい?」
ユイ 「お兄ちゃん!いきなり何言って・・・!」
マナ 「・・・隠していたわけではありません。言う必要がないと思ったので、お伝えしていなかっただけです・・・。」
レン 「マナ・・・君は一体・・・?」

轟音が響く。

ユイ 「なに!?なんの音!?」
マナ 「入口が・・・閉ざされた・・・。」
グレンフレア(声)「我が領域で何を騒いでいる・・・愚かな人間どもよ・・・。」
ユイ 「・・・何この声・・・!?頭が・・・痛い・・・!」
セージ「ここまでのプレッシャーを放つ聖霊に、俺が今まで気づかなかっただと・・・!?」
レン 「あ・・・あぁ・・・!」
マナ 「話を・・・私の話を聞いてください・・・!グレンフレア・・・!」
グレンフレア(声)「貴様の話など聞く耳もたぬと、何度言ったらわかる・・・。」
マナ 「貴方は、闇に侵されているのです!どうか・・・どうか以前の優しい貴方にお戻りください・・・!」
グランフレア(声)「戻ったところでどうなると言うのだ。また人間が生み出す闇に囚われ、闇に堕ちる。それを繰り返せと・・・?」
マナ 「違います・・・!」
グランフレア(声)「人間・・・我ら聖霊を汚し、闇に堕とした元凶である、汚らわしき存在・・・!許さぬぞ・・・生きてここより出られると思うな・・・!」

グランフレアが放つ瘴気が、一瞬で霊窟に満ちる。
あたりが闇に覆われ、無数の魔物たちが生まれいでる。
魔物たちの叫びが、鳴り響く。

ユイ 「・・・嘘でしょ・・・こんなたくさんの魔物が一瞬で・・・!」
レン 「無理だ・・・やっぱり来るんじゃなかったんだ・・・!」
セージ「・・・マナちゃん、一つだけいいか?」
マナ 「・・・はい。」
セージ「君を、信じてもいいのか?」
マナ 「はい。」
セージ「わかった・・・刃雷の魔術・サンダースピア!」

セージの放つ、無数の雷が、槍の如く魔物たちを穿つ。

セージ「ユイ、ここは俺が引き受ける。お前は死んでもレンを祭壇まで連れていけ。あいつ
を浄化できるのは、レンしかいないんだからな・・・頼んだぜ」
ユイ 「・・・わかった!」
セージ「レン!この場に声霊術師はお前しかいない・・・どんなに怖くても、きつくても、お前がやらなきゃならねぇんだ。」
レン 「・・・できないよ!今まで一回も・・・たったの一回も、成功したことがないんだ・・・こんな・・・こんな僕ができるわけ・・・!」
セージ「その一回を起こすために、今まで諦めずに努力してきたんだろ?」
レン 「・・・!」
セージ「やっぱりお前ら兄弟は似てるぜ。あいつも諦めが悪くてな。無理だ無茶だって何度も言っても挑戦することをやめやしねぇ。」
レン 「似てないよ・・・僕と兄さんは・・・違う・・・僕は兄さんのようにはなれない・・・。」
セージ「当たり前だ!あいつみたいになる必要なんかあるかよ!レン、お前はお前だ!お前のなりたいようになりゃあ良いんだよ!」
レン 「セージさん・・・。」
セージ「何よりよ・・・可愛い女の子が二人も、お前に期待してんだぜ。燃えるシチュエーションじゃねぇかよ・・・男ならビシッとカッコつけろや!・・・氷牙の魔術・フリージングエッジ!」

セージの放つ、無数の氷の刃、魔物たちを切り裂く。

セージ「行け、お前ら!」
ユイ 「行くよ!レン!マナ!」
マナ 「ありがとうございます・・・!」
レン 「セージさん・・・!どうか・・・死なないで・・・!」

奥に進む三人。

セージ「やれやれ・・・予防線張っといて正解だったな・・・。とはいえ、間に合うかどうか・・・。ま、こうなっちまったもんはしゃーねぇか。俺は俺の、やるべきことをやりますかね・・・。てめぇら!こっから先は一歩も通さねぇぞ・・・全員まとめて闇に還してやるから、覚悟しやがれぇ!」

シーン⑥
祭壇の間の、扉が開く。

ユイ 「ここが、祭壇の間・・・?」
マナ 「・・・はい。」
ユイ 「レン、大丈夫・・・?」
レン 「・・・わからない。」
ユイ 「レン・・・。」
レン 「でも・・・やるしかないのは、わかってるから・・・。」
マナ 「大丈夫です・・・レンさんならきっと、うまくいきます。」
レン 「マナ・・・君はどうして、そこまで僕のことを・・・。」
マナ 「・・・貴方に、救われたからです。」
レン 「え・・・?」
グレンフレア「なるほどな。その人間が貴様を狂わせた元凶というわけか・・・。」
レン 「ぐっ・・・がはっ・・・!」

突然現れたグレンフレアに首を掴まれるレン

マナ 「レンさん!」
ユイ 「・・・その手を・・・離せぇっ!」
グレンフレア「フン!」
ユイ 「きゃぁっ!」

グレンフレアの放つ炎に吹き飛ばされるユイ。

レン 「ユイ!・・・ぐあぁっ・・・!」
グレンフレア「他の者よりも、己の心配をしたらどうだ?声霊術師。」
マナ 「やめてください、グレンフレア!」
レン「グレンフレア・・・こいつが・・・!」
グレンフレア「そうだ。我こそが炎の聖霊たちの王。焔の神霊・グレンフレアだ。」
レン 「聖霊の・・・王・・・!?」
グレンフレア「本来であれば、貴様ら人間風情の前に姿を現すなどあり得ないこと。我が手にかかって死ねること、光栄に思うがいい。」
レン 「がは・・・っ!」
ユイ 「・・・させるかぁっ!」

グレンフレアに向かって攻撃するユイ。

グレンフレア「ほう・・・まだ向かってくる元気があったか。」
ユイ 「聖霊の王だかなんだか知らないけど・・・闇に堕ちたくせに偉そうにしてんじゃないわよ!」
グレンフレア「我は堕ちたのではない。貴様ら人間の望みを叶えてやるべく、闇に堕ちてやったのだ・・・。」
ユイ 「なによそれ・・・。」
グレンフレア「人間は、滅びたいのだろう。だから愚かにも、闇を生み出し続けている。」
ユイ 「何を馬鹿なこと言ってんのよ・・・そんなわけ・・・!」
グレンフレア「ならばなぜ、闇を生むと知っていながら、貴様らは尚求めようとする?その欲を、止めようとしない?」
ユイ 「そんなこと・・・知らないわよ!」

ユイの一撃が、グレンフレアを退かせる。

グレンフレア「・・・ほう。」
ユイ 「レン、声霊術の準備を!その間は、私があいつを食い止めるから・・・!」
マナ 「私も、戦います!セージさんほどではありませんが、少しなら魔術が使えます。
時間稼ぎくらいなら、なんとかお役に立てるはずです・・・!」
グレンフレア「愚かな・・・たった二人では、足止めにもならぬわ。」
ユイ 「やってみなくちゃわかんないでしょ!」
グレンフレア「炎に焼かれて死ぬがいい!」
マナ 「盾の魔術・ホーリーシールド!」
グレンフレア「むっ・・・!我の炎を防いだだと・・・!」
ユイ 「・・・奥義・・・無双剣舞!はぁぁぁぁっ!」
グレンフレア「小娘が・・・小癪な・・・っ!」
レン 「・・・セージさんが、ユイが、マナが・・・頑張ってるんだ・・・!僕が・・・
僕がやらなきゃ・・・!やるしかないんだ・・・!集中しろ・・・届け・・・届け!
僕の声・・・!術式展開!聖霊よ・・・僕の声を聞けぇぇぇっ!」
グレンフレア「そのような小さく、か細い声が、我に届くと思ったか?舐めるなよ、人間!」
マナ 「きゃぁっ!」
ユイ 「くうっ・・・!」
レン 「うわぁっ!」

グレンフレアの放つ炎の衝撃で、吹き飛ぶ三人。

グレンフレア「この程度の力で、我をどうにかできると思っていたのか?驕りがすぎるぞ
人間風情が!」
レン 「・・・やっぱり僕じゃ・・・僕じゃ無理だったんだ・・・。」
グレンフレア「楽に死ねると思うな・・・!その魂も灰になるほどの炎で貴様を焼き尽くし
てくれるわ!」
ユイ 「レン・・・逃げて・・・!」
グレンフレア「死ねい!」
マナ 「盾の魔術・ホーリーシールド!」
グレンフレア「・・・馬鹿な真似を。そのような盾でいつまでも防げる炎ではない。そのま
まではいずれ貴様が焼かれることになるのだぞ!」
マナ 「・・・構いません。」
グレンフレア「何?」
マナ 「この命が今あるのは、レンさんのおかげです。レンさんが私を救ってくれなければ、私はあの時に消えていた・・・だから!レンさんを守れるのなら、この命が消えても構いません!」
グレンフレア「何故だ!?貴様は我と同じ存在・・・聖霊の王なのだぞ!その貴様が何故!そうまで愚かな人間に肩入れする!」
ユイ 「マナが・・・聖霊の王・・・?」
レン 「マナ・・・。」
マナ 「レンさん・・・思い出してください。貴方は無力なんかじゃない。貴方の声があったから、私は消えずに、この世界にいられたのです・・・私は、あの時貴方に救われた・・・貴方の、優しい・・・陽だまりのような言葉に・・・。」

シーン⑦
回想

マナ 「・・・闇が・・・私の魂を蝕む・・・このままでは・・・。」
闇の声「まだ遅くはない。霊窟に戻り、祭壇にて闇を受け入れよ・・・そうすればお前は、消えずに済む・・・。」
マナ 「・・・闇の力などに、私は屈しはしない!」
闇の声「このまま消えるというのか・・・?愚かで、自分勝手な人間共の欲のために聖霊の王たるお前が。そうなれば、お前を慕う聖霊たちはどうなる?」
マナ 「それは・・・。」
闇の声「聖霊を私利私欲のために利用し、敬うことも畏れることもしなくなった、あの人間共が、お前に何かしてくれたか・・・?」
マナ 「うるさい・・・。」
闇の声「今のお前の苦しみの元凶は、人間たちのせいだ。」
マナ 「うるさい・・・!」
闇の声「認めろ。そして闇を受け入れろ・・・そうすればこの苦しみから解放される・・・さあ、闇と一つになるのだ・・・!」
マナ 「うるさい!だまれ!」
レン(子供)「あ、ご、ごめんなさい!うるさかった・・・?」
マナ 「・・・え?」
レン(子供)「ぼく、おにいちゃんみたいになりたくて・・・おにいちゃんが、はっせいれんしゅうっていうのをやってたから、おんなじことやればなれるかなって・・・。でも、ごめんなさい。うるさかったよね・・・?」
マナ 「貴方は・・・私が見えるのですか・・・?」
レン(少年)「みえるよ?どうして?」
マナ 「私にはもう・・・実体を保つだけの力なんてないはず・・・。」
レン(少年)「ちからがでない・・・?おねえさん、おなかすいてるの?ちょっとまってね。はい、これどうぞ!」
マナ 「これは・・・?」
レン(少年)「あんぱんっていうんだ。すっごくおいしくて、ぼくだいすきなの!これたべたら、おねえちゃんもげんきひゃくばいになるよ!」
マナ 「・・・ありがとう。でも、私は大丈夫だから・・・貴方が食べて。」
レン(少年)「わかった!じゃあ、はんぶんこしよう!ぼくがはんぶんたべるから、おねえちゃんもはんぶん、いっしょにたべよ!」
マナ 「でも、私は・・・。」
レン(少年)「はい、どうぞ!」
マナ 「・・・え?・・・パンが・・・持てた・・・!?」
レン(少年)「じゃあ、いっしょにたべよ!せーの、いただきます!」
マナ 「・・・いただきます。」
レン(少年)「おいしい!ね、おねえちゃんもおいしいよね?ね?」
マナ 「・・・うん・・・とってもおいしい・・・!」
レン(少年)「どうしたの?おねえちゃん。なんでないてるの・・・?むしばだった?」
マナ 「違う・・・違うよ。とってもおいしくて・・・びっくりしちゃった・・・。」
レン(少年)「ほんとうに?どっかいたいところとかあるの?」
マナ 「本当よ、だから大丈夫・・・。」
レン(少年)「がまんはよくないよ!ないてるんだもん、いたいんだよね?ちょっとまってて!・・・いたいのいたいの・・・とんでけー!・・・いたいのいたいの・・・とんでけー!」
マナ 「え・・・?」
レン(少年)「おにいちゃんがいってたんだ!ことばには、ことだまっていうすごいちからがあって、そのちからで、すごいきせきがおこせるんだって!だから、ぼくのことばで、おねえちゃんのいたいのをふきとばすんだ!・・・いたいのいたいの・・・とんでけー!」

必死になって「痛いの痛いの飛んでけ」をくりかえすレンに思わず笑うマナ。

レン(少年)「あ!おねぇちゃんわらった!いたいのとんでった?」
マナ 「うん、おかげで痛いの飛んでちゃったよ。ありがとうね。」
レン(少年)「よかった!」
シオン(声)「レーン!ここにいるのかー?」
レン(少年)「あ、おにいちゃんだ!おにいちゃーん、ここだよー!」
シオン「こんなところにいたのか。森の奥に行っちゃいけないって父さんに言われてるだろ?」
レン(少年)「あ、おねえちゃん!これがぼくのおにいちゃん・・・って、あれ?」
シオン「どうした?」
レン(少年)「おかしいな・・・さっきまでおねぇちゃんがここにいたのに・・・どこいっちゃたんだろ・・・?」

シーン⑧

マナ 「・・・貴方の言葉がなければ、私は消えていました・・・。貴方の言葉が、私を救
ってくれたのです・・・。」
レン 「あの時のお姉さんが・・・マナ・・・?」
マナ 「貴方が分けてくれたあんぱんの味、いまでもはっきりと覚えています。ほんとうに美味しかった・・・また一緒に・・・あんぱん食べましょう・・・。」
レン 「マナ・・!」
マナ 「大丈夫・・・貴方なら・・・大丈夫ですから・・・!自分を信じて・・・!」

魔法の盾が砕け、炎に包まれるマナ。

レン 「マナぁぁぁぁぁっ!」
グレンフレア「愚かな・・・人間などに肩入れなどしたばかりに・・・。」
ユイ 「愚かなんかじゃないよ・・・マナは、自分の想いを、信念を貫いたんだ。信じる人に、希望を託したんだ!闇に負けて、堕ちた貴方なんかに、マナを悪く言う資格なんて・・・ない・・・!」
グレンフレア「なんだ・・・この力は・・・!?」
ユイ 「レン、立って!まだいけるでしょ!」
レン 「ユイ・・・。」
ユイ 「しっかりしなさい!マナの気持ちを無駄にするの!?貴方ならって信じてくれたマナの気持ちを!」
レン 「・・・僕は・・・。」
ユイ 「・・・本当はね、私もレンに助けられてたんだ。辛いことがあっても、苦しいことがあっても、レンの言葉が、優しさが・・・いつも私を助けてくれた。支えてくれた。だからね・・・決めてたんだ。レンが辛い時、苦しい時は、絶対に私が助けようって。力になろうって。」
レン 「ユイ・・・。」
ユイ 「貴方の言葉は、私と、マナを救った。だから大丈夫!きっと、あいつも・・・救えるよ。レンなら出来る・・・信じてるから・・・。」
グレンフレア「笑わせる・・・貴様らの惰弱な声が、我に届くなど、ありはしない!」
ユイ 「・・・届いて、私の言葉・・・きっとレンなら大丈夫。レンなら、あいつを浄化してくれる!だから・・・それまでは私が!・・・ハァァァッ!」

再び、グレンフレアに斬りかかるユイ。

レン 「・・・ユイ・・・マナ・・・。僕は・・・僕は・・・っ!うおぉぉぉぉぉっ!」
グレンフレア「馬鹿な!?なんだこの霊力は・・・!?」
レン 「僕は・・・馬鹿だった・・・二人が・・・こんなにも僕を信じてくれていたのに、僕は自分を信じてなかった・・・僕なんかに出来るわけないって、いつも心のどこかで怖がって・・・できなかった時の言い訳ばかり考えて・・・・!飛んでけ・・・怖さも、臆病も、言い訳も・・・もういらない・・・!飛んでけ!飛んでけぇ!」
グレンフレア「・・・まだ力が上がるだと!?させぬ・・・させぬぞ・・・!」
ユイ 「レンの邪魔は・・・させない!」
グレンフレア「どけ!小娘!」
ユイ 「くっ!しまった!」
グレンフレア「死ねぇ!」
ルナ 「奥義!斬鉄一閃!」
グランフレア「がはっ!」
ユイ 「ルナさん!」
ルナ 「ユイ、頑張りましたわね。あとはわたくしたちに任せなさい。」
セージ「縛鎖の魔術・マジックチェーンバインド!」
グランフレア「ぐっ!こんなもので・・・我を縛れると・・・!」
セージ「無駄だぜ。世界最強の天才魔術士・セージ様の全魔力を使って作った鎖だ。たとえ聖霊の王とはいえ、そう簡単には破れねぇよ。」
ユイ 「お兄ちゃん!」
セージ「・・・とはいえ、あの位じゃ時間稼ぎにしかならねぇか・・・。もって10・・・いや、5分ってとこだな。どうするよ?」
シオン「・・・5分あれば十分だ。」
ユイ 「シオンさん!」
レン 「兄さん・・・。」
シオン「よくやったな、レン。後は俺が・・・。」
レン 「僕がやる。」
ユイ 「レン・・・!」
レン 「兄さん・・・ごめん。これだけは譲れないんだ。・・・初めてなんだ。誰かのために、何かしたいって、こんなに強く思ったのは。自分を信じてくれた人たちの想いに応えたい・・・。自分自身の力で・・・!」
シオン「・・・。」
レン 「わがままだってわかってる!そんなわがままを言ってる場合じゃないってこと
も!でも。僕は・・・!」
シオン「呼吸が荒くなっているぞ。静かに深く息を吸って呼吸と霊力を整えろ。」
レン 「え・・・?」
シオン「セージのくれた時間は、5分しかない。喋ってる暇も、ボケっとしてる暇もないん
だ。集中しろ。」
レン 「兄さん・・・。」
シオン「レン・・・お前は昔からずっと、誰かのためを思って動いてた。俺は、そんなお前
が誇れる兄でいたくて、ずっと必死に頑張っていたんだ。だから、きっとお前にも
出来る。あいつを・・・闇から救ってやれ・・・!」
グレンフレア「救う・・・?散々我ら聖霊を苦しめてきた貴様らが・・・今更・・・?
    思い上がるな・・・神にでもなったつもりかぁぁぁぁっ!」
セージ「馬鹿な!?こんなに早くマジックチェーンバインドを!?」
グランフレア「・・・お前がいなければ・・・あやつが人間に肩入れすることはなかった・・・
    お前がいなければ・・・あやつが我に焼かれることも・・・我があやつを焼くこと
もなかった・・・!許さぬ・・・許さぬぞぉっ!」

全身から、凄まじい爆炎を放つグランフレア

シオン「・・・くっ・・・一体・・・何が・・・?」
セージ「・・・よぉ・・・生きてるか・・・シオン・・・。」
シオン「セージ!しっかりしろ!」
セージ「・・・すまねぇ・・・今の俺の魔力じゃ、お前一人を守るのが、精一杯だった・・・。」
シオン「・・・レンは?ルナ!ユイ!返事を・・・!」
ユイ 「シオンさん!お兄ちゃん!ルナさんが・・・私をかばって・・・!」
ルナ 「・・・当然ですわ。可愛い後輩を守るのが、先輩であるわたくしの・・・役目・・・。」
シオン「ルナ!」
ルナ 「わたくしのことより!まだ・・・終わっていませんわ・・・!」
グレンフレア「・・・まだ、生きているのか・・・まあ、いい。一番始末したかった人間は、
始末できたようだからな。」
シオン「なん・・・だと・・・?」
ユイ 「レン・・・嘘だよね・・・?マナの想いに応えるんでしょ・・・?あいつを浄化す
るんでしょ・・・?ねえ、返事をしてよ・・・!起きてよ!レン!いやだよ・・・
こんなの・・いやぁぁぁぁっ!」
シオン「・・・術式展開。」
グレンフレア「いい目をしているな人間・・・必死に抑えていても、貴様の目には憤怒の炎
が灯っている!大事なものを奪われ、傷つけられ・・・それでも我を救うというの
か!救いたいと思えるのか!声霊術師よ!」
シオン「救うさ!それが・・・声霊術師だ!」
グレンフレア「戯言を・・・ぬかすなぁっ!」
ルナ 「斬鉄・・・一閃・・・!」
グレンフレア「ぐぅ・・・っ!」
ルナ 「シオン様の・・・邪魔はさせません・・・わ・・・!」
シオン「ルナ!」
ルナ 「シオン様!今は術に集中なさって・・・!ユイ・・・!何をしているの・・・!
貴方はまだ・・・戦えるでしょう・・・!立ちなさい・・・レン君のためにも・・・
立って戦いなさい!」
ユイ 「・・・レンの・・・ため・・・。」
ルナ 「ユイ・・・わたくしの剣を、貴女に託します・・・どうか・・・シオン様を・・・
レン君の最後の願いを・・・貴女が守って・・・!」
ユイ 「・・・レン・・・見てて。貴方と、マナの想い・・・私が引き継ぐから。レンが
あいつを浄化するところ・・・見れなかったのは残念だけど、シオンさんがあいつ
を浄化できるよう、全力でサポートするから・・・!奥義・・・無双剣舞!」
グランフレア「貴様もいい目をしている!憎いのだろう?我が!」
ユイ 「黙れぇっ!」
グレンフレア「そうだ!もっと憎め!もっと憤怒の炎を燃やせ!貴様の闇を見せてみろ!」
シオン「・・・やはり、それが狙いか。我々の怒りを、憎しみを煽り、闇の力を増大させよ
うとしたのだろうが・・・そうはいかん!今こそ、その怒りから・・・闇から、
お前を解き放つ!浄化の時だ・・・焔の神霊よ!俺の声を・・・聞けぇぇぇぇぇっ!」

動きが止まるグレンフレア

グレンフレア「・・・聞こえたぞ・・・貴様の声が・・・。」
シオン「俺の声で・・・お前を光へと導く・・・そのまま俺の声を・・・。」
グレンフレア「心地のいい声だ・・・怒りと、憎しみが入り混じった最高の闇の声だよ!
声霊術師!」

シオンに向けて巨大な炎を放つグレンフレア

シオン「ぐわぁぁぁぁっ!」
ルナ 「そんな・・・!」
グレンフレア「礼を言わねばな。貴様の闇の声のおかげで、我は更なる力を手にすることが
できた。この力があれば、世界の一つや二つ焼き尽くすなど造作もないこと。そし
て・・・貴様にもだ、小娘。」
ユイ 「がは・・・っ!」
グレンフレア「とんだ笑い話だな。我を浄化しにきたはずが、かえって闇の力を増幅させる
とは・・・あの弱く、愚かな人間も、あの世で泣いているだろうよ。」
ユイ 「・・・レンは・・・弱くなんかない・・・愚かなんかじゃない・・・!」
グレンフレア「そうか。では、あの世で、そう言ってやるといい。」
ユイ 「きゃぁぁぁ・・・っ!」
セージ「ユイ!」
グレンフレア「・・・さて。次は貴様が死ぬか・・・?」
ユイ 「・・・たす・・・け・・・て・・・。」
グレンフレア「・・・まだ息があるのか・・・しぶとい人間だ・・・。」
ユイ 「・・・たす・・・け・・・て・・・・・・レン・・・。」
グレンフレア「哀れな・・・死んだ人間にすがるなど・・・。」
ユイ 「・・・レン・・・おねがい・・・たすけて・・・。」
グレンフレア「もういい、今、楽にしてくれる・・・!」
レン 「・・・いたいの、いたいの・・・とんでけ・・・。」

倒れていたレンが、立ち上がる。

グレンフレア「貴様・・・死んだはずでは・・・!?」
レン 「・・・ユイ・・・待ってて・・・今、いくから・・・・。」
ユイ 「レン・・・?レンの声が聞こえる・・・」
レン 「・・いたいの、いたいの・・・とんでけ・・・。」
グレンフレア「・・・なんだ・・・この光は・・・!?」
ユイ 「レン・・・レン・・・!」
グレンフレア「・・・小娘の傷が・・・癒えただと・・・!?」
レン 「・・・いたいの、いたいの・・・とんでけ・・・。」
シオン「・・・レンの声・・・?これは一体・・・!?」
ルナ 「わたくしたちの傷も・・・癒えていく・・・これも声霊術ですの・・・!?」
セージ「そんな出鱈目な声霊術・・・聞いたことねぇよ!」
グレンフレア「・・・何なのだ貴様は・・・!何だその目は!怒りでも・・・悲しみでもな
い・・・。その目で・・・我を見るなぁっ!」
ユイ 「危ない!レン!」
レン 「大丈夫・・・とんでけ・・・!」

グレンフレアの放った炎が、レンの目前ではじけて消える。

グレンフレア「ばかな・・・我の炎が・・・消しとんだ・・・!?」
レン 「貴方には聞こえませんか・・・?彼女の声が。」
グレンフレア「なに・・・?」
レン 「僕には聞こえる・・・消えてしまいそうなくらい、小さな声だけど、ずっと僕に
届いてた声が・・・今も・・・。」
シオン「・・・この・・・声は・・・!?」
ルナ 「嘘・・・!?」
セージ「・・・マジかよ・・・!?」
ユイ 「うん・・・聞こえる・・・聞こえるよ・・・レン・・・!」
マナ(声)「いたいの・・・いたいの・・・とんでけ・・・。」
ユイ 「マナの声が・・・聞こえる・・・レン・・・!」
グレンフレア「馬鹿な!我の炎に焼かれて消えた、あやつの声などするはずが・・・!」
レン 「彼女の声が・・・僕を救ってくれた・・・僕を再び立ち上がらせてくれた。だから
今こそ・・・マナの想いに・・・応えてみせる。貴方に必ず・・・マナの声を届け
てみせる・・・!」
グランフレア「何を言って・・・!?」
レン 「僕は・・・もう逃げない。自分の弱さからも、貴方の怒りからも。諦めるもんか!
貴方の苦しみも、悲しみも、全て受け止めて・・・貴方を救う。それが、声霊術師
である僕の使命だ・・・!」
マナ(声)「レンさん・・・大丈夫です。貴方なら・・・きっと・・・」
レン 「術式展開!」
グランフレア「何だこの力は・・・!」
シオン「行け、レン!」
ルナ 「レン君!」
セージ「決めろぉっ!」
ユイ 「思いっきり・・・やっちゃえーっ!」
マナ(声)「貴方の言葉を・・・届けて・・・!」
レン 「聞こえる・・・みんなの声が、僕を信じてくれるみんなの声が!今度は僕の番だ・・・
必ず・・・僕の声を、想いを、届けてみせる!」
グレンフレア「ぬぉぉぉぉっ!・・・我の炎が・・・闇が・・・光に飲まれていく・・・!?」
レン 「偉大なる焔の神霊グレンフレアよ、貴方の声を・・・聞かせてください!貴方の
気高き魂を再び燃え上がらせるために・・・!僕の声よ・・・憤怒の炎を超えて・・・
とどけぇぇぇぇぇっ!」

眩い光が、全てを包んでゆく。

シーン⑨
グレンフレアの心の中の世界

レン 「・・・ここは・・・?」
グレンフレア「我の心の中だ。人間よ。」
レン 「・・・じゃあ、僕の声は・・・?」
グレンフレア「・・・届いた。だからお前はここにいる。」
レン 「成功したんだ・・・良かった・・・。」
グレンフレア「・・・人間よ。一つ、お前に問いたい。」
レン 「なんですか?」
グレンフレア「我は、お前を信じ、守ってくれた者を焼き尽くした。それなのに、何故お前
はそうまでして我を救おうとする?我を憎いと思わぬのか?」
レン 「僕は・・・マナから託されたことを、やり遂げたいだけです。僕ならきっと、貴方
を浄化してくれるって。救ってくれるって、信じてくれた彼女の想いに、応えたい。
彼女の願いを、叶えたい。ただ・・・それだけです。」
グランフレア「あやつは、人間ではない。聖霊だ。それでも、あやつの想いを、願いを、
かなえるというのか?」
レン 「関係ないです。僕にとって、マナはマナです。僕を信じてくれた・・・大事な友達
です。」
マナ 「・・・ありがとう。レンさん。」

淡い光となったマナが現れる。

レン 「マナ・・・。」
マナ 「グランフレアを、救ってくれて・・・。」
グランフレア「・・・世話をかけたな、すまぬ。」
マナ 「・・・いえ。私もかつては闇に飲まれそうになった身。聖霊の魂さえも蝕む闇の恐
ろしさはよく知っています。そして・・・レンさん、私に続き、グランフレアを闇
から救ってくれたこと、本当に感謝しています・・・。」
レン 「君が・・・僕を信じてくれたから・・・君の優しい、暖かい声があったから・・・
僕は強くなれた。ありがとう・・・。」
マナ 「いえ・・・その優しさも、暖かさも、小さな貴方がくれたもの。おいしいあんぱん
と一緒に・・・・貴方に出会えて、もう一度また会えて、本当によかった・・・。」
レン 「ごめん・・・ごめん・・・マナ・・・。」

目から、涙がこぼれ落ちるレン。

マナ 「・・・いたいのいたいの・・・とんでいけ・・・。」
レン 「え・・・?」
マナ 「あの時・・・泣いていた私を、笑顔にしてくれた言葉・・・いたいのいたいの・・・
とんでけ・・・。」
レン 「マナ・・・。」
マナ 「泣かないで・・・貴方にはずっと、笑顔でいてほしい・・・私の分まで・・・。」
レン 「うん・・・泣かない・・・。でも、この痛みも忘れない・・・この心の痛みは・・・
僕が、君と一緒にいた証だから・・・!」
マナ 「グレンフレア。レンさんは、これから多くの聖霊たちの、光となる方。どうか、私
の分まで、レンさんを助けてあげてください・・・・。」
グレンフレア「・・・任せるがいい。」
マナ 「レンさん・・・もし聖霊にも、生まれ変わりがあって、遥かな時の流れの中で、
また貴方と巡り会うことができたら・・・その時は・・・また一緒に・・・」

眩しい光と共に、マナが消える。
現実世界に、意識が戻る。

ユイ 「レン・・・レン・・!」
レン 「・・・ユイ。」
ユイ 「良かった・・・!」
レン 「・・・心配かけたね、ごめん。」
シオン「レン。グレンフレアの浄化、見事だった。」
レン 「兄さん・・・。」
セージ「一気に兄貴のこと、超えちまったなぁ。やるじゃねぇかオイ!」
ルナ 「何をおっしゃいますの!レン君は確かにすごかったですけれど、まだまだシオン様
には及びませんことよ!」
セージ「おいおい・・・ついに脳味噌だけじゃなく、目ん玉まで馬鹿になっちまったかこの
脳筋女は。」
ルナ 「なんですってこの骨魔術士!」
レン 「・・・。」
ユイ 「・・・レン・・・大丈夫?」
レン 「・・・大丈夫だよ、ユイ。もう・・・決めたから。行こう!」
ユイ 「・・・うん!」
レン 「マナ・・・もう、君の声は聞こえないけど、君が僕に届けてくれた想いは、ずっと
忘れないから。君の分まで、強く生きるよ・・・いつか僕の声が、また君に届いた
時、君に笑ってもらえるように・・・。」

《おしまい》

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