完璧勇者とポンコツな仲間たち 8
「これだ……! この賞金首『首なし騎士(デュラハン)』を狩れば、一発で金貨五千枚!」
旅館の修理代で再び全財産が消え去り、今やポケットの中には1ブロンズ硬貨すら残っていないお荷物(エア)四人衆。
彼らは王都のギルドの掲示板の前で、飢えた獣のような目をしていた。
今回ばかりはアベルにバレないよう、彼が「王都中の全ドブ板の裏を大掃除するボランティア」に出かけている隙を狙って、手頃な賞金首(ウォンテッド)をハッタリだけで恐怖させて降伏させようという作戦である。
「首なし騎士が賞金首……ツッコミどころはありますが、これは神の導き(臨時収入)です」
「だけどさ、首なし騎士ってアンデッドの最高位だよ? 僕たちの実力(エア)で大丈夫かな?」
「心配するなメイ、あいつらは首なしだから知能は虫以下だ(大嘘)。私の『世界を震撼させる大剣(自称)』をチラつかせれば、ビビって降参するに決まっている!」
ジークも「まあ、一理あるな(いや、ないか?)」と頷き、四人は夜の墓地へと繰り出した。
不気味な月明かりの下、霧の向こうから、漆黒の鎧を纏い、己の生首を脇に抱えた凶悪な賞金首『首なし騎士(デュラハン)』が姿を現した。
その凄まじい死霊の覇気に、四人は一瞬で後悔し、膝をプルプルと震わせる。
「オノレ……生キタル者ドモ……我が呪いを受け――」
「ふ、ふん! 出やがったな、首なし野郎! 私のこの大剣の錆にしてくれるわ!」
レナが恐怖をゴマかすために大袈裟に叫び、重い大剣を構えようとした……が、案の定、自分の腕力のなさに負けて大剣を自分の足の小指の先に直撃させた。
「ふんぎゃあああーーーッ!!!(大絶叫)」
夜の墓地に響き渡る、鼓膜が破れんばかりのレナの断末魔。
だが、その絶叫がすべての引き金となった。
「――そこですね、レナさん! 敵の魂の隙を突く『絶叫の聖波(ホーリー・シャウト)』、お見事です!」
ガララララッ!!!
突如、墓地の地面を割って、いつもの眩い笑顔と「マイお掃除バケツ」を持った完璧超人・アベルが飛び出してきた。
ドブ板の掃除中、地下水道の壁を突き破って偶然ここに繋がってしまったらしい。
「レナさんの聖なる叫びに呼応して、俺が邪悪な呪いを浄化します! 神聖除霊魔術・究極清掃(ゴッド・サニタリー・バースト)!!」
アベルが手にしたバケツの「ただの聖水(アベルが朝、教会で何気なく汲んできた、国宝レベルの神聖流体)」を、首なし騎士に向けてバシャァァァン! と豪快にぶちまけた。
ジュワァァァァァァァッ!!!
「ギャアアアアア!? 冷たァァァい! 聖水が染みるぅぅぅ!!」
超高濃度の神聖エネルギーを浴びた首なし騎士は、生首ごと激しく煙を上げ、ただのピカピカに磨かれた『一塊の甲冑(レゴブロック状態)』へと急速に浄化・分解されていく。
「な、なるほど……! メイさんはその種火で周囲の霧を蒸発させ、チカさんは祈りで霊魂の退路を断ち、ジークさんはあえて存在感を消して背後の死角を塞いでいたのですね! 皆さんの完璧な包囲網のおかげで、俺のバケツ水が一滴も無駄になずに済みました!」
アベルは「さすがは世界最強のパーティ!」と目を輝かせ、四人の完璧な(大嘘の)連携に深く頭を下げた。
(バケツの水で、最高位アンデッドが溶けた……)
四人は灰になった賞金首の跡地を見つめ、泡を吹きそうになりながらも、必死に最強の笑みを貼り付けた。
「ふっ……。私の叫びで、奴の精神防御はゼロになっていたからな!」
「僕の『極小・ファイア』による熱気との相乗効果だよ!」
「神の神聖な洗礼(ただの水)でしたね、アベル様!」
「俺様の出番はなかったが……まあ、想定内だ!」
こうして、一歩もまともに戦うことなくバケツ一杯の水で金貨五千枚の賞金首を仕留め、再び財布を潤わせたエア四人衆。
「よし! 皆さんのおかげで王都の治安もドブ板も綺麗になりました! 明日はこの賞金で、『入った瞬間に魂が消滅する伝説の幽霊城』へ大掃除遠征に行きましょう!」
(もう家で普通に雑巾がけさせてくれえぇぇぇ!!!)
四人の悲痛な願いは夜の墓地に虚しく消え去り、家事万能の最強勇者とエア仲間たちのドタバタ珍道中は、霊界をも巻き込んでさらに加速していくのだった。
