戦場からお持ち帰りなんですか?(7)

7.戦争の代価

 王太子もわかってるってアビーが知ったら、まさに穴があったら入りたいだろうなぁ。王城に穴なんてないけど。

 その日の仕事を終えて、私は部屋に戻った。
 いつもアビーは難しそうな(きっと難しい)本を読んでいる。集中しているのか、私が帰ってきたことに気が付いていない。ちょっと寂しい。
「えっとアビー?」
 体をビクッとさせてこちらの世界に戻ってくる。今までどれだけ本の世界に没入していたのか。著者さんも喜ばれるだろう。

「今日は皇后さまとお話をしました。悲しいお知らせです!」
 アビーは何でも受け止めてやる!って態勢になってる。
「アビーが懸命に変装をしたけれど、陛下・皇后さま・王太子様にはお見通しだったみたいよ。なんだか拍子抜け。身分証明についてなんだけど、国のトップの3人が本人って言ってるんだから、証明されたようなもんだって」
 臨戦態勢だったアビーは拍子抜けしたのか、その場に座り込んでしまった。
「私は本気で変装したつもりだったのに、全く意味なくて、逆に面白がってたの?」
「面白がってたかどうかは知らないけど、アビーが懸命なのは伝わったんじゃない?」
「王太子様は私がアビーだってわかっていながら抱っこ?恥ずかしい……」

 翌日からアビーは車いすをやめて、ドレスにヒールで国王への謁見を求めた。
「単身、テイジア王国より参りましたアビゲイル=テイジアと申します。以後よろしくお願いします」
「ハハハッ、エリー嬢の姉として登城した其方もなかなか美しかったぞ」
「ありがたき言葉です。陛下に私の後ろ盾のように身分を証明していただけるようで非常に嬉しく思います」
「あやつをここへ」
 まさかの王太子様?
「初めましてですね。そのお姿。そのお姿もお美しい」
「お前もそう思うか?」
「「ハハハハハッ」」
 笑い事じゃないですよ。
「先日は皇后に助言をしたみたいだな?部屋に行くのに階段があるのはってヤツだ」
 陛下にまで話がいってたのか。
「確かになぁ。今でも若い頃みたいにひょいひょい階段を上り下りできないもんなぁ」
「陛下、それは事実ですか?」
「ああ。皇后の部屋も私の部屋も1階の方がいいかもなぁ」
「王太子殿下!正式に名乗っていません。私はアビゲイル=テイジアと申します」
「俺はブラッドフォードって名乗ったよな?ブラッドフォード=アレーダだ」
「まぁ、戦争の後始末は私が上手いことやっておくから、あとは若い二人に任せよう」
 どこかの国のお見合いの席のように陛下はどこかへ行ってしまった。

 陛下はテイジア王国と交渉のテーブルについたようで「テイジア王国からの要求を全面的に受け入れるよ」と宣言した。
 テイジア王国からの要求は、土地の要求には応えない。関税も今まで通り。今までと変わりなく というものだ。
 それなら最初から戦争なんか仕掛けなきゃいいのに。
 アレーダ王国の陛下はただ、美人の嫁が来たとホクホクしていた。