戦場からお持ち帰りなんですか?(2)

2.市場に行こう!

 王太子様はどんな顔だろう?
「ベン、王太子様のお顔を見たことある?」
 一晩経ったのにまだ機嫌悪い。新婚らしいことができないのは、戦場でアビーを拾って連れ帰ってきたからよ!まぁ、アビーを拾ったことはグッジョブだけど、それで機嫌悪いのはなぁ。
 あ!ベッドから追い出して部屋のソファで一人で寝かせたのが原因?
 王女をソファに寝かせた上に、二人でよろしくやっちゃうのは良くないでしょ?
 そう考えると王女にはベッドに寝てもらうのがいいんだよね。
 ベンにアビーの正体を話してないから、余計にイライラするんだろうなぁ。でも、アビーの正体をベンが知ったら、アビーが国に拘束されちゃうかもだし難しいなぁ。
 
 自然に王太子と出会って、恋に落ちてくれるといいんだけど。はぁ。顔もわかんないんだもんなぁ。

「イケメンってのは知ってる」
 さんざん機嫌悪い態度をとってたけど、私が一人で百面相してたのかな?顔は教えてくれた。
「性格とかわかる?」
「末端の兵にトップの性格なんかわかんねーよ!っフン」
 まだ不機嫌?

 そんな子供っぽいベンをほっておいて、連日アビーと二人で出かけていた。王太子妃になったら簡単にはお城の外なんか見れないからね。
「今日は市場に行きましょうか?いろんなものが見れるわよ?」
「それは面白そうですね、ぜひ行きたいわ!」
「俺はまた留守番かよ?ケッ」
「ベンも行く?」
「ついでみたいに言うなよ。それに今更市場なんて、何が楽しいんだよ。深窓のお嬢様じゃあるまいし」
 うわ~。結構核心をついてくる。―――ベン、侮りがたし。

「ここがうちから一番近い市場よ」
「エミーちゃん、今日も別嬪だね!おや、連れているお嬢さんもまた別嬪じゃないか?」
「初めまして。アビゲイルと申します」
「そんなにかしこまられると、オジサン照れちゃうなぁ。よし!これをもってけ~!」
 と、市場の八百屋のオジサンに野菜をもらった。
「エミー、もらってもいいの?」
「いいのいいの。そういうところなのよ」
 その後、魚屋さんで魚を見た。私は調理をするから知ってたけど…。
「魚って食べる時と元の姿が全然違うんですね」
「おい、エミー。この別嬪さんと知り合いだったのかよ?紹介しろよ?」
「アビー、こちらは魚屋をしているロブよ。学園で私とベンの同級生だったの」
「まぁ、初めまして。エミーのうちに居候をさせてもらっていますアビゲイルと申します。どうぞ私も気軽にアビーとお呼びください」
「エミー、アビーはお嬢様か?魚の全体像を知らなかったしな。まぁ、別嬪さんだし、キズモノで売り物にならない魚あるから、それをやるよ。調理しやすいように捌いてやるからちょっと待ってな」
「ロブ、アビーに捌くところを見学させてあげてくれない?」
「お、おう。いいけど?どうした、急に?」
「この子、捌いたことないし、後学みたいなもんかな?」

 そんなんで市場見学は終わった。
 私が一人で行くよりも頂き物が多かった…。アビーは美人だから嫉妬しても仕方ないけどさ。