戦場からお持ち帰りなんですか?(1)

1.戦場から拾ってきた令嬢

「絶対に生きて帰ってきてね!」
「もう泣くなよ。当たり前だろ?俺達は新婚なんだぜ?し・ん・こ・ん!若奥様残して死んでたまるかっての!」
「もうっ!」
 私達は幼馴染でつい最近結婚した。兄妹みたいに想ってたけど、世の中いろんなことがあるもので。
 私の名前はエミ―。彼の名前はベン。

 悲しいかな、平民は徴兵されて戦場に連れて行かれてしまうのです。貴族様だったら…とか思ったりするけど、そしたらベンと出会う事もなかっただろうから今のままで満足。

 とはいえ、戦場での様子はちっともわからない。
 手紙を何通も出してるんだけどなぁ?忙しくて読む暇ないのかな?
 戦場から早馬で知らせが来ると期待しちゃうけど、いいのかな?

「我が国の圧勝で幕を閉じた。今後はこの国のトップと向こうの国とのトップとの交渉に移る」
 へぇ、戦争って『戦ってはい終わり~』じゃないんだ。交渉かぁ。向こうの王女を嫁に寄越せとか?
 無理矢理嫁にって乱暴だと思うけどなぁ。土地をどうこうの方が感情がなくていいと思うけどなぁ。ってのは平民だから思う事なのかなぁ?

 私はベンが帰ってくると思って、毎日ご馳走を作って待っていた。
 もう一週間が経った頃。ベンが帰ってきた!
「おかえりなさ…い。ベ…ン」
 ベンの横にいる女性は誰なの?

「ただいま、エミー。この彼女は戦場で困っているところを拾って連れてきた」
「初めまして。ベン様に助けていただきここにいることができます。あ、名前はアビゲイルと申します。気軽にアビーとお呼びください」
 拾ってきたって……犬猫じゃないし。戦場には困っている人だらけでしょうに!
 第一!新婚なのに……。
 なんだか気分が凹んでしまった。

「あ、なんだか新婚家庭に申し訳ありません!私が出ていけば!」
「アビーに問題はないのよ」
 ベンがなんでもかんでも拾ってくるから……。
「えっと、アビー。二人でちょっと話をしませんか?」
「喜んで!私、ずっと女性のお友達っていなかったから憧れてたのよ」
「俺は仲間外れかよ……」
 私はベンを睨みつけた。

 私とアビーは別室で話をすることにした。
「アビー。正直に話してね。ベンと体の関係とか恋愛感情はあるのかしら?」
「全くないです。本当に戦場で拾ってもらっただけです」
「戦場なんて危ない所で何をしていたの?」
「実は、私は隣国テイジア王国の王女なんです」
 やっぱりね。所作がキレイだから絶対に平民ではないと思っていたのよ。名前だって平民ぽくない…。
「信じて頂けるのですか?」
「もちろん!貴女の所作とかで平民とは違うってわかるわよ」
「素晴らしい観察眼ですね」
「褒めても何もでないわよ?」
 そうして、二人で笑い合った。
 
 問題は彼女が交渉でこの国アレーダ王国に嫁ぐことが決まったことらしい。それが嫌でお城というか、テイジア王国を抜け出したという話。
 確かに会ったこともない人にいきなり嫁ぐってのは嫌だよなぁ。うーん。

「アレーダ王国の王子と婚約でしょう?どの王子?」
 王子ってたくさんいるのかしら?自分の国なのに王子の数すら知らないわ…。
「どうやら、王太子らしいです」
 わぁお!ビッグネーム!国と国の結びつきだからなぁ。
 アビーも美形だけど、この国の王太子も美形だと思うけどなぁ(見たことない)。
 正直脂ギッシュな国王とかに仕えるのは嫌だなぁ。下級貴族の方に即刻クーデターを起こしていただきたい!