不戦の王 コラム「前九年の役」

<目次>
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八身の語った黄金戦争とは。
それは、後に前九年の役と呼ばれる十二年合戦
(1051~1062年。源氏対安倍で数えると、
1053年からの九年間)のことである。
私たちは前九年の役について、
「平安中期、陸奥国の蝦夷の覇王安倍氏の反乱を
源氏が鎮圧した出来事」として記憶に留めている。
日本史の授業ではそう習った。
だが、事実もそうだったのだろうか。
この合戦の始終を伝える唯一の文書は、
現代の県知事にあたる陸奥守、源頼義が
中央政府(朝廷)に提出した報告書と
源氏軍兵士からの伝聞を集めた『陸奥話記』である。
言ってみれば、
「我ら源氏はいかに正しく、いかに勇敢だったか」
という自慢話集が基本資料として採用されている。
他にも陸奥合戦記、源平盛衰記、今昔物語、
保元物語、平家物語などに散見される記述があるが、
共通しているのは、
源氏の手柄話を記録するという視点である。
同じ戦争がヒットラーの視点で語られるか
連合国の視点で語られるかで、
正邪が逆転するのはご存じのとおり。
幸い、当時から千年たった。
真実はどういう戦争だったのか、
源氏寄り、朝廷寄りだけでない視点、
つまり敗者の側に立った研究も現在進んでいる。
しかし。
それはともあれ、である。
真実の宝探しは歴史家にお任せして、
私たちは、日本にもいたコーカソイド
毛無一族と闇の陰陽師八身と共に、
前九年の役の渦中に跳び込んでいきたい。