秋空メルヘン~お伽噺へようこそ~【脚本】

●暗転●
♪教会の鐘の音3回♪
○明転2秒F.I.○
《シスター上手から登場。真ん中へ》

シスター「さぁ皆さん。時間になりました、こちらに集まってください」
《子ども達、喋りながら席に》
シスター「…ほらほら喧嘩しないで、ちゃんと仲良く座って下さいね?全員いますか?…揃ったみたいですね?」

シスター「改めまして、今日はこの『秋祭』へようこそ。午前中のゲームは楽しかったですか?」
《子供たち反応。「はーい」「楽しかった!」など、素直な感じで。長くは続かせず》
シスター「そうですか、それはよかった。さて皆さん、もうすぐおやつの時間になります!今日のおやつは何だと思いますか?」

《子供達。「何だろう?」「僕○○がいい!」等、おやつについて反応し合う》
シスター「(微笑)でも、もう少し時間がかかるみたいなので、それまでに一つお話をしようと思います!」

《子供達。「お話っ!」「聞きたい!」等、単発で。興味津津に。》
シスター「皆さんには夢は在りますか?」

《子供たち反応。夢を言い合う。C・B・A(宇宙飛行士)が将来の夢。
その中でDが「宇宙人にさらわれる夢を見た!」》

シスター「(微笑)ありがとう、皆さん。素敵な夢を持っていますね!…『大人になったらなってみたい夢』、他にもさっき言ってくれた『夜に見る事が出来るのも夢』。それから『何かしてみたい!』っていうのも夢ですね。世界一周してみたい、幸せな恋をしたい、魔法を使ってみたい…なんていう夢も、とっても素敵です。これから皆さんにするお話は、そんな夢を叶えたある女の子のお話です。さて、どんな夢だったのでしょう?…それではお話を始めましょう」

♪本をめくるモーション音♪
●暗転2秒F.O.●

《暗転後、シスターは下手前方へ移動。子供全てはけて。アリスは椅子①へスタンバイ》

♪アリスメインのBGMF.I.♪
○明転曲合わせで、⒑秒程かけて全明○

【とある少女の物語】
ナレ「これは、とある少女の物語。少女の名はアリス。夢見がちで、無邪気で、世間知らず。けれどもどこか世界を穿った目で見る少女」
♪メインBGMここまでにF.O.♪
アリス「…はぁ」溜息をつき

ナレ「少女の望みは、不思議の国へ、再び赴くこと」
アリス「あぁ。あの世界にもう一度行ってみたい。不思議なお茶会に参加して、喋るトランプや猫や兎に逢うの。誰も信じてくれないけれど、私は不思議の国へ行ったのよ。お母様もお姉様も夢でも見たのよって笑うけれど、私は確かに不思議の国へ―――」
♪カタンSE♪《走り出す兎の息が入り、上手後ろから登場。中央前へ移動》
アリス「誰?廊下に、誰かいるの?」
《中央前で兎は立ち止まって》
白兎「急がなくっちゃ。早くしないとまた叱られるっ」
《白兎、椅子④前へ移動》
アリス「え?今そこを走って行ったのは…白兎だわ!あの時と同じっ。ねぇ待って兎さん!」
《アリス立ち上がり》
ナレ「白兎は、どこかへ急いで行く様子でした。アリスはそれを、追いかけます。」
《追いかけるアリスと、白兎の走る息。》
アリス「ねぇ待って!待ってったら!」

白兎「急がなくっちゃ、急がなくっちゃ!」

アリス「あの時と同じ。白兎を見つけて、それを追いかけて、穴に落ちて。でも、今度は絶対捕まえて見せるわ!」

ナレ「アリスは、一生懸命走りました。走って、走って、走って、そして。」
《そうして、アリスが兎に追いつく》
アリス「捕まえた!」
白兎「うわっ!…びっくりした…何するんだよ、危ないじゃないか!いきなり後ろから抱きつくなんて!」

アリス「やったわ。今度こそ捕まえられたわ。前は逃げられっぱなしだったけれど。…お久しぶり。驚いたでしょ?私、あれから随分足が早くなったのよ?ほら、前より背だって伸びてるでしょ?」

白兎「何を言ってるのか、さっぱりわからないな。お姉さん、僕と何処かであった?」

アリス「まぁ。相変わらずひどいのね。あの時も全然知らない人と間違えて私に石を投げつけたり、やったこともない罪で人を有罪にしたり。本当にひどい兎だわ」

白兎「兎?兎なんて、どこにいるのさ?」

アリス「呆れた、惚けちゃって。もう忘れちゃったの?本当にこの世界の人って、みんなおかしいのね」

白兎「離してよ。僕急いでいるんだから!早くしないと、叱られちゃう!」

アリス「あっ!ちょっと待って!…待ってってば!」

ナレ「白兎はそういうと、ひょいとアリスの腕を抜け出し、走り出しました。アリスは再び白兎を追いかけましたが、今度は間もなく、見失ってしまいました」
《ナレ途中でアリス、真ん中へ移動》

アリス「まったくもう…どこに行っちゃったのかしら。見失っちゃったみたい。…それにしても、ここはどこかしら?さっきまで知っている建物の中だと思っていたのに…。いつの間にかよく解らない道へ来ちゃった。兎はいないし…他には何も…。(たっぷりきょろきょろして探して)…あら!あの穴!」

ナレ「それは、前に不思議の国へ行った時に見つけた穴でした」

アリス「ふふっ。いいわ。どうせ白兎はこの穴に入ったに決まっているもの。また私も落ちればいいだけの話。…よいしょ」
《猫登場し、椅子①の後ろ後列へ》
ナレ「アリスが穴へ足を踏み込もうとした、その時」
猫「お待ち御嬢さん」
アリス「え?」

ナレ「突然、頭上から不気味な声がしました」

アリス「この声…。誰?誰なの?」

猫「誰かだって?解らないのかい?」

アリス「だって声しか聞こえないもの」

猫「そりゃあそうさ。だってお前が、そうしているんだから」

アリス「何を言って…。あら、あんな所にいつの間にか大きな樹が…。その上にいるのね?…まぁチェシャ猫じゃない。随分久しぶりね。なんだ貴方だったの。貴方ったら、またそんな高い木の上から私を見下ろして…まぁ、猫だから仕方ないか。貴方は、私を覚えているの?」

猫「覚えてなんかいないさ。おいらはお前を知っているんだ。」

アリス「相変わらず変な猫ね。まだ穴に落ちてもいないのに現れるなんて、気が早いんだから」

猫「そこだよ御嬢さん」

アリス「え?(首を傾げ、猫を見つけ)…キャッ!…いつの間に後ろに…」

猫「…いいのかい?本当にそこへ、飛び降りて」

アリス「…何を言っているの?穴には、飛び込むものよ」

猫「お前さん、本当は解っているんだろう?飛び降りたって、不思議の国へはいけやしないって」

アリス「いけるわよ。だって、私は飛び降りるんじゃなくて、飛び込むんですもの。貴方ってば、相変わらず変なことを言う猫ね。ちっとも可愛くないし。…大人みたいで嫌な感じ」

猫「これは最後の忠告かも知れないぜ?お前はそれでいいのか?」

アリス「お前お前って、失礼だわ。私はアリスよ!…貴方が何て言ったって、私は行くんだから!…そうよ、怖くなんてないわ。だって、私は不思議の国へ行くんですもの。………えいっ!」

ナレ「アリスは、大きく深呼吸をすると、思い切って、穴へ身を投げました(。」この後に「えいっ!」)

アリス「キャー!」
《猫、上手はけ》
ナレ「アリスの身体は、暗い穴の中を、どんどんと落ちていきました。そして―――」
♪落ちている間の音と、落ち切った後のどさっという音♪
アリス「…あいたたた…。やっぱり何回落ちても痛いものは痛いわね。…あら?前落ちた場所とは違うわ。前についた場所はお部屋みたいだったはずなのに、今は薄暗くて、道があるだけね。樹が生えているし…森の中…?落ちた穴が、違う穴だったのかしら。…まぁいいわ、とにかく、」
《夫人、台詞までに椅子①の後ろへ登場》
夫人「まぁなんてこと!こんなところで何をしているの⁉ 」

アリス「え?あら侯爵夫人!お久しぶり」

ナレ「そう言って、アリスは立ち上がって挨拶をしようとしましたが、落ちた時にぶつけたお尻が、痛くてなかなか立てません」

アリス「あれ?おかしいわね…ごめんなさい、夫人。実は今落ちて来たばかりなんだけど、腰を打っちゃったみたい。ちょっと待ってね?御挨拶は、立ち上がってからで、(いいかしら?)」

夫人「(遮り)何を馬鹿なことを言っているの!」

アリス「馬鹿だなんて、失礼だわ。私だって、本当は直ぐに御挨拶したいのよ?ただ、ちょっとお尻が痛くて立ち上がれないだけで、」

夫人「動いちゃ駄目!いいから、じっとしていなさい!」

ナレ「侯爵夫人は、ひどく慌てた様子で、怖い顔をもっと怖くして叫びました」

夫人「いいわね?絶対に、そこから動くんじゃないわよ!まったく馬鹿なことをして!」
《夫人、上手はけ》
アリス「あ、ちょっと!ちょっと待って!…行っちゃった…。やっぱり変な人。怖い顔は相変わらずだったし。まぁいいわ。別に私が待っていなくてはいけないルールはないもの。…さてと…道がいくつかあるけど…折角だから真ん中の道がいいわ。まっすぐって、素敵だもの」

ナレ「アリスが暫く歩いていると、突然後ろから誰かが声をかけました」
《猫、椅子①後ろへ。ナレーターにかぶせるように猫笑い》
猫「御嬢さん。どこへいくんだい?」

アリス「あら、チェシャ猫。また来たの。私は今、真ん中の道を行くことにしたから、歩いていたところよ。前みたいに、貴方に道を尋ねたりしないの」

猫「(笑い)馬鹿な娘だ。よく見てごらん。それは本当に、まっすぐか?」
⦿ 薄青をアリス言い終わりまでにF.O.⦿
アリス「え?…あら?おかしいわね。確かに真ん中の道を歩いてきたはずなのに…何故か右に曲がってる。…変なの。やっぱりこの世界って、とってもおかしいわね。……ん?」
《アリスの「おかしいわね」きっかけでティーパーティ面子登壇。上から帽子屋①三月兎②下からヤマネ④》
ナレ「アリスが首を傾げていると、いくつかの大きな声が聞こえてきました」

帽子屋「もういいじゃないか。放っておいてくれよ」

三月兎「ダメだダメだ。どうして逃げる?いつまでも夢の中なんて馬鹿げてる!」

アリス「あれは…お茶会の会場…。あそこでそっぽをむいて頭を抱えているのは、帽子屋ね。それに怒鳴っているのは三月兎…。じゃあ、あのティーポットの中身は、ヤマネがいるのね」

三月兎「いいか?夢ばかりじゃあ駄目なんだ。夢なんてそこにはありやしない。お前、いつまでそうしてるつもりだ?逃げて逃げて、その先に何がある」

ヤマネ「ここはキラキラしてるから。外は真っ暗、何もない」

アリス「おかしなこと。ティーポットの中は真っ暗で、外の方が余程明るいのに」

帽子屋「もういいじゃないか。無駄なんだよ。そいつは一生そこにいる。誰が呼ぼうが誰が死のうがおかまいなしさ。身勝手で我儘で独りよがりな奴なんだ」

三月兎「それじゃダメだろう!それで一体、この先どうする?こいつのせいで、みんな何も出来ない。哀しいし面倒臭いし困るじゃないか!」

アリス「そうね。ティーポットが使えないと、困るかも」

帽子屋「もうそんな奴はいないさ。みんなすっかり忘れてる。だからお茶会をすればいい。一人ぼっちで」

アリス「何を言っているの?貴方達、いつも三人でいるじゃない。一人ぼっちなんかじゃないわ」

ヤマネ「何もいらない。ここだけでいい。外は沢山あるのに何もない。誰も構うな放っといてくれ」

アリス「ねぇいいんじゃない?ヤマネは構って欲しくないみたい。少し放っておいてあげれば?」

三月兎「もう誰も、構おうともしないで諦め始めてるのにまだ気づいてないのか。馬鹿な奴。本当は、全部見えてるくせに、見ようともしない。夢ばっかり追って、籠っている。愚か者だ」

帽子屋「解っているさ。本当は解っているんだ。愚か者で、けれど寂しがり屋でどうしようもない。だから永遠にここにいる」

ヤマネ「ここにいることを選んだから、ここに来たんだ」

アリス「何言ってるの?また訳の分からないことばかり言って」
⦿ 青、布のSEまでにF.O.地明かり80%へ⦿
帽子屋「牡蠣料理はもう沢山!だけど食べればここを思い出す」

ヤマネ「あんな顔、見たくもない。どいつもこいつも同じ顔」

三月兎「逃げてばかりの分からず屋。これが最後のチャンスだったかもしれないのに」

アリス「ねぇ返事くらい…キャァッ!」
♪バサッと言う音♪⦿ ここから地明かり80%⦿
ナレ「アリスが文句を言おうと、帽子屋達の方へ一歩踏み出すと、突然頭から何かの布をかぶせられて、目の前が真っ暗になりました。」

アリス「誰!?いきなり人の頭から布を被せるなんて…ごわごわして、白くて硬い…。これ、テーブルクロス?」
《「ごわごわして」きっかけで兵隊上手より登場、②③の椅子両サイドに》
ナレ「アリスは、かぶされた布を剥がそうと、一生懸命もがきました」《兵隊一歩前へ》

アリス「ねぇちょっと!聞いているの⁉ テーブルクロスは人にかぶせるものじゃないわ!」
《兵隊5椅子③の下手、兵隊2椅子②の上手》
兵隊5「さぁ急いで!早くしないと!」

兵隊2「大丈夫かい?ここがどこか解るかな?」

アリス「あぁやっと脱げた…あら?貴方達は…ハートの女王のところにいた、トランプね?スペードの2と5…ってことは、薔薇に色を塗っていたトランプじゃない。数字、覚えててよかった」

ナレ「顔にかぶされた布をやっとの思いで外すと、アリスをトランプの兵隊達が覗きこんでいました」

兵隊2「トランプ?トランプがなんだって?」

兵隊5「薔薇の花なら、後で見に行こう。今年も真っ白な薔薇が綺麗に咲いたから」

アリス「まぁまた白くしてしまったの?大丈夫?女王様に叱られるわよ?」

兵隊2「大丈夫だから、君は心配しないで。しっかりね」

アリス「けど安心なさい。首を刎ねられそうになったら、私が文句言ってやるわ」

兵隊5「なんてことだ、首もか…。早く知らせないと」

アリス「え?ねぇ何処へ行くの?知らせるって誰に?…あら…?」

ナレ「気が付くとアリスは、初めに落ちた森でも、お茶会会場でもなく、見たことのないお花畑にやってきていました」

アリス「いつのまにお花畑に…ここには、薔薇はないみたい。その代り、もしかして周りに見えるのって…キノコ?…ねぇ、何故こんな所に連れてきたの?」

兵隊2「もうすぐだよ。今準備するから、待っていてね」

アリス「準備?準備って何の―――」

兵隊5「お願いします」

アリス「え、ちょっと待って…。行っちゃった。忙しないトランプ達ね。女王様が、また怒っているのかしら?」
《芋虫、上手より登場し、椅子①へ座る》
ナレ「アリスがそう首を傾げた時、また誰かがアリスの側に現れました」
⦿ 緑、ナレきっかけでF.I.⦿
芋虫「まったくなんてことをしたんだ」

アリス「あら…芋虫さん?いつの間に側にいたの?…ねぇ、このキノコって」

芋虫「(遮り)大丈夫だ。さぁ」

アリス「…嫌よ。キノコはもう食べないわ。大きくなったり小さくなったり、困るじゃない」

芋虫「いいから目を閉じて。ゆっくり息をするんだ」

アリス「え?…こう?」

ナレ「芋虫に言われた通りに目を瞑ると、アリスの腕に、ちくりと痛みが走ります」

アリス「…痛っ。…何?枝か何かが腕に刺さったみたい…。まぁ、森の中だもんね。それくらい仕方ないか…。…ねぇ芋虫さん、もう目を開けていい?…ねぇ。…おかしいわね。開けるわよ?……ここは…?」
⦿ 緑F.O.アリスの台詞終わりまでに地明かり80%へ⦿
ナレ「我慢できずにアリスが目を開けると、今度はどこか見覚えがあるような、不思議な場所でした」
《芋虫が離しているのを、、アリスが遮るように。芋虫は殆ど聞こえなくても大丈夫》
芋虫「…何とか……が……足が……。もう……ない……。…根気よく……すれば…」

アリス「遠くで芋虫の声が聞こえる…。キノコは…ないみたいね。それよりも、なんだか柔らかい。あぁそうか。今、私がキノコの上にいるんだわ。それで芋虫は下で誰かと話していて。…けど、一体誰かしら」
《「それで芋虫は」から兵隊登場。「けど、で一歩前」へ。兵隊5椅子③の下手、兵隊2椅子②の上手に》
兵隊5「あぁ!気付いたんだね!」

兵隊2「よかった!」

アリス「え?」

ナレ「顔を覗き込んできたトランプの後ろから、誰かが走ってくる足音が聞こえました。そこにいたのは、」

女王「あぁ…!何てことなの…!」

アリス「女王様!」

ナレ「それは、大きくて怖い顔をしていて、すぐに人の首を刎ねようとする、ハートの女王様でした。」

アリス「…その…ごめんなさい、こんなところから」

女王「…どうして…どうしてこんな事に…」

芋虫「気を落とさずに。先程も申し上げた通り、根気よく続ければきっと」

女王「だけど…こんな事って…!」

兵隊2「…我々の責任です」

兵隊5「本当に、申し訳ありません」

アリス「みんな何を言っているの?…あぁそうだわ。ねぇ女王様。この人…じゃなかった、兵隊達ったら、また薔薇を白くしてしまったんですって。でも首は刎ねないであげてよ?貴女、少しは丸くなった方がいいわ。ちょっと気に入らない事があると、すぐ人の首を刎ねてしまって。」
《兵隊は下手へはけ》
女王「あぁっ…!あんまりだわ…!神様…ッ」泣き崩れ
《女王、芋虫の順で上手はけ》
アリス「どうしたの?突然泣き出したりして…。それにしても、女王様ってば、昔会った時より痩せたみたい。大きな頭は相変わらずだけど、何だか全体的に小さくなった気がするわ。それに、少し老けたわね。女王様っていうか、お婆ちゃんみたい。……ねぇ、どうしたの?何故泣いているの?」
《全員はけた所で、ティーパーティ組いり》

ナレ「アリスが何を言っても、女王様は泣くばかり。トランプ達は、俯くばかり」

アリス「…ねぇ、みんな一体どうしたの?何でそんな―――」
《帽子屋が椅子①、三月兎が椅子②、ヤマが椅子④へ座り、猫は椅子③前に立つ》
猫「馬鹿な娘だ。まだ解らないのかい」
《猫の声に驚き、アリスの「キャッ!」が入る》
アリス「キャッ!…またいきなり声が…あの猫ね。チェシャ猫?貴方一体どこに―――」

帽子屋「もう決まってたんだ。もうすぐ出るはずだった」

三月兎「けれどお前はまた逃げた。出たくないからとまた逃げた」

ヤマネ「だって外には行きたくない。夢を見られなくなっちゃうから」

アリス「…帽子屋に、三月兎に、ヤマネ…?…ねぇ、何を言っているの?貴方達何時の間にここに、」

猫「夢は終わりだ。もう薬が切れる時間だ…御嬢さん」

アリス「……え?」
⦿ ここからナレ終わりまでに地明かり、全明へ⦿
ナレ「そう言われて瞬きをすると、それまでぼんやりとしていた世界に、はっきりと色がついていました。綺麗な森は窓の外だけの世界。寝かされているふかふか柔らかい物はキノコではなくて真っ白なベッド。そうして、時折外で煙草を吹かしている芋虫のような主治医の苦い顔と、怒ると怖い母の泣き声」

猫「お前は馬鹿だ。馬鹿な子だよ。お前は、アリスなんかじゃない」

アリス「…何を言ってるの?私はアリスよ…。ルイス・キャロルの童話の中の、アリス…」

猫「(遮り)いいや、違う。お前は解っているはずだ。よぉく、思い出してごらん」
《白兎、上手袖の入口で》
白兎「急がなくっちゃ!急がなくっちゃ!」

アリス「…白兎…?」

白兎「早くしないと、『お母さん』に叱られちゃう!」
《白兎、上手はけ》
アリス「え…?」

帽子屋「白兎と間違えたのは、隣の病室にお見舞いに来た男の子。お母さんに呼ばれてた」

アリス「あ…あ…」

猫「お前が落ちたのは穴じゃない。お前は穴に落ちてなんかいない。あそこはいつも中庭を見ていた屋上。
お前は、屋上から飛び降りたんだ」

アリス「…違う…違う違う違う」
♪録音C.I.♪
夫人『まったく、馬鹿な事をして!どうして屋上から飛び降りたりなんか!』

兵隊2『目を離していた、我々の責任です』

兵隊5『本当に申し訳ありません。お母さん』

芋虫『何とか一命は取り留めましたが足が…。もう手の施しようのない状態で…。ですが、根気よリハビリを
すれば、或いは』

女王『どうして、この娘が、こんな事に…!』
♪録音C.O.♪
ヤマネ「侯爵夫人は、看護婦長。トランプ達は看護士さん。芋虫は医者、女王様はお母さん」

アリス「やめて、やめてやめてやめてよ!だったらアンタ達は一体何よ!どこにいるのよ!姿を見せなさいよ!声だけでおどかすなんて卑怯よ!…ねぇったら!いるんでしょ!?」

帽子屋「…見渡したって探したって無駄さ。僕らはお前の、色んな気持ちなんだから」

猫「馬鹿だね御嬢さん。だからおいら達は一度も呼ばなかったんだ。お前を《アリス》と」

ヤマネ「外は嫌。現実は嫌。ずっとおとぎの世界にいたい」

三月兎「憧れたって無駄なんだよ。だってお前はもう十二歳の少女じゃない」

猫「思い出せ。お前は子供じゃなくなった日、手首を切って飛び降りた。あれは二十歳の誕生日。あの時は助かったけど、今度はもう駄目かもなぁ」

アリス「…嘘よ。そんなの嘘。だって!だって私はアリスだもの!ほら、ここに名前が書いてある!ベッドのところに書いてある名前は…!………あ……り、さ…」
《上手より芋虫と女王登場、下手より兵隊登場》
帽子屋「だからもう、遅いと言ったんだ」

アリス「…遅いって…何が…」
三月兎「逃げてばかりの臆病者」

アリス「違う、私は、そんな、」

ヤマネ「仕方ない。自分のせいだもの。夢が叶った、よかったね」
アリス「嫌…嫌よ、やめて…」
《猫、数歩前へ》
猫「お前は一生、ベッドの上だ」

アリス「……いやぁああぁあぁぁぁぁっーーー!」
♪アリスメインBGMF.I.ナレ終わりまでに♪
●照明F.O.ナレの「よかったね」までは明かりあり●
ナレ「これは、とある少女の物語。夢に憧れ、望みを叶えたかっただけの、少女の物語。だからきっと、他人事ではないだろう。子ども達はいつだって、心に夢を持つ物だから。
夢が叶って、よかったね。《アリス》」
●《アリス》きっかけで全暗●
《アリス以外の住人たちの笑い声の中、アリス上手へはけ》

【終】

《シスター、直ぐに中央後ろの位置に。子ども達スタンバイ》
♪アリスメインBGMC.O.♪
○明転2秒かけて始まりよりほんの少しだけ薄暗く80%で。日が落ち始めている○

シスター「(本を閉じて満足げに)と、いうお話でした!どうでしたか?」

《子供達。まぁ、そうなるよねって位どんより》

シスター「(子供達の反応が予想を超えていた為、慌てて取り繕うように)…そうですね。でも、間違った叶え方をすると大変なコトになってしまうかもしれないという事を覚えておいてほしいんです」
《シスターどうにか子供たちを元のテンションにと、逡巡》
子供B「なんかいい匂いがする!」

料理番「シスター!準備が出来ましたよ!」

《上手よりおやつをのせた盆を持って料理番登場。シスターしめた!と勢いに乗せて》
シスター「あ、そろそろおやつの準備が出来たみたいですね!さぁ皆さん、おやつにしましょう!今日のおやつは、あま~いカボチャのパイですよ!」
《子供達。「やったぁ!」「おやつだ!」等。料理番に近づくのも可。シスター反応を見てホッと一息》
《料理番もお盆を持ってそのまま。子ども達は椅子下に隠していた食器を手にして席に》

シスター「そういえば…もうすぐ十月ですね。…十月とカボチャといえば―」

子供D「ハロウィン!」》

シスター「そう!ハロウィンですね!ハロウィンは元々、ヨーロッパの行事で、十一月一日の『万聖節』というお祭りの前夜祭として十月三十一日に行われていたものなんです。この季節は日本で云うお彼岸のように、あの世とこの世がとても近くなって、妖怪や悪魔が人間の世界に来やすいとされていました。そこで、前夜祭で『悪いモノに連れて行かれない様にお化けの格好をした』というのが、仮装の始まりなんだそうですよ。そして、パイに入っている南瓜は、ハロウィンにはかかせないアイテムです!」

《ここらへんで料理番気付いて上手へ。その時お盆を置いてくる。
代わりにすぐにクロッシュかジャックのランタンを持って再登場。》
《…ダンボールで作製してもいいんだからね( チラッチラッ) 》

シスター「皆さん、これをご存知ですか?これは『ジャック・オ・ランタン』といいます。『ジャックのランタン』という意味があるんです。面白い名前でしょう?どうして、人の名前が入っているんだと思いますか?」

《子供達「分かんな~い」「知ってる?」「なんでかなぁ」等》

シスター「では折角なので、おやつを食べている間に…その理由をお話しましょう」

♪本をめくるモーション♪
●暗転2秒かけてF.O.●

《シスターはまた下手前、語りの位置に。ジャック、椅子③へスタンバイ》

♪ジャックのメインBGMF.I.♪
○明転曲合わせで、⒑秒程かけて全明○

【とある男の物語~ジャック・オ・ランタン~】
♪メインBGM「ある時~」までにF.O.♪
ナレ「これは、アイルランド地方に伝わる、お話です。ある所に、ジャックと言う飲んだくれの男がいました。男は、それはがめつくて性悪で嘘つきな、嫌われ者で、彼を知っている人は皆口をそろえて『けちんぼジャック』と呼んでいました。ある時ジャックが、いつものように酒場に飲みに行ったのですが…」
《それを合図に立ち上がり、ポケットなどを探るモーション。ジャック、前へ》
ジャック「…あれ?あれ?…やべぇ、すっからかんだ。ゆうべ全部すっちまったんだった」

ナレ「博打で負け、無一文なのを、すっかり忘れていたようです」

ジャック「あーあーホントに空っぽだ。…いや、何か入って…何だよお守りかよ。こんなもん麦一つまみにもなりゃしねぇ。参ったなぁ…」
《悪魔、椅子②前側へここまでに登場》
ナレ「その時です」

悪魔「おいジャック」

ジャック「どうすっかなぁ…トムにでも借りるか。あ、ダメだ。この間騙して驕らせたんだった」

悪魔「おい。おーい」

ジャック「じゃあハンスに…あ、あっちも駄目だ。こないだの勝負でイカサマしたのばれてたって、アダムが言ってたな。ハンスの奴、見つけたら半殺しにするって息巻いてたらしいし…」

悪魔「もしもーし。ジャックさーん」

ジャック「んじゃあダグラス…あ、ダメだ。先週あいつの嫁さん寝取ったのバレて叩きだされたんだった。…にしても(言うほどいい女じゃなかったな…。えーとあとは)」

悪魔「(遮り)オイコラ聞け!このろくでなしが!」
《ジャック、悪魔の呼びかけに驚いて「うわっ!?」》
ジャック「うわっ!?ビックリした!なんだよお前さん、いつからそこにいたんだ?え?そんな真っ黒ななりで、炭焼き小屋帰りか?畑で焼けたんだったら、ちょっと焼けすぎな気もするが…」

悪魔「どこをどう見たら日焼けや煤汚れに見えるんだよまったく!いいか、俺はな………悪魔だ」

ジャック「ウゥッ!」(苦しげに)

悪魔「お、おいどうしたいきなり!胸を押さえて倒れたりして!」

ジャック「(声を潜め気味に)…だって、アンタが『あ、クマだ』っていうから…」

悪魔「ダジャレかよ!本気のつもりなら治療に何発か決めてやるから頭を出せ」

ジャック「冗談なら?」

悪魔「鳩尾に何発かいれるから腹を出せ」

ジャック「どっちにしろ殴るんじゃないか。迷惑な奴だ」

悪魔「どの口が言うんだ!?え!?」

ジャック「迷惑な上に面倒臭いな、アンタ。ったく、こっちは今、飲み代が払えなくって困ってるってのに…」

悪魔「そうだ、それだよ。お前と漫才やってる場合じゃなかった。いいかジャック。俺はな、お前と取引をしに来たんだ」

ジャック「取引?そりゃあれかな、股引の親戚かな。もうすぐ寒くなる季節だし」

悪魔「無理矢理ボケるな!…折角助けてやろうと思ったのに」

ジャック「助ける?アンタが?俺を?どうやって」

悪魔「お前、今金が払えなくて困っているんだろ?」

ジャック「…そうだけど」

悪魔「それを、代わりに俺が払ってやるって言うんだ」

ジャック「…ホントに?」

悪魔「あぁ。勿論、タダってわけにはいかない。代わりに…お前の命を貰う」
ナレ「なんと現れた悪魔は、金を払う代わりにジャックの命を要求してきたのです。普通なら、おっかなくて怯えるか、信じないで逃げ出すか。色々あります。さて、ジャックはと言うと…」

ジャック「何だ、そんなことか。いいともさ」

悪魔「そうかそうか、いいともさって…え?」

ナレ「なんと、その取引をあっさりと承諾してしまいました。驚いたのは、悪魔の方です」
悪魔「…本気か?」

ジャック「あぁ。よろしく頼む」

悪魔「よろしく頼むって…。おい、またボケてるんじゃないだろうな?解ってるのか?命を取られたらお前、死んじまうんだぞ?」

ジャック「解ってるって。仕方ないさ、物事には代償がつきものだ。それとも、俺が承諾しちまうと、何か問題でもあるのか?」

悪魔「…そういう訳じゃあないが」
《ナレの間「しかし悪魔も~」辺りで、悪魔とジャックの位置交替》
ナレ「ジャックの物言いに、悪魔はすっかり拍子抜けしてしまいました。まさかたった一夜の飲み代の代償として、命をあっさり差し出してくる人間がいるとは、思いもしなかったのです。しかし悪魔も仕事は仕事。そこまで言われて引き下がる訳にはいきません。そこで悪魔は、少々納得がいかないながらも金を払うと、店を出てすぐジャックに言いました」

悪魔「払ったぞ。さぁ、約束通りお前の命を頂こう」

ジャック「あぁいいとも。けど、その前に1つ頼みを聞いてくれ。この財布の中に、大切な物が入ってるんだ。死ぬ前にもう一度それが見たい。…が、奥に引っかかって取れないんだ。これがまた随分奥に入りこんでいてな?指じゃ届かないんだ。そこで、アンタ代わりにとってくれないか?アンタがホントに悪魔だって言うのなら、大きさを自在に変えて、財布の中に入る事くらい、簡単に出来るよな?」

悪魔「それくらい、お安い御用だ」
《悪魔、ナレのタイミングで中央後ろへ下がる》
ナレ「悪魔はそう言うと、掌に乗れるくらい小さくなり、ひょいと財布の中に入りました。するとジャックは、先程見つけたお守りで、素早く財布の入口を塞いでしまったのです。悪魔は、財布に閉じ込められてしまいました」

悪魔「おい出せ!出しやがれこの飲んだくれのろくでなし!…なぁ…おい。出せって…頼むよ…頼むから…もしもーし…。ジャックさーん…おーい…。…お願いします、出してください…」

ジャック「ん。いい感じにへりくだって来たな。いいともさ。代わりに条件がある」

悪魔「解った。聞く、何でも聞くから。早くしてくれ、息が詰まって」

ジャック「俺の魂を持っていくのを、十年遅らせてくれるってんなら、出してやろう」

ナレ「悪魔はその条件を呑まざるを得ませんでした。それほど、お守りが苦しかったのです。…さて、それから十年。相変わらず好き勝手生きていたろくでなしのジャックの元に、あの悪魔が、現れました」

悪魔「久しぶりだなジャック。今日が十年目だ。さぁ約束通りお前の命、今度こそ頂くぞ」

ジャック「あぁいいとも。けどその前に、1つ頼みを聞いてくれ」

悪魔「またか!今度はどこにも入らないからな!」

ジャック「そんなんじゃあない。そこにあるリンゴの実が食べたいんだけど、俺には高くて上れないんだ。アンタ、1つリンゴをとってきておくれよ。…頼むよ。最期の晩餐ってことでさ」

悪魔「それくらいなら…お安い御用だ」
《悪魔、椅子①へ登るか椅子の後ろへ。ジャックは中央前へ》
ナレ「うっかりそう返事した悪魔は、するすると猿のように木に登っていきました。するとジャックは、またも素早く悪魔の尻尾を木に結び付け、どこに隠し持っていたのかその上から銀の釘を、打ってしまいました」
♪釘を打つSEC.I.♪
悪魔「痛っ…!おまっ、抜け!早く抜け!早く!なぁおい!ダメなんだって銀はホントに!なぁおい!早く、ちょ、痛いって問題じゃなくてホントに辛いんだ早く!なぁ!…なぁって…おい!ちょ、どこ行くんだよそのまま帰ろうとするなって!なぁ頼むよ、ホントに…なぁ!ジャック!」
《悪魔の間にジャック、後ろへ下がる》
ジャック「…もう一声」

悪魔「こんのドSっ…。…お願いします…抜いて下さいっ…」

ジャック「うん、まぁ、いいだろ。いいともさ。けど代わりに、」

悪魔「条件だろ、解ったよ!聞けばいいんだろ聞けば!悪魔相手によくやるよホントに!今度は何年だ!」

ジャック「そうだねぇ、しいて言うなら《ジャック、前へ》…永遠に」

悪魔「なっ…お前それがどういう意味だか解って、」

ジャック「どうするんだよ。そのままでいいのか?俺は別にいいんだぜ?」

悪魔「っ…くそ!あぁもう解ったよ!」

ナレ「こうして悪魔はジャックの命を持っていくのを、諦めなくてはならなくなったのです。それから暫くは平穏に、面白おかしく生きていたのですが、程なくしてジャックも死んでしまいました。がめつくて性悪でも、人間ですもの。寿命が来れば死ぬんです。けどジャックは、がめつくて、意地悪で、嘘つきでしたので、当然天国には入れず、門前払いを喰らってしまいました。仕方なく地獄へ行くと、門の所であの悪魔が待っておりました」
《ジャックは椅子②の前。悪魔は椅子③へ》
ジャック「アンタとも随分久々だな。景気はどうだい?」

悪魔「見て解るだろ。おかげさまで最悪だよ。何せお前の魂を二度も取り損ねちまったせいで、俺は門番へ降格されちまったのさ」

ジャック「それはお気の毒に。けど折角アンタに引き取ってもらったのに、俺も漸く地獄に来ちまったよ。これから行くのが億劫だけど、」

悪魔「残念だけど、お前はここから先には行けないよ」

ジャック「…なんだって?」

悪魔「俺はお前と約束しちまったから、お前の命はとれないんだ。ここから先には入れない」

ナレ「ここにきて漸く、ジャックは焦りました。天国にも地獄にも、行き場はなく、死んで身体がないせいで生き返ることも出来ないと気付いたからです」

ジャック「…なぁ、どうにかならないのか?」

悪魔「無理だよ」

ジャック「他の奴に来てもらうとか」

悪魔「無理だ」

ジャック「だってもう俺の死体は焼かれちまって…天国も絶対入れないって追い返されて…ここに入れなきゃもう、行き場がないんだ。居場所ないんだよ。…なぁ、どうしたらいい?俺一体どうしたら、」

悪魔「悪いけど。…こればっかりは、お安い御用とはいえない」

ジャック「…そんな」

ナレ「悪魔にそういわれ、ジャックは途方に暮れて、動けなくなってしまいました。実は死んだ後、ちょっとばかり幽霊生活も堪能しようと思ったのですが、太陽の光の下は熱すぎて動けず、夜も人の灯りの中には入れなかったのです。誰にも見えず、声も届かず、五感どころか全てが消えていく。その恐ろしさに、ジャックは漸く、気付いたのです。生まれて初めて感じた、恐怖でした」

悪魔「だから大人しく俺に連れて来られりゃ良かったものを。…お前がいけないんだ」

ナレ「悪魔の言葉に、ジャックは絶望しました。そして、遂にはその場で、泣き崩れてしまいました」

悪魔「…おい、おい泣くなよ。泣くなってば。…情けない顔しやがって、やめてくれよ。おいってば。…あぁ、もう。ホントにどうしようもないなお前は」

ナレ「そんなジャックの様子を、悪魔は、あんな目に合わされたと言うのに、憐れに思ってしまいました。そこで、けして消えない地獄の炎を、ほんの一掴みだけ持ってきて、ジャックに見せました」

悪魔「ほら、こいつをやるよ」

ジャック「…それは?」

悪魔「こいつは地獄の灯りだ。昼間は使えないが、日が沈んだ後、闇の中でなら、何でも見える。これをやるから、さっさと失せろ」

ジャック「…炎なんて、どうやって持っていけば」

悪魔「ったく死んでまで面倒な奴だよお前は。…そんなお前を見捨てられない俺も、物好きなんだけどな。ちょっと待ってろ」
《悪魔、下手はけ。次の一言言いながらランタン取り出し》
ナレ「そういうと悪魔は、側にあった畑から『蕪』を一つ手にとって、それをくりぬいてランタンにした物をくれました」
《ジャック、上手はけ。ナレ、中央へ移動》
⦿ 地明かり移動中に80%へ⦿
♪ジャックのメインBGMF.I.♪
ナレ「時が流れて、ランタンは蕪からくりぬきやすい南瓜に変わりました。そして、あの世とこの世がとても近くなるハロウィンの時季になると、毎年、ジャックが少しでも夜道を歩きやすいようにと南瓜のランタンを玄関に置いてやるようになったのが、ジャック・オ・ランタンの始まりなのだそうですよ」

【終】

●暗転2秒かけてF.O.●

♪ジャックのBGMF.O.♪

○明転。2拍程おいてから、夕焼け気味。赤をいれた80%○
子供C「ジャックはまだいるの?」

シスター「(満足げ)はい。ジャックは今もさ迷っています。あの世にもこの世にも行き場がない彼は、魂のまま、地獄の炎を一掴みだけ持ってね。あ!そうだ、今年のハロウィンには皆さん自分だけのジャック・オ・ランタンを作ってみましょうか。もしかしたら本物のジャックに逢えるかもしれませんよ?」

《子供達「こわ~い」などなど》

シスター「あらあら、ちょっと脅かし過ぎましたね、ごめんなさい。安心して下さい、ただのお話ですからね。でも、このお話は如何でしたか?」

《子供。それぞれ感想。シスターは微笑み》
♪鐘の音SE5回♪
シスター「(ハッとして)あら、もうこんな時間。…皆さん、おやつは食べ終わりましたか?」

《子供達。「はーい!」等単発で》
シスター「それでは、『秋祭』はここでお開きにしましょう。さ、皆さんで後片付けをして、お家へ帰る支度をしましょう!日が沈む前に戻らないといけませんからね」

《子供「どうして」の声》
シスター「それは、昼と夜の間というのが少し、不思議な時間だからです。例えるなら不思議の世界の扉が開くような時間。ジャックのような存在が歩きまわれるような時間。…あの世とこの世の距離が近くなる時間だといわれているからなんです。ですから、皆さん。今日はハロウィンではないけれどポケットに一つ、お菓子を持って帰って下さい。ほら、ハロウィンでは『トリック・オア・トリート』と言って、お菓子をもらって回るでしょう?あれは、お化けに逢った時に連れて行かれてしまわないように、代わりにあげるモノなんですよ。…お菓子は『料理番』が持っていますから忘れないで貰っていってくださいね」

《子供達、反応し上手へダッシュではけて》
シスター「ああっ!お菓子は後片付けの後ですよ!……( 微笑み) 」
⦿ 明かり80から70%へ⦿
《シスター、前へ移動》
シスター「さて、皆さん…」

シスター「今日のお話は如何でしたか?どちらのお話も少し、不思議なお話でした。皆さんは不思議な世界や存在を信じていますか?( 頷き)…信じている人も、そうでない人も、今日のお話を聞いて興味を持った人も、帰り道はどうぞ、お気をつけて。次のお話も、ぜひ聞きに来て下さいね。だからその為に…お菓子を一つ、お忘れなく…」

●暗転F.O.●
♪鐘の音暗転きっかけで5回♪

《ココまできたら後ろにいる身内誰かが拍手をして終わりを促す》

5+