完璧勇者とポンコツな仲間たち 3

「我が国の精鋭騎士団を瞬殺したグランド・ゴーレムを、一撃で粉砕したというのは本当か!?」

贅を尽くした隣国の謁見の間。
美しい絨毯の先で、威厳あふれる国王と、鋭い眼光を放つ宮廷魔導師、そして屈強な近衛騎士長がアベルたちを見下ろしていた。

ついに王都へ到着した一行だったが、アベルが道中の報告書に「レナさんの威圧でゴーレムが自爆し、メイさんの極小ファイアが内部回路を焼き切り、チカさんの祈りが魂を浄化した」と(大真面目に)書いて提出したせいで、事態は大ごとになっていた。

「素晴らしい! ちょうど今、我が国は魔王軍の幹部を捕らえておってな。そなたらの『世界最強の連携』、ここで実演してみせよ!」

国王の合図とともに、頑丈な魔力格子に入れられた、禍々しいオーラを放つ魔族の戦士が運び込まれてきた。
お荷物(エア)三銃士の顔から一気に血の気が引く。

「な、何をおっしゃいますか国王様! 僕たちの技はあまりにも高威力。このような狭い謁見の間で放てば、王城ごと消し飛んでしまいます!」

メイが引きつった笑顔で必死の言い訳を繰り出す。
しかし、隣に立つアベルが「ご安心ください!」と爽やかに一歩前に出た。

「俺が周囲に『絶対不可侵の多重結界(パーフェクト・ウォール)』を張ります! どれほど強大な威力が炸裂しても、城には傷一つつけさせません! さあ皆さん、国王陛下にその神技をお見せするのです!」

(アベル、余計なことすんじゃねえぇぇぇ!!!)

三人の心の叫びが一致した。結界のせいで逃げ場はない。しかも魔力格子が上がっていく。
魔族の戦士が、獰猛な笑みを浮かべてこちらを睨みつけた。

「フハハハ! 人間の小娘どもが、俺の肉体を傷つけられるかぁ!」

絶体絶命。
しかし、ここで引けば詐欺罪で処刑である。腹をくくった三人の、命がけの「エア戦闘」が始まった!

「ふ、ふん! 死にたがりの魔族め、私の『神速の剣圧』、見切れるかな!?」

レナがプルプル震える腕で大剣を引き抜き、大袈裟に素振りをした。もちろん、ただ風を切る音が「ビュッ」と鳴っただけである。
だが、それを見たアベルが神速の指パッチンを炸裂させた。

ドッバァァァン!!!

アベルが気配を完全に隠して放った不可視の衝撃波『無音真空刃(サイレント・スラッシュ)』が魔族を直撃する。

「ぐはぁぁッ!? ば、馬鹿な、あの振りでこの衝撃……これが神速の剣圧……!」

(えっ、私の剣圧、本当に出てた!?)

驚くレナをよそに、メイが震える指先を突き出した。

「つ、次は僕だ! 細胞を分子レベルで融解させる、一子相伝の『極小(ミクロ)・ファイア』を受けてみよ!」

ポッと灯る、マッチ箱の火。しかし次の瞬間、アベルが背後で最上位暗黒魔法『極大重力崩壊(グラビティ・ノヴァ)』を発動。
魔族の足元の空間がグニャリと歪み、凄まじい圧力で魔族がへし折れそうになる。

「な、なんだこの、全細胞が押し潰されるような熱量(重力)は……! 見えない炎だと……おのれ、化け物めぇぇ!」

(うそ、私の種火、分子レベルで効いてるの!?)

さらに魔族が最後の力を振り絞って突撃してこようとした瞬間、チカが半泣きで両手を合わせた。

「もうやめてください! 痛いの痛いの飛んでけ(ヒール)ぇぇぇ!!」

アベルは「これこそチカさんの『魂の救済(ソウル・ディストラクション)』!」と勘違いし、即座に精神破壊魔術『神聖精神烈破(サイコ・バースト)』を上乗せして放った。

「ぎゃあああああああッ!? 精神が……魂が浄化されるぅぅぅ!!」

ドサリ、と魔族の戦士は白目を剥いて泡を吹いて倒れた。
謁見の間は、静寂に包まれた。

「お、おお……なんという恐ろしい連携だ……」

国王も、宮廷魔導師も、近衛騎士長も、ガタガタと震えて腰を抜かしている。
かすり傷すらつけていないように見えるのに、魔王軍の幹部が精神まで完全に破壊されて無力化されたのだ。

「見事だ……! 報告書以上の実力、まさに世界最強のパーティである!」

鳴り響く拍手喝采。

アベルは我が事のように誇らしげに胸を張り、三人は冷や汗で水浸しになりながら、神妙な顔で「ふっ、当然の結果だな」「世界平和のためだし」「神の御心のままに」と、必死に最強の笑みを浮かべるのだった。