不戦の王 コラム「弩はなぜ日本に定着しなかったか」

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弩とは、西洋の騎士物語ではよく目にするクロスボウだが、
日本では奈良時代末から平安時代初めにかけて
使用されただけで廃れてしまった。
それはなぜか。

一つには、作るのに時間がかかる。
二つには連射がきかない(10秒から15秒の
間隔でしか発射できない)。
三つ目には重い。
そういった欠点があったからだと言われている。

長所としては、有効射程が
300~350メートルもあり、
遠距離の的を狙うには精度抜群。
敵が近づく前に、すなわち和弓がまだ射程に入らない前に、
いち早く先制攻撃をしかけることができる。
しかし、国土の狭い日本の合戦は
自ずから接近戦が多く、弓も射程の長さより
すぐ矢をつがえられる操作性の方が重視された。
弩は、中国大陸やヨーロッパの大平原でこそ、
その長所を存分に発揮したといえる。

なお、弩はふつう重さが3~5キロぐらいあるが、
毛無は倭人より体力にすぐれているため苦にしない。
それどころか、場合によっては、
射程が800メートルを超える大型の弩まで用いた。